対人関係漫画おすすめ!社会的スキル研究エビデンスで読む大学生のコミュ力UP5選

対人関係漫画おすすめ!社会的スキル研究エビデンスで読む大学生のコミュ力UP5選

「コミュ力」とは何か

博士課程で認知科学を研究している僕は、「コミュ力がない」と悩む大学生から相談を受けることがある。

しかし、「コミュ力」という言葉は曖昧だ。具体的に何ができれば「コミュ力がある」と言えるのだろうか。

興味深いことに、2024年にFrontiers in Psychologyで発表された研究では、自己調整能力と社会的認識が社会的スキルに影響を与えることが示された(DOI: 10.3389/fpsyg.2024.1469746)。

この研究によると、感情知性(Emotional Intelligence)は学生の心理的幸福感、学業成績、対人関係、そして全体的なメンタルヘルスに影響を与える重要な要素として認識されている。

今回は、社会的スキル研究のエビデンスに基づいて、対人関係力を「体験的に学べる」漫画5作品を選定した。

対人関係スキルの心理学的基盤

感情知性と対人コンピテンス

感情知性(EI)とは、自分や他者の感情を認識し、理解し、調整する能力を指す。

2024年のFrontiers in Psychologyの研究では、感情知性は以下の4つの要素で構成されるとされている:

  1. 自己感情の評価(Self-Emotion Appraisals): 自分の感情を理解する力
  2. 他者感情の評価(Others’ Emotion Appraisals): 他者の感情を読み取る力
  3. 感情の調整(Regulation of Emotion): 感情をコントロールする力
  4. 感情の活用(Use of Emotion): 感情を建設的に使う力

社会的スキルと対人関係

2024年のFrontiers in Psychologyの別の研究では、社会情動的コンピテンスと対人関係の関連が2,801名の学生を対象に調査された(DOI: 10.3389/fpsyg.2024.1360467)。

この研究では、5つのコア・コンピテンス(自己認識、自己管理、社会的認識、関係性スキル、責任ある意思決定)が対人関係に影響を与えることが示されている。

漫画で学ぶ意義

対人関係スキルは、本を読んで「知識」として習得するだけでは身につかない。実際の人間関係で試行錯誤する経験が必要だ。

しかし、漫画は安全な環境で対人関係の複雑さを追体験させてくれる。キャラクターたちが関係性に悩み、成長していく姿を通じて、自分自身の対人スキルを振り返るきっかけになる。

対人関係スキルを高める漫画5選

1. 『君に届け』椎名軽穂 ー 「伝える」ことの難しさと大切さ

君に届け 1巻

著者: 椎名軽穂

見た目から誤解される主人公が、友情と恋愛を通じて成長する。コミュニケーションの本質を描く

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『君に届け』は、見た目から「貞子」と呼ばれ恐れられる主人公・爽子が、周囲との関係を築いていく物語だ。

対人関係スキルの観点から注目すべきは、この漫画が描く**「伝える」ことの難しさ**だ。

爽子は心の中では「友達が欲しい」「仲良くなりたい」と思っているが、それを相手に伝えることができない。誤解されても訂正できず、孤立してしまう。

感情知性の研究では、**自己感情の表現(emotional expression)**が対人関係の基盤とされる。爽子が少しずつ「自分の気持ちを言葉にする」ことを学んでいく過程は、この能力の成長そのものだ。

僕自身、研究室で後輩に何かを伝えるとき、「言わなくてもわかるだろう」と思ってしまうことがある。爽子の姿を見ると、「伝えないと伝わらない」という当たり前のことを再認識させられる。

感情知性的ポイント: 自己感情の表現と、誤解を恐れずに伝えることの重要性。

2. 『聲の形』大今良時 ー 傷つけることと向き合う

聲の形 1巻

聴覚障害の少女をいじめた主人公が、罪悪感と向き合いながら関係の再構築を目指す

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『聲の形』は、聴覚障害を持つ転校生・硝子をいじめた過去を持つ主人公・将也が、罪悪感と向き合いながら再び硝子に接近しようとする物語だ。

この漫画が対人関係の教材として優れているのは、人を傷つけることの重みを正面から描いている点だ。

コミュニケーションは「つながる」ためだけのものではない。言葉は人を傷つけることもある。将也は自分が行ったいじめの結果を背負い続ける。

感情知性の研究では、**他者感情の評価(empathy)**が重要とされる。相手の気持ちを理解し、自分の言動が相手にどう影響するかを想像する力だ。『聲の形』は、この「想像力の欠如」がどのような結果を招くかを克明に描いている。

コミュ力を高めたいと思う人は、「どう話すか」だけでなく、「自分の言葉が相手にどう影響するか」を考えることが重要だ。

感情知性的ポイント: 他者感情の評価と、言葉の責任。

3. 『ホリミヤ』HERO・萩原ダイスケ ー 「見せていない自分」との折り合い

ホリミヤ 1巻

著者: HERO萩原ダイスケ

学校と家で別の顔を持つ二人が出会う。本当の自分を見せることの意味を描く

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『ホリミヤ』は、学校では優等生の堀と、目立たない陰キャの宮村が、お互いの「見せていない顔」を知ることから始まる物語だ。

