REIT投資本おすすめ5選!認知科学で解明する投資判断のメカニズム

REIT投資本おすすめ5選!認知科学で解明する投資判断のメカニズム

なぜ投資家は「合理的」に振る舞えないのか

興味深いことに、経済学の教科書では「投資家は合理的に行動する」という前提が置かれています。しかし、実際の投資行動を観察すると、その前提からは大きく逸脱した判断が数多く見られます。

私は京都大学大学院で認知科学を研究していますが、投資判断における人間の認知的限界は、実験室で観察される認知バイアスと驚くほど一致します。特にREIT(不動産投資信託)への投資では、不動産という「実体のある資産」への心理的な親近感が、さまざまなバイアスを増幅させることがわかってきました。

本記事では、REIT投資において投資家が陥りやすい認知バイアスを、認知科学・行動経済学の研究知見から解説します。そして、これらのバイアスを理解し克服するために役立つおすすめ本を5冊紹介していきます。

J-REIT市場の現状と投資家心理

まずJ-REIT市場の規模を確認しておきましょう。2024年末時点で、J-REITの時価総額は約16〜17兆円、上場銘柄数は約60銘柄に達しています。平均分配金利回りは4%台前半と、銀行預金とは比較にならない水準です。

データによると、個人投資家のJ-REIT保有比率は増加傾向にあります。NISAの投資枠としても注目されており、「不動産に投資したいけれど、現物は高すぎる」という層が1万円から始められる手軽さに惹かれているようです。

しかし、ここに認知バイアスの罠が潜んでいます。不動産という「わかりやすい」資産クラスだからこそ、投資家は自分の判断を過信しやすくなるのです。

プロスペクト理論:損失回避が招く塩漬け銘柄

損失は利益の2倍痛い

1979年、心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーは、人間の意思決定に関する画期的な研究を発表しました。プロスペクト理論と呼ばれるこの研究は、後にカーネマンのノーベル経済学賞受賞につながります。

この理論の核心は損失回避性です。同じ金額でも、利益から得られる満足より、損失から受ける苦痛の方が約2倍大きいことが実証されています。

仮説ですが、REIT投資でこの損失回避性が発動すると何が起きるでしょうか。取得価格が「参照点」となり、含み損が出ている状態では、損失を確定させたくない心理から非合理的に保有し続けてしまいます。いわゆる「塩漬け銘柄」の誕生です。

参照点依存性の罠

興味深いことに、私たちは資産の「絶対水準」ではなく、「参照点からの変化」で価値判断を行います。100万円で買ったREITが90万円になっていると「10万円の損失」と感じますが、80万円で買っていれば同じ90万円でも「10万円の利益」と感じるわけです。

この参照点依存性は、私が以前『ファスト&スロー』についての記事で解説したSystem 1(直感的思考)の特性そのものです。論理的に考えれば、重要なのは「現在の90万円を今後どう活用するか」であって、過去の購入価格は関係ないはずなのですが。

ホームバイアス:なぜJ-REITに偏重するのか

自国資産への過度な集中

1991年のFrench & Poterba の研究は、投資家が自国資産に過度に集中投資する傾向、つまり「ホームバイアス」の存在を明らかにしました。

日本の個人投資家も例外ではありません。海外REITという選択肢があるにもかかわらず、J-REITに偏重する傾向が見られます。情報の入手しやすさ、日本語での資料の充実、そして何より「日本の不動産なら知っている」という親近感がこのバイアスを強化しています。

分散投資の理論と心理の乖離

理論的には、グローバルに分散投資することでリスクを低減できます。米国REIT、欧州REIT、アジアREITなど、地域分散は有効な戦略です。

しかし、私たちの脳は「知らないもの」を過大にリスク評価する傾向があります。実際には為替リスクや制度的差異を考慮しても海外REITには投資価値があるケースが多いのですが、心理的な障壁が合理的判断を妨げるのです。

これは私がFX投資と認知バイアスの記事でも触れた現象と同根です。為替市場でも、自国通貨ペアに過度に集中する傾向が観察されています。

確証バイアス:ポジティブ情報ばかり集める罠

自分の仮説を証明したがる脳

Nickerson(1998)の包括的レビュー論文によると、確証バイアスは人間の認知において最も普遍的かつ強力なバイアスの一つです。

REIT投資においても、このバイアスは顕著に現れます。「このREITは良さそうだ」と一度判断すると、その判断を支持する情報ばかり目につくようになります。物流REITに投資した人はEコマース市場の成長ニュースに敏感になり、オフィス系REITに投資した人は「オフィス回帰」の記事を熱心に読むでしょう。

