ストレス科学エビデンスで読む漫画おすすめ!コルチゾール低減効果のある5選

ストレス科学エビデンスで読む漫画おすすめ!コルチゾール低減効果のある5選

漫画を読むと本当にストレスは減るのか

博士課程で認知科学を研究している僕は、「漫画を読むとリラックスする」という経験的な感覚に科学的根拠があるのか、ずっと気になっていた。

そして調べてみると、興味深い研究が見つかった。

2024年に芝浦工業大学のKuriharaらが発表した研究では、漫画読書のストレス軽減効果を生理的指標で評価している(DOI: 10.1007/978-3-031-61963-2_36)。

この研究では、「社会におけるストレスの増加は問題となっており、多くの人が仕事や職業生活においてストレスを報告している。長期にわたるストレスはうつ病などのメンタルヘルス障害につながる可能性がある」と指摘しつつ、「漫画はどこでも手軽に読めるという利点があり、ストレスを軽減するための有益な選択肢となる」と述べている。

今回は、ストレス科学と神経科学のエビデンスに基づいて、コルチゾール低減効果が期待できる漫画5作品を選定した。

ストレスとコルチゾールの神経科学

HPA軸とストレス応答

ストレスを感じると、脳内で**HPA軸(視床下部-下垂体-副腎系)**が活性化される。

この経路では、視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)が分泌され、下垂体から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が放出され、最終的に副腎からコルチゾールが分泌される。

コルチゾールは「ストレスホルモン」と呼ばれ、短期的には身体を危機に対応させる重要な役割を果たす。しかし、慢性的に高いコルチゾールレベルは、海馬の萎縮や免疫機能の低下を引き起こすことが研究で示されている。

副交感神経系とリラクゼーション

一方、リラックスした状態では副交感神経系が優位になる。

副交感神経系は「休息と消化(rest and digest)」システムとも呼ばれ、心拍数の低下、消化促進、エネルギー保存を促す。この状態では、コルチゾールの分泌が抑制される。

Henry Ford Healthの研究解説によると、「読書をすると心拍数が低下する。読書は一種の気晴らしとして機能し、身体がストレスを忘れることを可能にする。これにより心臓の負担が軽減され、コルチゾールレベルが低下する」という。

漫画読書の認知的効果

漫画は、視覚と言語の両方の情報処理を必要とする。この二重符号化により、読者の注意は物語に集中し、ストレスの原因となる反芻思考から解放される。

認知科学の観点からは、漫画読書はマインドフルネス的な没入状態を生み出す可能性がある。今この瞬間の物語に集中することで、過去の後悔や未来の不安から距離を置くことができる。

コルチゾール低減効果が期待できる漫画5選

1. 『ゆるキャン△』あfろ

ゆるキャン△ 1巻

著者: あfろ

女子高生たちのゆるいキャンプ生活を描く。自然の中でのリラックスした時間が副交感神経を刺激する

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『ゆるキャン△』は、女子高生たちがキャンプを楽しむ日常を描いた漫画だ。

ストレス科学の観点から注目すべきは、この漫画が描く**「自然環境への没入」**だ。

環境心理学の研究では、自然環境への接触がコルチゾールレベルを低下させることが複数の研究で確認されている。森林浴(Shinrin-yoku)の効果は日本発の概念として国際的にも研究されており、自然の中で過ごすことでストレスホルモンが減少することが示されている。

『ゆるキャン△』を読むと、実際にキャンプに行けなくても、自然の中でゆっくりとした時間を過ごす疑似体験ができる。焚き火を見つめる、星空を眺める、朝の冷たい空気を吸う。これらの描写は、読者の副交感神経を活性化させる可能性がある。

僕自身、博士論文の執筆でストレスがピークに達したとき、この漫画を読んで「何もしない贅沢」の価値を再認識した。

認知科学的ポイント: 自然環境の視覚的描写が、実際の自然接触に近い生理的反応を引き起こす可能性がある。

2. 『よつばと!』あずまきよひこ

よつばと! 1巻

著者: あずまきよひこ

5歳の女の子よつばの日常を描く。子どもの視点で世界を見直す癒しの作品

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『よつばと!』は、5歳の女の子・よつばの日常を描いた漫画だ。

この漫画がストレス軽減に効果的な理由は、**「子どもの視点」**という認知的リフレーミングにある。

認知行動療法では、ストレスの原因となる否定的な認知パターンを変えることが重要とされる。『よつばと!』を読むと、日常の何気ない出来事を「当たり前」ではなく「驚きに満ちたもの」として再発見できる。

また、この漫画には多くの笑いの要素がある。笑いがストレスホルモンを減少させることは、複数の研究で確認されている。腹から笑う「深い笑い」は、副交感神経系を強化するという。

研究室の同期が「毎日同じことの繰り返しで疲れた」と言っていたとき、この漫画を勧めた。「よつばの目で見ると、世界はこんなに面白いんだ」と気づいてもらえた。

認知科学的ポイント: 認知的リフレーミングと笑いの相乗効果で、ストレス認知を変容させる。

3. 『のんのんびより』あっと

のんのんびより 1巻

著者: あっと

田舎の分校に通う少女たちの日常。ゆったりとした時間の流れが心を落ち着かせる

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『のんのんびより』は、田舎の小さな分校に通う少女たちの日常を描いた漫画だ。

この漫画の特徴は、時間の流れの遅さだ。都会の慌ただしさとは対照的に、ゆったりとした田舎の時間が流れている。

ストレス研究では、時間的プレッシャーがコルチゾール上昇の主要な要因の一つであることが知られている。常に「早くしなければ」「間に合わない」という焦りがストレスを生む。

