行動経済学エビデンスで読むお金漫画!消費バイアスを克服する5選

行動経済学エビデンスで読むお金漫画!消費バイアスを克服する5選

「また無駄遣いしてしまった」——その原因は脳にある

「セールだから」「期間限定だから」「自分へのご褒美だから」

こうした理由で衝動買いをしてしまい、後悔した経験はないでしょうか。興味深いことに、Thalerの1985年の研究によると、人間はお金を「心の中で異なる勘定に分類」し、それぞれ別の使い方をする傾向があります。

これは「メンタルアカウンティング(心の会計)」と呼ばれる現象で、2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラーが提唱しました。私たちの消費行動は、思っている以上に非合理的なのです。

本記事では、認知科学を専攻する私の視点から、消費バイアスを学び克服するために効果的な漫画を5作品紹介します。

行動経済学まんが ヘンテコノミクス

著者: 佐藤 雅彦

23個の行動経済学概念を4ページ漫画で解説。消費バイアスを視覚的に理解できる名著

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消費バイアスとは何か——投資判断とは異なる日常の罠

以前の記事行動経済学で学ぶお金の心理学では、投資における非合理的判断について解説しました。しかし、日常の「消費行動」にも、また別の認知バイアスが働いています。

消費行動に影響する5つのバイアス

データによると、消費行動には以下のような認知バイアスが影響しています。

バイアス概要消費への影響
現在バイアス将来より今を過大評価衝動買い、後悔する購入
メンタルアカウンティングお金を心の中で分類ボーナスの浪費、臨時収入の使い方
アンカリング効果最初の数字に引っ張られる「定価○○円が半額」に反応
確証バイアス自分の判断を正当化「自分だけは大丈夫」という過信
楽観バイアス将来を楽観視「来月返せるから」という借金

これらのバイアスは、Kahneman & Tverskyのプロスペクト理論で説明される「System 1(直感的思考)」の働きによるものです。つまり、論理的に考えれば避けられる罠に、直感的に反応してしまうのです。

消費バイアスを学ぶおすすめ漫画5選

消費行動における認知バイアスを理解するために、特に効果的な漫画を5作品選びました。

選定基準:消費バイアス学習に効果的な3つの要素

要素1:日常の消費シーンが具体的に描かれている

投資漫画とは異なり、買い物、節約、借金といった日常的な消費シーンが描かれている作品を選びました。

要素2:認知バイアスのメカニズムが理解できる

なぜ非合理的な判断をしてしまうのか、その心理的メカニズムが物語の中で描かれている作品を重視しました。

要素3:反面教師としての学びがある

成功事例だけでなく、消費バイアスによる失敗から学べる作品も含めています。

1. 行動経済学まんが ヘンテコノミクス——消費バイアスの教科書

行動経済学まんが ヘンテコノミクス

著者: 佐藤 雅彦

佐藤雅彦・菅俊一原作、高橋秀明作画。23個の行動経済学概念を4ページ漫画で楽しく学べる

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『ヘンテコノミクス』は、消費バイアスを学ぶ上で最も効率的な一冊です。

慶應義塾大学教授の佐藤雅彦氏が原作を手がけ、雑誌「BRUTUS」の人気連載をまとめた本書は、おとり効果極端回避性アンダーマイニング効果など23個の行動経済学概念を、それぞれ4ページの漫画で解説しています。

消費バイアス学習のポイント

特に注目すべきは「おとり効果」のエピソードです。3つの選択肢があるとき、明らかに劣る選択肢(おとり)があると、もう一方が魅力的に見える——この現象は、携帯料金プランや飲食店のメニューなど、日常の消費シーンで頻繁に利用されています。

仮説ですが、この本を読んでから買い物に行くと、「あ、これはおとり効果を使っているな」と気づけるようになり、より合理的な購買判断ができるようになるでしょう。

2. マンガでわかる行動経済学——理論と実践の架け橋

マンガでわかる行動経済学

ポーポー・ポロダクション著。サイエンス・アイ新書シリーズで行動経済学の基礎を体系的に学べる

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『マンガでわかる行動経済学』は、消費バイアスの理論的背景を体系的に学べる入門書です。

「いつも同じ店で食事をしてしまうのはなぜ?」「なぜギャンブラーは自信満々なのか?」といった日常的な疑問から出発し、その背後にある認知メカニズムを漫画と解説で紐解いていきます。

消費バイアス学習のポイント

本書の強みは、理論と実践のバランスです。学術的な概念を漫画で視覚化しつつ、それが日常の消費行動にどう影響するかを具体的に解説しています。

『ファスト&スロー』から読み解く人間の思考システムで解説したSystem 1とSystem 2の概念が、消費行動にどう関わるかを理解するのにも役立ちます。

3. 節約ロック——現在バイアス克服の実践ドラマ

節約ロック(1)

大久保ヒロミ著。浪費癖で彼女に振られた30歳男性が節約に目覚める泣き笑いのコミック。全3巻完結

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『節約ロック』は、現在バイアスの克服プロセスを追体験できる作品です。

浪費癖のために彼女に振られた30歳の松本タカオが、復縁を目指して節約を始める物語。興味深いのは、彼が節約をロックミュージックに例えながら実践していく点です。

消費バイアス学習のポイント

主人公のタカオは典型的な「現在バイアス」の持ち主として描かれています。「今」欲しいものを我慢できず、将来の利益(貯金、彼女との復縁)を軽視してしまう。

しかし物語が進むにつれ、彼は節約という行為を「我慢」ではなく「楽しみ」に転換していきます。これは行動経済学でいうフレーミング効果の応用です。同じ行為でも、どう捉えるかで心理的負担が変わる——この発見は、読者自身の消費行動を変えるヒントになります。