ネガティブ情報の意図的な無視

問題は、投資判断にとって本当に重要なのは「リスク情報」、つまりネガティブ情報であることです。空室率の上昇、金利変動リスク、物件の老朽化など、投資リスクを示す情報こそ冷静に評価すべきなのに、確証バイアスによってこれらを軽視してしまいます。

研究室の読書会で、ある院生が「自分の投資判断を否定する情報を意識的に探す」と話していました。これは確証バイアスに対抗する有効な戦略です。

アンカリング効果:過去の高値に囚われる心理

専門家でさえ逃れられない

Northcraft & Neale(1987)の有名な実験では、不動産の専門家(鑑定士や不動産業者)でさえアンカリング効果の影響を受けることが示されました。最初に提示された価格が「アンカー(錨)」となり、その後の価値判断を歪めてしまうのです。

REIT投資では、過去の高値がこのアンカーになりがちです。「以前は2,000円だったから、今の1,600円は割安だ」という判断は、一見論理的に見えますが、過去の価格が現在の価値と無関係な場合、これは単なるアンカリング効果に過ぎません。

適正価格の判断を歪める

重要なのは、アンカリング効果が「無意識」に作用することです。自分では客観的に判断しているつもりでも、最初に見た数字に引きずられています。

対策としては、複数の評価指標(NAV倍率、配当利回り、PBRなど)を用いること、そして時間を置いて再評価することが有効です。

REIT投資と認知バイアスを理解するためのおすすめ本5選

ここからは、REIT投資の基礎知識と認知バイアスへの理解を深めるための本を5冊紹介します。

1. J-REITの仕組みを体系的に理解する

まずはJ-REITの基礎知識を固めるための一冊です。専門用語から投資戦略まで網羅的に解説されており、初心者にも理解しやすい構成になっています。

2. 実践的なJ-REIT投資ガイド

具体的な銘柄選びや投資タイミングについて知りたい方に。配当収入を得るための実践的なアプローチが学べます。

3. 行動ファイナンスを投資に活かす

本記事で解説した認知バイアスを投資実践に応用するための必読書です。ジェームス・モンティアの著作は、行動ファイナンスの実践的応用において最も信頼できるものの一つです。

4. 不動産証券化の全体像を把握する

REITを含む不動産証券化の仕組みを体系的に理解するための一冊。三菱UFJ信託銀行のプロフェッショナルによる解説は信頼性が高いです。

5. 認知バイアスの原典に触れる

そして最後は、プロスペクト理論の提唱者カーネマン自身による一般向け解説書です。投資に限らず、あらゆる意思決定に関わる認知バイアスを理解できます。

認知バイアスを克服する3つの実践的アプローチ

1. 投資ルールの事前設定

感情的になりやすい場面(急落時、急騰時)では、事前に決めたルールに従うことが重要です。「〇%下落したら売却」「配当利回りが〇%を下回ったら検討」など、具体的な数値基準を設けておきましょう。

2. 反証情報の意識的収集

自分の投資判断に反する情報を意識的に探す習慣をつけます。「なぜこのREITを買うべきでないか」を考えることで、確証バイアスに対抗できます。

3. 投資判断の記録と振り返り

投資判断とその理由を記録し、定期的に振り返ることで、自分の思考パターンやバイアスの傾向を把握できます。

おわりに:科学的投資判断への第一歩

認知科学の視点から見ると、投資家が非合理的な判断をするのは「愚か」だからではなく、人間の脳がそのように設計されているからです。プロスペクト理論、ホームバイアス、確証バイアス、アンカリング効果—これらは進化の過程で獲得した認知特性であり、日常生活では適応的に機能することも多いのです。

しかし、現代の金融市場では、これらの認知特性が投資判断を歪める要因になり得ます。重要なのは、自分がこれらのバイアスから自由ではないことを認識し、対策を講じることです。

今回紹介した書籍を通じて、REIT投資の知識と認知バイアスへの理解を深めていただければ幸いです。知識は最良の防御手段であり、科学的な投資判断への第一歩です。

この記事のライター

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西村 陸

京都大学大学院で認知科学を研究する博士課程学生。理系でありながら文学への造詣も深く、科学と文学の交差点で新たな知の可能性を探求。

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    元外資系コンサルタントから転身したライター。経済学の知識を活かしながら、健康・お金・人間関係の最適化を追求。エビデンスベースの実践的な知識発信を心がける。

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