対人関係スキルの観点から興味深いのは、**自己開示(self-disclosure)**のテーマだ。

堀は家では弟の面倒を見る「お姉ちゃん」であり、宮村は家では全身にタトゥーやピアスをした「ヤンキー風」の姿をしている。二人とも、学校では「本当の自分」を隠している。

心理学研究では、適切な自己開示は親密な関係の構築に不可欠とされる。しかし、「どこまで見せるか」「誰に見せるか」は難しい判断だ。『ホリミヤ』は、この「自己開示のバランス」を考えさせてくれる。

すべての人に「本当の自分」を見せる必要はない。しかし、信頼できる人には少しずつ見せていくことで、関係は深まっていく。

感情知性的ポイント: 自己開示のバランスと、信頼関係の構築。

4. 『四月は君の嘘』新川直司 ー 感情を表現することの力

四月は君の嘘 1巻

著者: 新川直司

母の死後ピアノが弾けなくなった天才少年が、自由奔放なヴァイオリニストに出会う

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『四月は君の嘘』は、母の死後「音が聞こえなくなった」天才ピアニスト・公生が、ヴァイオリニスト・かをりとの出会いを通じて再生していく物語だ。

この漫画が対人関係の教材として優れているのは、感情を表現することの意味を深く描いている点だ。

公生は母の厳しい指導の下、「正確に弾く」ことだけを求められてきた。しかし、かをりは「自由に、感情を込めて弾く」ことの喜びを教える。

感情知性の研究では、**感情の活用(Use of Emotion)**が重要とされる。感情を抑圧するのではなく、建設的に表現し、他者との関係に活かす力だ。

コミュニケーションにおいても同じことが言える。「正しいこと」を言うだけでなく、「どう感じているか」を伝えることで、関係は深まる。

感情知性的ポイント: 感情の活用と、感情表現を通じた関係の深化。

5. 『orange』高野苺 ー 「後悔しない」関わり方

orange 1巻

著者: 高野苺

10年後の自分から届いた手紙。転校生を救うために奮闘する高校生たちの物語

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『orange』は、10年後の自分から届いた手紙を受け取った高校生・菜穂が、転校生・翔を救おうとする物語だ。

対人関係スキルの観点から注目すべきは、「関わること」の責任を描いている点だ。

菜穂は手紙を通じて、「このままだと翔は命を絶つ」という未来を知る。しかし、どう関わればいいのかわからない。声をかけるべきか、距離を置くべきか。

研究によると、社会的サポートは心理的適応に重要な役割を果たす。しかし、「どうサポートするか」は簡単ではない。『orange』は、友人として「どこまで踏み込むか」という難しい問いに向き合わせてくれる。

「おせっかい」と「無関心」の間で、どのように関わるか。この問いに正解はないが、考え続けることが重要だ。

感情知性的ポイント: 社会的サポートの提供と、関わることの責任。

感情知性の要素別・漫画の読み方

感情知性の要素該当漫画学べるポイント
自己感情の表現君に届け気持ちを言葉にする
他者感情の評価聲の形相手の立場を想像する
自己開示ホリミヤ信頼関係の中で見せる
感情の活用四月は君の嘘感情を表現に活かす
社会的サポートorange適切に関わる

漫画から対人関係スキルを学ぶ3つの方法

1. 「なぜうまくいかなかったか」を分析する

漫画の中でコミュニケーションがうまくいかない場面に注目する。「何が原因だったか」「どうすれば良かったか」を考えることで、自分の対人関係を振り返るヒントになる。

2. 感情の言語化を意識する

キャラクターがどのように感情を表現しているか(または表現できていないか)を観察する。「自分ならどう表現するか」を考えることで、感情の言語化能力が高まる。

3. 「自分ならどう関わるか」を想像する

キャラクターの立場に自分を置き換え、「自分ならどう関わるか」を具体的に想像する。正解がない問いに向き合う練習になる。

まとめ:コミュ力は「スキル」である

「コミュ力がない」と悩む人は多いが、対人関係スキルは生まれつきの才能ではなく、学習可能なスキルだ。

研究が示すように、感情知性を構成する要素(自己感情の評価、他者感情の評価、感情の調整、感情の活用)は、トレーニングによって向上させることができる。

今回紹介した5作品は、それぞれ異なる角度から対人関係の複雑さを描いている。「人と話すのが苦手」と感じている人は『君に届け』から、「人間関係で失敗した経験がある」人は『聲の形』から読み始めてみてほしい。

漫画の中で「この場面、自分も同じ失敗をしたことがある」と感じたとき、あなた自身の対人関係スキルも少しずつ成長しているはずだ。

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西村 陸

京都大学大学院で認知科学を研究する博士課程学生。理系でありながら文学への造詣も深く、科学と文学の交差点で新たな知の可能性を探求。

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