恋愛心理学で漫画が100倍面白くなる!アタッチメント理論で読む名作5選
恋愛漫画のキャラクター、なぜあんな行動をするのか?
「なぜこのキャラクターは好きな人を避けるのだろう」「どうして素直になれないのか」——恋愛漫画を読んでいて、そんな疑問を感じたことはないでしょうか。
興味深いことに、Hazan & Shaverの1987年の研究によると、成人の恋愛パターンは幼少期に形成された「愛着スタイル」によって大きく左右されることが明らかになっています。この発見は、恋愛漫画のキャラクターの行動を理解する上で、非常に有用な視点を提供してくれます。
今回は、認知科学を専攻する私の視点から、アタッチメント理論(愛着理論)を用いて恋愛漫画を分析してみたいと思います。心理学的な視点を持つことで、漫画の楽しみ方が格段に深まるはずです。
アタッチメント理論とは?——恋愛を科学する基礎知識
Bowlbyが発見した「愛着」の仕組み
アタッチメント理論は、1969年にイギリスの精神科医John Bowlbyによって提唱されました。元々は乳幼児と養育者の関係を説明する理論でしたが、後にHazan & Shaver(1987)によって成人の恋愛関係にも適用できることが示されました。
データによると、私たちの恋愛パターンは「内的作業モデル」と呼ばれる心の設計図に基づいています。これは「自分は愛される価値があるか」「他者は信頼できるか」という2つの軸で構成されており、幼少期の経験によって形成されます。
4つの愛着スタイル
Bartholomew & Horowitzの1991年の研究では、愛着スタイルを4つに分類しています。
| 愛着スタイル | 自己イメージ | 他者イメージ | 恋愛の特徴 |
|---|---|---|---|
| 安定型 | ポジティブ | ポジティブ | 親密さを楽しめる、信頼関係を築ける |
| 不安型 | ネガティブ | ポジティブ | 見捨てられ不安が強い、承認欲求が高い |
| 回避型 | ポジティブ | ネガティブ | 親密さを避ける、自立を重視 |
| 恐れ・回避型 | ネガティブ | ネガティブ | 親密さを求めつつ恐れる |
これらの愛着スタイルを念頭に置くと、恋愛漫画のキャラクターの行動が驚くほど理解しやすくなります。
アタッチメント理論で読む恋愛漫画5選
1. 『マンガでわかる 愛着障害』——理論を学ぶならまずこの一冊
まず最初に紹介したいのは、精神科医・岡田尊司氏監修の『マンガでわかる 愛着障害』です。これは漫画作品というよりも、愛着理論を漫画で学べる入門書です。
仮説ですが、この本を読んでから他の恋愛漫画を読むと、キャラクターの行動パターンがまったく違って見えるようになるでしょう。愛着スタイルの形成過程、そしてそれが大人の人間関係にどう影響するかが、具体的なエピソードを通じて理解できます。
心理学的ポイント:愛着障害は「治療可能」であるという点が重要です。後天的な経験によって愛着スタイルは変容しうる——この事実は、多くの恋愛漫画における「成長」の描写とも深く関連しています。
2. 『となりの怪物くん』——回避型と不安型の衝突
興味深いことに、『となりの怪物くん』の主人公2人は、愛着理論の観点から見ると非常に対照的なスタイルを持っています。
水谷雫は典型的な「回避型」です。他者との関わりよりも勉強を優先し、感情的な親密さを避ける傾向があります。「他人に期待しない」という彼女の信条は、回避型の内的作業モデル——「他者は信頼できない」——を反映しています。
一方、吉田春は「不安型」の特徴を示します。雫への感情を素直に表現し、強い執着を見せる一方で、自分の感情をコントロールすることが苦手です。見捨てられ不安から来る衝動的な行動は、まさに不安型の特徴と言えるでしょう。
心理学的ポイント:回避型と不安型のカップルは「追いかけっこ」のパターンに陥りやすいとされています。一方が近づくと他方が離れる——この力学がドラマを生み出しているのです。
3. 『逃げるは恥だが役に立つ』——回避型から安定型への変容
『逃げ恥』の津崎平匡は、回避型愛着スタイルの教科書的なキャラクターです。35歳まで恋愛経験がなく、合理的な「契約結婚」という形式を選ぶ——これは親密さへの恐れを回避する防衛機制と解釈できます。
