レジリエンス漫画おすすめ!ストレス耐性研究エビデンスで読む回復力を高める5選

レジリエンス漫画おすすめ!ストレス耐性研究エビデンスで読む回復力を高める5選

「折れない心」は生まれつきか

博士課程で認知科学を研究している僕は、「メンタルが弱い」と悩む大学生から相談を受けることがある。

しかし、レジリエンス(回復力・ストレス耐性)は生まれつきの性質ではない。学習可能なスキルであることが研究で示されている。

興味深いことに、2025年にFrontiers in Psychiatryで発表されたメタ分析では、19研究・17,746名の若者を対象に、レジリエンスとメンタルヘルスの関係を調査した結果、レジリエンスはポジティブなメンタルヘルス指標と中程度〜強い正の相関(r = 0.499)があることが示された(DOI: 10.3389/fpsyt.2025.1536553)。

今回は、レジリエンス研究のエビデンスに基づいて、ストレス耐性を「体験的に学べる」漫画5作品を選定した。

レジリエンスの心理学的基盤

レジリエンスとは何か

レジリエンス(resilience)とは、「ストレスやトラウマ、困難な状況から回復し、適応する動的なプロセス」を指す。

2024年にFrontiers in Psychiatryで発表されたアンブレラレビュー(44件のレビュー、556,920名)では、レジリエンスに影響を与える6つの保護因子が特定された(DOI: 10.3389/fpsyt.2024.1391312):

  1. 自己調整能力(Self-regulation): 効果量 0.43(最も強い因子)
  2. ポジティブな自己認識: 効果量 0.34
  3. サポートの利用可能性: 効果量 0.26
  4. 宗教的関与: 効果量 0.23
  5. 認知能力: 効果量 0.09
  6. コミュニティの結束: 効果量 0.05

逆境がレジリエンスを育てる

同じ研究で注目すべきは、逆境そのものがレジリエンスの発達に寄与する(効果量 0.25)という発見だ。

困難を経験し、それを乗り越えることで、人はより強くなる。これは「ポスト・トラウマティック・グロース(心的外傷後成長)」とも関連する概念だ。

認知的再評価の力

2024年にClinical Psychology Reviewで発表されたメタ分析(55研究、29,824名)では、**認知的再評価(ストレス状況をより肯定的に解釈し直す能力)とレジリエンスの間に中程度の正の相関(r = 0.47)**があることが示された(DOI: 10.1016/j.cpr.2024.102428)。

つまり、「状況の捉え方を変える」スキルが、レジリエンスを高める重要な要素なのだ。

漫画で学ぶ意義

レジリエンスは、理論を学ぶだけでは身につかない。実際に困難を経験し、それを乗り越える過程が必要だ。

しかし、漫画は安全な環境で逆境を追体験させてくれる。登場人物が困難に立ち向かい、成長していく姿を見ることで、自分自身のレジリエンスを振り返るきっかけになる。

ストレス耐性を高める漫画5選

1. 『鬼滅の刃』吾峠呼世晴 ー 逆境がレジリエンスを育てる

鬼滅の刃 1巻

著者: 吾峠呼世晴

家族を鬼に殺された少年が、妹を人間に戻すために鬼殺隊に入隊。逆境から立ち上がる姿を描く

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『鬼滅の刃』は、家族を鬼に殺され、妹を鬼にされた主人公・炭治郎が、過酷な訓練を経て鬼殺隊として成長していく物語だ。

レジリエンス研究の観点から注目すべきは、**「逆境そのものがレジリエンスを育てる」**というプロセスが克明に描かれている点だ。

炭治郎は最初、何も持たない少年だった。しかし、家族を失うという最悪の逆境を経験し、それを乗り越えようとする中で、彼は強くなっていく。水の呼吸の習得、柱との戦い、上弦の鬼との対決。一つひとつの試練が彼を成長させる。

研究が示すように、逆境の経験自体がレジリエンスの発達に寄与する(効果量 0.25)。炭治郎の物語は、この科学的知見を具現化している。

レジリエンス心理学的ポイント: 逆境を通じた成長と、ポスト・トラウマティック・グロース。

2. 『SLAM DUNK』井上雄彦 ー サポートと自己認識の力

SLAM DUNK 1巻

著者: 井上雄彦

不良高校生がバスケットボールに出会い、チームと共に成長。挫折と復活を描くスポーツ漫画の金字塔

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『SLAM DUNK』は、不良高校生の桜木花道がバスケットボールに出会い、湘北高校バスケ部のメンバーと共に成長していく物語だ。

レジリエンス研究の観点から注目すべきは、**「サポートの利用可能性」「ポジティブな自己認識」**が描かれている点だ。

桜木は最初、「天才だから」という根拠のない自信だけで突き進む。しかし、山王工業戦での敗北や怪我など、多くの挫折を経験する。それでも彼が立ち直れるのは、チームメイトという「サポート」があるからだ。

研究によると、サポートの利用可能性はレジリエンスの重要な保護因子(効果量 0.26)だ。桜木が「諦めたらそこで試合終了」という言葉を胸に立ち上がれるのは、彼を信じる仲間がいるからだ。

また、桜木の「自分は天才だ」という自己認識は、科学的にはポジティブな自己認識(効果量 0.34)に該当する。これは根拠がなくても、困難な状況で自分を支える力になる。

レジリエンス心理学的ポイント: サポートシステムの重要性と、ポジティブな自己認識の力。

3. 『ヴィンランド・サガ』幸村誠 ー 認知的再評価による変容

ヴィンランド・サガ 1巻

復讐に燃えるヴァイキングの少年が、真の強さを求めて変容していく壮大な叙事詩

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『ヴィンランド・サガ』は、父を殺されたヴァイキングの少年トルフィンが、復讐心に囚われながらも、真の「強さ」とは何かを問い続ける物語だ。

