組織心理学エビデンスで読むチームワーク漫画おすすめ!グループワーク力を高める5選
なぜ「良いチーム」と「悪いチーム」が生まれるのか
博士課程で認知科学を研究している僕は、研究室でのグループワークを通じて「チームの力」を日々実感している。
同じメンバーでも、プロジェクトによってチームの生産性は驚くほど変わる。この違いは何から生まれるのだろうか。
興味深いことに、1999年にハーバード大学のAmy Edmondsonが発表した研究では、チームの成果を左右する最大の要因は「心理的安全性(Psychological Safety)」であることが示された(DOI: 10.2307/2666999)。
心理的安全性とは、「このチームでは、対人リスクを取っても安全だ」という共有された信念のことだ。失敗を報告しても責められない、質問しても馬鹿にされない、そんな環境がチームの学習と成果を促進する。
今回は、組織心理学のエビデンスに基づいて、チームワークを「体験的に学べる」漫画5作品を選定した。
チームワークの組織心理学的基盤
心理的安全性の重要性
Edmondsonの研究によると、心理的安全性の高いチームは以下の特徴を持つ:
- メンバーがリスクを恐れずに発言できる
- 失敗が学習の機会として共有される
- 質問や提案が歓迎される
- 異なる意見が建設的に議論される
2024年のBransby らの研究では、興味深い発見があった。心理的安全性は新入社員では高く、在籍期間が長くなるにつれて低下する傾向があるという(DOI: 10.5465/amd.2023.0084)。
これは「馴れ合い」や「遠慮」が蓄積されていく可能性を示唆している。
タックマンのチーム発達段階モデル
組織心理学者のBruce Tuckmanは、チームが発達する5つの段階を提唱した:
- 形成期(Forming): メンバーが集まり、関係性を探る段階
- 混乱期(Storming): 意見の衝突や役割争いが起こる段階
- 統一期(Norming): 規範が確立され、協力が生まれる段階
- 機能期(Performing): チームが最高のパフォーマンスを発揮する段階
- 散会期(Adjourning): プロジェクト終了後の解散段階
多くのチームは「混乱期」を乗り越えられずに機能不全に陥る。漫画は、この困難なプロセスを疑似体験させてくれる。
漫画で学ぶ意義
チームワークは「知識」として学んでも身につかない。実際のグループワークで失敗し、修正し、成功する経験が必要だ。
しかし、漫画は安全な環境でチームの成功と失敗を追体験させてくれる。キャラクターたちの葛藤や成長を通じて、自分のチームワークを振り返るきっかけになる。
チームワークを学べる漫画5選
1. 『ハイキュー!!』古舘春一
『ハイキュー!!』は、バレーボール部の成長を描いたスポーツ漫画だ。
組織心理学の観点から注目すべきは、この漫画が描く心理的安全性の構築プロセスだ。
主人公の日向は身長が低いというハンディキャップを抱えているが、チームメイトの影山との連携で「変人速攻」という武器を生み出す。これは、個人の弱みを補い合い、強みを活かすチームワークの典型例だ。
また、烏野高校バレー部には「失敗を責めない」文化がある。ミスをしても「ドンマイ」と声をかけ合い、次のプレーに集中する。これはまさに心理的安全性の実践だ。
研究室のゼミでチームビルディングについて議論したとき、『ハイキュー!!』を引用した後輩がいた。「心理的安全性って、こういうことですよね」という言葉に、僕も深くうなずいた。
組織心理学的ポイント: 心理的安全性の実践と、メンバーの強みを活かしたチーム構築。
2. 『GIANT KILLING』綱本将也・ツジトモ
『GIANT KILLING』は、弱小サッカークラブが名監督の下で再生していく物語だ。
この漫画が優れているのは、チームの「混乱期」を正面から描いている点だ。
監督の達海は、チームに加入した当初、選手たちの反発を受ける。既存の戦術を否定し、新しいシステムを導入しようとする彼に、ベテラン選手たちは抵抗する。
しかし、達海はこの「混乱期」を恐れない。むしろ、健全な衝突を通じてチームが成長することを理解している。
タックマンモデルによれば、混乱期を避けるチームは、結局「統一期」「機能期」に到達できない。『GIANT KILLING』は、この困難なプロセスを乗り越える知恵を教えてくれる。
組織心理学的ポイント: タックマンモデルの「混乱期」の乗り越え方と、変革型リーダーシップ。