しかし、原著論文によれば、愛着スタイルは固定的なものではありません。Fraleyの2019年のレビュー研究では、安全な関係性の中で愛着スタイルが変容しうることが示されています。
みくりという「安全基地」を得ることで、平匡が徐々に感情を表現できるようになっていく過程は、まさに愛着スタイルの変容を描いているのです。
心理学的ポイント:「安全基地」とは、愛着理論における重要概念です。困難なときに戻れる場所、無条件に受け入れてもらえる存在——それが愛着スタイルの変容を可能にします。
以前の記事愛の脳科学——オキシトシンとドーパミンが織りなす絆でも触れましたが、親密な関係性はオキシトシンの分泌を促し、それが信頼感の形成に寄与します。『逃げ恥』における平匡の変化は、神経科学的にも説明可能なのです。
4. 『ホリミヤ』——安定型愛着の理想形
『ホリミヤ』の堀京子と宮村伊澄は、比較的「安定型」に近い愛着スタイルを持つカップルです。
データによると、安定型の人は以下の特徴を示します。
- 適度な親密さを楽しめる
- パートナーを信頼できる
- 自分の感情を適切に表現できる
- 相手の自立を尊重できる
堀と宮村は、お互いの「別の顔」を受け入れ、家庭的な役割を共有し、相手の弱さを受け止めます。これは安定型愛着の「相互的な安全基地」機能を見事に描写しています。
心理学的ポイント:安定型カップルは、困難に直面しても関係性が崩れにくいとされています。『ホリミヤ』における2人の関係の安定感は、この理論と一致します。
5. 『ハチミツとクローバー』——複数の愛着スタイルの交錯
『ハチクロ』の魅力は、異なる愛着スタイルを持つキャラクターたちの関係性の交錯にあります。
竹本祐太は物語を通じて成長し、安定型愛着を獲得していく過程が描かれています。自転車旅行を経て「自分は一人でも大丈夫」という自己肯定感を得ることで、はぐみへの執着から解放されます。
真山巧は典型的な不安型です。理花への一途な想いは、見捨てられ不安と承認欲求の表れと解釈できます。
花本はぐみは回避型の傾向を示します。才能に没頭することで人間関係の複雑さを避け、最終的に「創作」という安全な領域を選びます。
心理学的ポイント:興味深いことに、愛着スタイルの「組み合わせ」によって関係性のダイナミクスは大きく変わります。竹本(成長途上)×はぐみ(回避型)、真山(不安型)×理花(回避型)——これらの組み合わせが、物語に深みを与えているのです。
自分の愛着スタイルを知る——漫画から学ぶ関係性改善
ECR-R(親密な関係性における経験尺度)
研究では、ECR-R(Experiences in Close Relationships-Revised)という尺度が広く使われています。自分の愛着スタイルを知りたい場合は、専門家のカウンセリングを受けることをお勧めします。
しかし、漫画を読みながら「このキャラクターに共感するな」と感じることも、自己理解の第一歩になりえます。
愛着スタイルは変えられる
追試研究によると、大人になってからでも愛着スタイルは変容可能です。ポイントは以下の3つです。
- 自己認識:自分のパターンに気づく
- 安全な関係性:信頼できる人との関わり
- 新しい経験の積み重ね:小さな成功体験の蓄積
恋愛漫画は、こうした変容のプロセスを疑似体験させてくれる優れたメディアなのかもしれません。
おわりに——心理学の眼鏡で漫画を読む楽しさ
アタッチメント理論という「レンズ」を通して恋愛漫画を読むと、キャラクターの行動が論理的に理解できるようになります。「なぜ素直になれないのか」「なぜ追いかけるのか」——その答えは、幼少期に形成された心の設計図にあるのです。
もちろん、漫画は学術論文ではありません。しかし、優れた作品には人間心理の真実が描かれています。心理学の知見と照らし合わせながら読むことで、その深みをより一層楽しめるのではないでしょうか。
今回紹介した5作品、ぜひアタッチメント理論を意識しながら読んでみてください。きっと、以前とは違った発見があるはずです。
Kindle Unlimited
200万冊以上が読み放題。30日間無料体験できます。