『のんのんびより』を読むと、「別に急がなくてもいい」という感覚を取り戻せる。バスが1日に数本しか来ない環境では、焦っても仕方がない。この時間的余裕の感覚が、読者のストレスレベルを下げる可能性がある。

僕が実家の神戸に帰省したとき、この漫画を思い出した。都会の京都とは違う時間の流れがあり、それだけで肩の力が抜けた。

認知科学的ポイント: 時間的プレッシャーからの解放が、ストレス応答を緩和する。

4. 『ばらかもん』ヨシノサツキ

ばらかもん 1巻

都会の書道家が離島でスローライフ。競争から降りる勇気をもらえる作品

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『ばらかもん』は、都会で行き詰まった書道家が長崎の離島で暮らす物語だ。

ストレス科学の観点から興味深いのは、この漫画が描く**「社会的比較からの解放」**だ。

社会的比較理論によると、人は常に他者と自分を比較し、それがストレスの原因となる。特に現代のSNS社会では、他者の成功や幸せを見る機会が増え、比較によるストレスが増大している。

『ばらかもん』の主人公は、都会での「成功」や「評価」から離れ、島の子どもたちとの交流を通じて、競争とは別の価値観を見出していく。「勝ち負け」ではない世界があることを、この漫画は教えてくれる。

研究室で競争的な環境に疲れたとき、この漫画を読み返す。「立ち止まってもいいんだ」と思わせてくれる。

認知科学的ポイント: 社会的比較ストレスからの解放と、内発的価値の再発見。

5. 『日常』あらゐけいいち

日常 1巻

著者: あらゐけいいち

シュールなギャグ漫画。予測不能な展開が笑いを誘い、ストレスホルモンを低下させる

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『日常』は、女子高生たちの「日常」を描いた…と見せかけて、シュールで予測不能な展開が続くギャグ漫画だ。

笑いとストレスの関係は、神経科学的に研究されている。笑うことでβ-エンドルフィン(体内モルヒネとも呼ばれる神経伝達物質)が分泌され、これがコルチゾールの作用を緩和する。

『日常』の面白さは、予測を裏切る展開にある。脳は予測と実際の差異(予測誤差)に反応してドーパミンを放出する。この「予想外の面白さ」が、強い笑いを引き起こす。

また、この漫画は「考えなくても楽しめる」という点で認知負荷が低い。深刻なテーマや複雑なストーリーがないため、疲れた脳にも優しい。

学会発表の前夜、緊張で眠れなかったとき、この漫画を読んで笑ったら不思議と眠れた。笑いの力は侮れない。

認知科学的ポイント: 笑いによるβ-エンドルフィン分泌と、予測誤差による快感。

漫画読書でストレスを軽減する科学的戦略

1. 就寝前の30分を漫画タイムに

研究によると、就寝前のスマートフォン使用は睡眠の質を低下させる。しかし、紙の漫画であればブルーライトの影響がなく、副交感神経を活性化しながらリラックスできる。

僕は就寝前に紙の漫画を30分読む習慣をつけている。これだけで、睡眠の質が明らかに向上した。

2. 「ストレスを感じたら読む」ルールを作る

習慣形成の研究では、「もし〜なら、〜する」という実行意図(implementation intention)が行動を促進することが知られている。

「ストレスを感じたら、漫画を15分読む」というルールを作っておくと、ストレスへの対処が自動化される。

3. 自然・笑い・スローライフの3要素を意識する

今回紹介した5作品に共通するのは、以下の要素だ。

  • 自然環境: 副交感神経を活性化
  • 笑い: β-エンドルフィン分泌
  • スローライフ: 時間的プレッシャーからの解放

漫画を選ぶ際は、これらの要素が含まれているかを意識すると良い。

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まとめ:漫画は科学的に効くストレス対策

「漫画を読むとリラックスする」という感覚は、単なる主観ではない。

生理的指標を用いた研究で、漫画読書のストレス軽減効果が確認されている。副交感神経の活性化、コルチゾールの低下、笑いによるβ-エンドルフィン分泌。これらのメカニズムが、漫画読書のリラックス効果を支えている。

作品ストレス軽減メカニズム認知科学的効果
ゆるキャン△自然環境への没入疑似的な森林浴効果
よつばと!笑いと認知的リフレーミングストレス認知の変容
のんのんびより時間的プレッシャーの解放焦燥感の緩和
ばらかもん社会的比較からの解放競争ストレスの軽減
日常笑いとβ-エンドルフィン予測誤差による快感

ストレスは現代社会において避けられない。しかし、その対処法は科学的に研究されている。

まずは1冊、手に取ってみてほしい。そして、肩の力を抜いて読んでみる。それだけで、脳は少しずつ回復していく。


参考文献

  • Kurihara, S., Feng, C., & Sugaya, M. (2024). Evaluation of Stress Reduction Effects Using Physiological Indexes in Manga Reading. HCI International 2024 Posters, Communications in Computer and Information Science, Vol. 2118, pp. 360-367. DOI: 10.1007/978-3-031-61963-2_36
  • Liu, P., Han, Y., Li, W., & Zhao, S. (2024). Psychological Effects of Reading on Alleviating Work Stress and Enhancing Job Satisfaction. American Journal of Health Behavior, 48(2), 425-437. DOI: 10.5993/AJHB.48.2.13

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西村 陸

京都大学大学院で認知科学を研究する博士課程学生。理系でありながら文学への造詣も深く、科学と文学の交差点で新たな知の可能性を探求。

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    元外資系コンサルタントから転身したライター。経済学の知識を活かしながら、健康・お金・人間関係の最適化を追求。エビデンスベースの実践的な知識発信を心がける。

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