レジリエンス研究の観点から特筆すべきは、**認知的再評価(cognitive reappraisal)**のプロセスが物語の核心になっている点だ。

トルフィンは前半、「復讐=正義」という認知で生きている。しかし、復讐を果たせなくなった後、彼は人生の意味を見失う。そこから彼が這い上がるには、状況の捉え方を根本から変える必要があった。

研究によると、認知的再評価とレジリエンスには中程度の正の相関(r = 0.47)がある。トルフィンが「復讐者」から「平和を求める者」へと変容していく過程は、まさにこの認知的再評価の実践だ。

この漫画は、レジリエンスが単に「元に戻る」ことではなく、**「より良い状態に変容する」**ことでもあることを教えてくれる。

レジリエンス心理学的ポイント: 認知的再評価と、逆境を通じた変容。

4. 『BLUE GIANT』石塚真一 ー 自己調整能力と持続的努力

BLUE GIANT 1巻

著者: 石塚真一

世界一のジャズプレイヤーを目指す少年の物語。拒絶と挫折を乗り越える姿を描く

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『BLUE GIANT』は、世界一のジャズプレイヤーを目指す宮本大が、数々の拒絶と挫折を乗り越えながら成長していく物語だ。

レジリエンス研究の観点から注目すべきは、**自己調整能力(self-regulation)**が描かれている点だ。

大は才能はあるが、最初は認められない。ライブハウスで演奏を断られ、オーディションで落とされる。しかし、彼は毎日河原でサックスを吹き続ける。どんな状況でも、自分の目標に向かって行動を調整し続ける。

研究によると、自己調整能力はレジリエンスの最も強い保護因子(効果量 0.43)だ。大が示すのは、外部環境がどうであれ、自分の行動をコントロールし続ける力だ。

また、大の「世界一になる」という目標設定は、困難な状況でも方向性を失わないための「アンカー」として機能している。

レジリエンス心理学的ポイント: 自己調整能力と、目標志向的な持続的努力。

5. 『はじめの一歩』森川ジョージ ー 挫折からの回復サイクル

はじめの一歩 1巻

著者: 森川ジョージ

いじめられっ子がボクシングに出会い、日本チャンピオンを目指す。挫折と成長の長編漫画

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『はじめの一歩』は、いじめられっ子の幕之内一歩がボクシングに出会い、日本フェザー級チャンピオンを目指す物語だ。

レジリエンス研究の観点から注目すべきは、「挫折→回復→成長」のサイクルが繰り返し描かれている点だ。

一歩は何度も負ける。伊達英二戦での敗北、宮田一郎への憧れと挫折、そして引退を考えるほどの連敗。しかし、彼はそのたびに立ち上がる。

2025年のメタ分析が示すように、**レジリエンスはネガティブなメンタルヘルス指標と負の相関(r = -0.391)**がある。一歩が敗北後に落ち込む姿は自然だが、彼がそこから回復できるのは、鷹村や鴨川会長という「サポートシステム」と、ボクシングへの純粋な愛着があるからだ。

長期連載だからこそ描ける、何度も挫折し、何度も立ち上がるという反復が、レジリエンスの本質を教えてくれる。

レジリエンス心理学的ポイント: 挫折からの回復サイクルと、サポートシステムの重要性。

レジリエンス要素別・漫画の読み方

レジリエンスの要素該当漫画学べるポイント
逆境からの成長鬼滅の刃困難を乗り越えて強くなる
サポートシステムSLAM DUNK仲間の存在が回復を支える
認知的再評価ヴィンランド・サガ状況の捉え方を変える
自己調整能力BLUE GIANT環境に左右されない自己管理
回復サイクルはじめの一歩何度でも立ち上がる

漫画からレジリエンスを学ぶ3つの方法

1. 「挫折後の行動」を観察する

漫画のキャラクターが挫折した後、どのように行動しているかを観察する。すぐに立ち直る人、時間がかかる人、誰かの助けを借りる人。自分ならどうするかを考えるきっかけになる。

2. 「サポートシステム」を意識する

キャラクターを支える人々(家族、友人、師匠)に注目する。自分の生活の中で、誰が自分のサポートシステムになっているかを振り返る。

3. 「認知の変化」を言語化する

キャラクターの「状況の捉え方」がどう変化したかを言語化してみる。「最初はこう考えていたが、今はこう考えている」という変化を追うことで、認知的再評価の実践例を学べる。

まとめ:レジリエンスは「折れないこと」ではない

「レジリエンス」というと、「折れない強さ」をイメージしがちだ。しかし、研究が示すレジリエンスは、**「折れても立ち上がる力」**だ。

2024年のアンブレラレビューが示すように、レジリエンス向上介入は高い効果(効果量 0.52)を持つ。つまり、レジリエンスは生まれつきの性質ではなく、育てることができる能力なのだ。

今回紹介した5作品は、それぞれ異なる角度からレジリエンスを描いている。「逆境を経験したことがある」人は『鬼滅の刃』から、「状況の捉え方を変えたい」人は『ヴィンランド・サガ』から読み始めてみてほしい。

漫画の中で「この人の立ち直り方、参考になる」と感じたとき、あなた自身のレジリエンスも少しずつ高まっているはずだ。

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西村 陸

京都大学大学院で認知科学を研究する博士課程学生。理系でありながら文学への造詣も深く、科学と文学の交差点で新たな知の可能性を探求。

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    元外資系コンサルタントから転身したライター。経済学の知識を活かしながら、健康・お金・人間関係の最適化を追求。エビデンスベースの実践的な知識発信を心がける。

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