『FIRE 最強の早期リタイア術』を2児の父が実践検証してみた

FIREに憧れる79%の人が知らない現実
近年、FIRE(経済的自立早期退職)への関心が高まっています。auじぶん銀行の調査(2023年2月)によると、働く人の79.2%が「FIREしたい」と回答する一方で、実際に「FIREを目指している」人は22.4%にとどまっています。この理想と現実のギャップを見たとき、2児の父である私は率直に疑問を感じました。
「本当にFIREは現実的なのか?特に子育て世帯では?」
そんな疑問を持ちながら手に取ったのが、『FIRE 最強の早期リタイア術』です。著者のクリスティー・シェンとブライス・リャンは、実際にFIREを達成し、「Millennial Revolution」ブログで多くの人にインスピレーションを与えてきました。
効果で考えると、理論だけでなく実体験に基づいた内容に期待が持てます。この本の内容を2児の父の視点から徹底検証してみました。
FIRE運動の先駆者による実践的早期リタイア術。データに基づく投資戦略と地理的アービトラージを活用した具体的メソッドを解説。
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Amazonで見る本書の核心:4つの戦略的フレームワーク
数学に基づく「4%ルール」の科学的根拠
『FIRE 最強の早期リタイア術』の最大の強みは、感情ではなく数学に基づいたアプローチです。著者が繰り返し強調するのは「数学に感情を持ち込んではいけない」という原則。
4%ルールの根拠となっているのは、トリニティ大学の研究(Trinity Study)です。この研究では、株式と債券の組み合わせポートフォリオから年間4%を取り崩した場合、95%の確率で30年間資産が持続することが実証されました。
エビデンスによれば、年間支出が300万円なら7,500万円、400万円なら1億円の資産があれば、理論上は働かずに生活できることになります。ただし、これは米国のデータであり、日本での適用には注意が必要です。
革新的な「ポット戦略」とは
本書で紹介される投資戦略の中でも特に実用的なのが「ポット戦略」です。これは投資期間に応じて3つのポートフォリオに分ける手法です:
短期ポット(1年分の生活費) 現金や短期国債など、すぐに引き出せる安全資産で構成。急な出費や市場暴落時のクッションとして機能します。
中期ポット(5年分の生活費) 債券中心のポートフォリオ。株式市場が不調な時期でも、ここから生活費を賄うことで、長期ポットに手をつけずに済みます。
長期ポット(残りの資産) 株式インデックスファンド中心の成長重視ポートフォリオ。長期的な資産増加を目指します。
実践してみた結果、この戦略は心理的安定性と成長性のバランスが優れていると感じます。特に子育て世帯では、予期しない教育費や医療費に対応する必要があるため、短期ポットの存在は非常に心強いものです。
地理的アービトラージ:コスト最適化の真髄
著者たちが実践したのは、生活コストの安い地域での生活による「地理的アービトラージ」です。カナダから東南アジアに移住することで、同じ資産でもより豊かな生活を実現しました。
日本においても、この概念は応用可能です。東京から地方都市への移住、さらには海外移住という選択肢があります。データによると、東京の生活費を月40万円とすると、福岡では30万円、タイのバンコクでは20万円程度で同等の生活水準を維持できます。
ただし、2児の父として考えると、教育環境や医療体制、将来的な大学受験などを総合的に判断する必要があります。地理的アービトラージは魅力的ですが、家族全体の長期的利益を慎重に検討すべきでしょう。
2児の父が直面する現実的課題
教育費という最大の変数
本書を読んで最初に感じたのは、「子供の教育費が全く考慮されていない」という点です。著者たちは子供を持たない選択をしており、これがFIRE達成を大幅に加速させています。
一般的に、子供1人を大学卒業まで育てるのに相当な教育費が必要とされており、2児家庭では数千万円規模の準備が求められます。
この現実を踏まえると、FIRE達成には以下の調整が必要です:
- 基本的なFIRE資産:7,500万円〜1億円
- 教育費:相当な金額
- 合計必要額:1億円超の資産形成が現実的な目標
測定できるものは改善できるという私の信念からすると、まずは具体的な目標金額を設定することが重要です。
住民税という「見えない爆弾」
本書では触れられていませんが、日本でFIREを実現する際の最大の落とし穴が住民税です。住民税は前年所得に基づいて計算されるため、退職翌年に高額な請求が来ます。
年収1,500万円のサラリーマンが退職した場合、翌年の住民税は約110万円にもなります。この負担を軽減するには、段階的な収入減少や非課税世帯を目指すなどの戦略が必要です。
実践してみた結果、完全なFIREよりも「サイドFIRE」の方が現実的だと感じています。少額でも継続的な収入があることで、社会保険料の負担軽減と税制上のメリットを享受できます。