全3巻で完結しているため、短期間で読了でき、即座に実践に移せる点も魅力です。

4. ナニワ金融道——楽観バイアスの危険性を学ぶ

ナニワ金融道1(SMART COMICS)

青木雄二著。消費者金融の仕組みと借金の心理を克明に描いた伝説的作品

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『ナニワ金融道』は、楽観バイアス計画の誤謬がもたらす悲劇を描いた作品です。

1990年から「モーニング」で連載され、消費者金融業界を舞台に、借金をする側・させる側の両方の心理を克明に描きました。

消費バイアス学習のポイント

データによると、借金をする人の多くは「今月だけ」「来月には返せる」と楽観的に考えています。これは楽観バイアス計画の誤謬(計画は常に楽観的になりがち)の典型例です。

本作では、借り手がどのような認知バイアスに陥り、金利の複利効果を過小評価してしまうのかが、リアルに描かれています。「自分は大丈夫」という思い込みがいかに危険か——反面教師として強烈な学びを得られます。

5. 闇金ウシジマくん——確証バイアスの恐ろしさ

闇金ウシジマくん(1)

著者: 真鍋 昌平

真鍋昌平著。小学館漫画賞受賞。金融リテラシーの欠如がもたらす悲劇を描く全46巻の大作

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『闇金ウシジマくん』は、確証バイアスと消費行動の関係を最も深く描いた作品です。

闘金融業者・丑嶋馨の視点から、金融リテラシーの欠如と認知バイアスがもたらす悲劇を描きます。小学館漫画賞を受賞し、実写映画化もされた話題作です。

消費バイアス学習のポイント

本作に登場する債務者たちの多くは、「自分だけは大丈夫」という確証バイアスに陥っています。また、「少額だから問題ない」というフレーミング効果への無知、「今借りれば後でなんとかなる」という現在バイアスも顕著です。

興味深いのは、これらのバイアスが単独ではなく「複合的に」働いている点です。一つのバイアスを克服しても、別のバイアスに引っかかる——この現実を、本作は容赦なく描いています。

以前の記事投資漫画おすすめ!行動経済学エビデンスで読む大学生が知るべきリスク判断5選でも本作を紹介しましたが、投資判断と消費行動では着目すべきバイアスが異なります。本記事では特に「借りる」「使う」という消費行動の側面から分析しています。

消費バイアス別・漫画の効果的な読み方

これらの漫画を「娯楽」ではなく「学び」として読むために、消費バイアス別の読み方を提案します。

読み方1:自分のバイアスを特定する

まず、自分がどのバイアスに陥りやすいかを特定しましょう。

タイプ特徴的な行動おすすめ漫画
衝動買いタイプ「今」欲しいものを我慢できない節約ロック
セール反応タイプ「お得」という言葉に弱いヘンテコノミクス
楽観的借金タイプ「来月返せる」と考えがちナニワ金融道
過信タイプ「自分は大丈夫」と思いがち闇金ウシジマくん

読み方2:登場人物の判断を分析する

物語の中で登場人物が消費判断をする場面では、「なぜその判断をしたのか」「どのバイアスが働いているのか」を分析してみてください。

例えば『節約ロック』のタカオが「今日だけは」と浪費してしまう場面を読んだとき、「これは現在バイアスだな」と名前をつけることで、自分が同じ状況に陥ったときに気づけるようになります。

読み方3:自分の消費行動と照らし合わせる

漫画を読んだ後、自分の最近の消費行動を振り返ってみましょう。

  • あのとき、なぜあの商品を買ったのか?
  • セールで購入したものは、本当に必要だったか?
  • クレジットカードで支払ったとき、現金と同じ感覚だったか?

この「振り返り」が、消費バイアスを克服する第一歩になります。

まとめ——漫画で学ぶ賢い消費者への道

消費バイアスを学び克服するための漫画5選を紹介しました。

理論を学ぶなら

  • 『行動経済学まんが ヘンテコノミクス』:23個のバイアスを網羅
  • 『マンガでわかる行動経済学』:体系的な理論理解

実践を学ぶなら

  • 『節約ロック』:現在バイアスの克服プロセス

反面教師として学ぶなら

  • 『ナニワ金融道』:楽観バイアスの危険性
  • 『闇金ウシジマくん』:確証バイアスの恐ろしさ

消費行動における非合理性は、意志の弱さではなく、人間の脳に備わった認知メカニズムによるものです。これらの漫画を通じて、「なぜ自分は無駄遣いをしてしまうのか」の理由を理解し、より賢い消費行動を実現していただければ幸いです。

すべての知識は、つながっています。行動経済学の知見を漫画で学び、日常の消費行動に活かしてみてください。

行動経済学まんが ヘンテコノミクス

著者: 佐藤 雅彦

消費バイアスを学ぶ第一歩として、23個の概念を4ページ漫画で楽しく学べる本書から始めてみてはいかがでしょうか

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この記事のライター

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西村 陸

京都大学大学院で認知科学を研究する博士課程学生。理系でありながら文学への造詣も深く、科学と文学の交差点で新たな知の可能性を探求。

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    元外資系コンサルタントから転身したライター。経済学の知識を活かしながら、健康・お金・人間関係の最適化を追求。エビデンスベースの実践的な知識発信を心がける。

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