3. 『宇宙兄弟』小山宙哉
『宇宙兄弟』は、宇宙飛行士を目指す兄弟の物語だ。
組織心理学の観点から興味深いのは、NASAのチーム選考プロセスが詳細に描かれている点だ。
宇宙飛行士の選考では、個人の能力だけでなく「チームの中でどう機能するか」が厳しく評価される。閉鎖環境でのグループワーク、極限状態でのコミュニケーション、多様なメンバーとの協調性。
特に印象的なのは、多様性がチームの強みになるというメッセージだ。異なるバックグラウンドを持つメンバーが集まることで、単独では思いつかない解決策が生まれる。
博士課程の研究プロジェクトでも、異分野の研究者とのコラボレーションが新しい発見につながることを経験している。『宇宙兄弟』を読むと、その価値を再認識できる。
組織心理学的ポイント: 多様性の価値と、極限状態でのチームビルディング。
4. 『銀の匙 Silver Spoon』荒川弘
『銀の匙』は、進学校から逃げ出した主人公が農業高校で成長していく物語だ。
この漫画が優れているのは、「協働」の本質を描いている点だ。
農業は一人ではできない。種まき、収穫、家畜の世話、すべてがチームワークを必要とする。主人公の八軒は、最初は「勉強ができる」というプライドに縛られているが、農作業を通じて「一人では何もできない」ことを学んでいく。
組織心理学では、**相互依存性(Interdependence)**がチームワークの基盤とされる。メンバーが互いに依存し合う関係にあるとき、チームは真に機能する。
大学のグループワークでも、「自分の担当部分だけやればいい」という姿勢では良い成果は出ない。『銀の匙』は、相互依存の重要性を体験的に教えてくれる。
組織心理学的ポイント: 相互依存性の理解と、協働を通じた信頼構築。
5. 『アオアシ』小林有吾
『アオアシ』は、Jリーグユースチームを舞台にしたサッカー漫画だ。
組織心理学の観点から注目すべきは、この漫画が描く**「役割明確化(Role Clarity)」**の重要性だ。
主人公のアシトは、地元では「エース」としてプレーしていたが、ユースチームではサイドバックというポジションを任される。最初は不満を感じるが、徐々に「チームの中での自分の役割」を理解していく。
研究によると、チームメンバーが自分の役割を明確に理解している場合、チームのパフォーマンスは向上する。逆に、役割が曖昧だと、責任の押し付け合いや重複作業が発生する。
『アオアシ』は、「自分のやりたいこと」と「チームが必要としていること」のバランスを考えさせてくれる。
組織心理学的ポイント: 役割明確化の重要性と、チーム全体の視点を持つことの価値。
チームワーク概念別・漫画の読み方
| 概念 | 該当漫画 | 学べるポイント |
|---|---|---|
| 心理的安全性 | ハイキュー!! | 失敗を許容する文化、発言しやすい環境 |
| チーム発達段階 | GIANT KILLING | 混乱期の乗り越え方、変革のプロセス |
| 多様性の価値 | 宇宙兄弟 | 異なるバックグラウンドの活用 |
| 相互依存性 | 銀の匙 | 協働の本質、信頼構築 |
| 役割明確化 | アオアシ | 個人とチームのバランス |
大学のグループワークに活かす3つのヒント
1. 最初に「心理的安全性」を作る
グループワークの最初の段階で、「どんな意見でも歓迎する」というルールを明確にする。『ハイキュー!!』のように、失敗を責めない文化を意識的に作る。
2. 「混乱期」を恐れない
意見が衝突するのは、チームが成長している証拠だ。『GIANT KILLING』の達海監督のように、健全な衝突を通じてチームを成熟させる。
3. 役割を明確にする
「誰が何をするか」を曖昧にしない。『アオアシ』のように、各メンバーの役割を明確にし、全員がチーム全体の目標を理解する。
まとめ:チームワークは「技術」である
チームワークは、生まれつきの才能ではなく、学習可能な「技術」だ。
組織心理学の研究が示すように、心理的安全性の構築、発達段階の理解、役割の明確化など、具体的なスキルを身につけることでチームワークは向上する。
今回紹介した5作品は、それぞれ異なるチームワークの側面を深く描いている。大学のグループワークや就活のチーム面接に備えて、まずは1冊手に取ってみてほしい。
漫画の中で「このチーム、うまくいってるな」と感じたとき、その理由を分析できるようになれば、あなた自身のチームワーク力も確実に向上しているはずだ。