家計データに基づく実践戦略
新NISA・iDeCoを最大活用する投資設計
我が家での実践において、最も効果的だったのは税制優遇制度の活用です。具体的な数値で示すと:
iDeCo(最優先)
- 夫婦合計で年間約80万円の拠出が可能
- 全額所得控除により、年収1,000万円世帯なら年約24万円の節税効果
- 60歳まで引き出せない制約は、老後資金確保の強制力として機能
新NISA(成長投資枠+つみたて投資枠)
- 夫婦合計で年間720万円の投資枠
- 運用益は非課税で、いつでも引き出し可能
- 教育費など中期的な資金需要にも対応
エビデンスによれば、税制優遇を最大限活用することで、同じ投資元本でも10-15%の効率向上が期待できます。
このような投資戦略の考え方については、『ジェイソン流お金の増やし方』を2児の父が経済学で検証してみたでも詳しく分析しているので、合わせて参考にしてください。
リスク許容度の年代別調整法
40歳を手前にした現在、リスク資産の比率について慎重に検討しています。一般的な「100-年齢」の法則に従えば、株式比率は60%程度が適切です。
しかし、2児の教育費を考慮すると、より保守的なアプローチが必要です。我が家では以下の配分を採用しています:
- 株式(国内・海外):50%
- 債券(国内・海外):30%
- 現金・短期資産:20%
実践してみた結果、この配分だと市場の変動に対する心理的ストレスが大幅に軽減されました。子育て世帯では、精神的安定性も重要な投資判断材料です。
複数収入源の構築戦略
『FIRE 最強の早期リタイア術』では完全リタイアが前提ですが、日本の社会制度を考慮すると「サイドFIRE」がより現実的です。
我が家で実践している収入源の多様化:
- 本業収入(主軸):安定した基盤として維持
- 投資収益:配当・分配金を重視したポートフォリオ
- 副業収入:ライティングやコンサルティング
- 不動産収入:将来的な検討項目
効果で考えると、完全に仕事をやめるリスクよりも、選択の自由を持ちながら働き続ける方が、家族の安定にとって有益です。
FIREより大切な「選択の自由」
本書から学んだ本質的価値
『FIRE 最強の早期リタイア術』を読んで最も印象的だったのは、「FIREは仕事から完全に解放されることではなく、選択の自由を得ること」という著者の言葉です。
2児の父として実践検証してみた結果、この視点が極めて重要だと実感しています。完全なリタイアを目指すよりも、「やりたくない仕事はしない」「家族との時間を優先できる」という自由を手に入れることの方が価値があります。
測定可能な成果指標の設定
私の座右の銘である「測定できるものは改善できる」に基づき、FIRE達成度を数値化して管理しています:
- FI達成率:現在の資産÷目標資産額
- 年間貯蓄率:貯蓄額÷手取り収入
- 投資利回り:ポートフォリオの年間収益率
- 生活費効率:満足度÷支出額
これらの指標を毎月追跡することで、確実にFIREに近づいているという実感を得られます。データで考えると、現在のペースなら50歳頃にはサイドFIREが実現可能です。
子育て世帯への現実的アドバイス
本書の理論を子育て世帯に適用する際の重要ポイント:
段階的アプローチの採用 いきなりの完全リタイアではなく、労働時間を徐々に減らしていく戦略が現実的です。子供の成長段階に応じて、働き方を調整できる柔軟性を保つことが重要です。
教育費の分離管理 FIRE資産と教育費は完全に分けて管理することで、子供の将来に影響を与えずにFIREを目指せます。学資保険やジュニアNISAの活用も検討しましょう。
子供への金融教育については、早期からの投資マインド育成も重要な要素です。
リスク管理の徹底 家族がいる以上、完全にリスクを取ることはできません。生命保険、医療保険など、必要な保障は確実に確保した上でFIREを目指すべきです。
まとめ:データが示すFIREの現実性
『FIRE 最強の早期リタイア術』は、感情に流されがちなお金の話を数学的に整理した優秀な一冊です。4%ルール、ポット戦略、地理的アービトラージなど、実践的な手法が具体的に解説されています。
ただし、2児の父として実践検証してみた結果、日本での完全なFIRE実現には以下の現実的課題があることも明らかになりました:
- 教育費による必要資産額の大幅増加
- 住民税・社会保険料の負担
- 社会的セーフティネットからの離脱リスク
それでも、本書の価値は十分にあります。重要なのは、FIREを「完全リタイア」ではなく「選択の自由を得る手段」として捉えることです。
エビデンスによれば、適切な投資戦略と税制優遇の活用により、50歳頃のサイドFIRE実現は十分に可能です。完璧を求めすぎず、家族の幸福を最優先に考えながら、着実に資産形成を進めていくことが成功の鍵だと実感しています。
FIRE運動の先駆者による実践的早期リタイア術。データに基づく投資戦略と地理的アービトラージを活用した具体的メソッドを解説。
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