自己効力感漫画おすすめ5選!心理学研究が証明する「自信」を育てる作品
「自分にはできない」——そう思い込んでしまう瞬間は、誰にでもあります。
興味深いことに、心理学者アルバート・バンデューラの研究によると、この「自分にはできる」という感覚——**自己効力感(Self-Efficacy)**は、生まれつきの才能ではなく、後天的に獲得できる心理的資源であることが実証されています。
そして仮説ですが、漫画という物語メディアは、この自己効力感を高める上で非常に有効な手段ではないでしょうか。なぜなら、漫画には自己効力感の源泉となる「代理経験」——他者の成功を見て「自分にもできるかも」と感じる効果——が凝縮されているからです。
今回は、認知科学を研究する立場から、Banduraの自己効力感理論に基づいて「自信を育てる漫画」を5作品、厳選してご紹介します。
自己効力感とは何か——Bandura理論の基礎
自己効力感を高める漫画を選ぶ前に、まず理論的背景を整理しておきましょう。
Banduraの原著論文(1977年、Psychological Review誌)によると、自己効力感とは「特定の状況において必要な行動を成功裏に遂行できるという自己の能力に対する確信」と定義されています。
データによると、自己効力感は以下の4つの源泉から形成されます:
| 源泉 | 説明 | 効果の強さ |
|---|---|---|
| 達成経験 | 自分自身が何かを成し遂げた経験 | ★★★★★(最強) |
| 代理経験 | 他者の成功を観察して得る「自分にもできるかも」感 | ★★★★☆ |
| 言語的説得 | 信頼できる人からの励まし・肯定的フィードバック | ★★★☆☆ |
| 生理的・情動的状態 | 身体的・感情的状態の解釈 | ★★☆☆☆ |
漫画を読むという行為は、主に代理経験を通じて自己効力感に働きかけます。登場人物が困難を乗り越える姿を追体験することで、読者の中に「自分にもできるかもしれない」という感覚が芽生えるのです。
では、具体的にどの作品が効果的なのでしょうか。
【達成経験の描写が秀逸】ハイキュー!!
最初にご紹介するのは、達成経験の積み重ねを最も丁寧に描いた作品です。
『ハイキュー!!』の主人公・日向翔陽は、バレーボール選手としては致命的な「低身長」というハンデを抱えています。しかし興味深いのは、彼がこのハンデを「高さ」ではなく「速さ」で補うという創造的問題解決に至る過程です。
原著論文では、達成経験が最も強力な自己効力感の源泉であると述べられていますが、『ハイキュー!!』はこの「達成経験」の描写が秀逸です。一つひとつの試合で、小さな成功を積み重ねていく。その過程を読者も追体験することで、「才能がなくても努力で成長できる」という信念が自然と育まれます。
認知科学的に見ると、日向の成長過程には目標の細分化と達成感のループが見られます。大きな目標(全国制覇)を小さなステップに分解し、一つずつクリアしていく。この構造が、読者の自己効力感にも作用するのです。
【代理経験の宝庫】昭和元禄落語心中
次は、代理経験と言語的説得の両方が詰まった作品です。
『昭和元禄落語心中』は、スポーツ漫画とは異なるアプローチで自己効力感を描いています。主人公・与太郎は、刑務所で出会った八雲師匠の落語に心を奪われ、弟子入りを志します。
この作品の心理学的価値は、**観察学習(モデリング)**の過程が克明に描かれている点にあります。与太郎は八雲師匠の芸を見て、聞いて、真似る。その繰り返しの中で、少しずつ自分の落語を見つけていきます。
Banduraの理論では、代理経験は「モデルとの類似性が高いほど効果的」とされています。与太郎は決して天才ではなく、むしろ不器用な人物として描かれています。だからこそ、読者は彼に自分を重ね、「あの人にできたなら自分にも」という感覚を得やすいのです。
また、八雲師匠や周囲の落語家たちからの言葉——励ましもあれば厳しい指摘もある——が、言語的説得として機能しています。信頼できる人からの適切なフィードバックは、自己効力感の重要な源泉です。
【創造的自己効力感】左ききのエレン
3作品目は、クリエイティブな領域における自己効力感を描いた作品です。
『左ききのエレン』は、他の作品とは異なる視点から自己効力感を描いています。主人公の朝倉光一は、「天才にはなれない凡人」として自分を認識しています。一方、彼の対極に位置するエレンは、圧倒的な才能を持つ天才として描かれます。
この作品が興味深いのは、固定的知能観vs成長的知能観の対比が明確に描かれている点です。心理学者キャロル・ドゥエックの研究で知られる「マインドセット」の概念が、物語の核心にあります。
光一は何度も挫折を経験しますが、その度に立ち上がります。天才にはなれないと認めた上で、それでも自分にできることを探し続ける。この姿勢こそが、現実を生きる読者にとって最も共感できる、そして自己効力感を高める物語なのではないでしょうか。
創造的な仕事に携わる人——デザイナー、ライター、エンジニアなど——にとって、この作品は特に響くはずです。「才能」という言葉に縛られず、自分なりの価値を見出す過程が、読者の創造的自己効力感を刺激します。
【小さな成功の科学】ベイビーステップ
4作品目は、自己効力感理論の実践書とも言える作品です。
『ベイビーステップ』の主人公・丸尾栄一郎は、成績優秀な優等生です。しかし、運動神経は平凡。そんな彼がテニスでプロを目指すという、一見無謀な挑戦を描いています。
この作品の心理学的価値は、メタ認知の重要性を示している点にあります。栄一郎は、自分のプレーを詳細にノートに記録し、分析し、改善点を見つけていきます。これは認知心理学で言う「意図的練習(deliberate practice)」そのものです。
研究によると、単なる反復練習よりも、自己分析を伴う意図的練習の方が、スキル向上と自己効力感の両方に効果的であることが示されています。『ベイビーステップ』は、この理論を物語として体現しています。
タイトルの「ベイビーステップ」——赤ちゃんの一歩一歩のような小さな前進——は、まさに自己効力感を高める最良の方法を示唆しています。大きな成功ではなく、小さな成功を積み重ねること。それが確かな自信へとつながるのです。
【想像的経験】ブルーピリオド
最後は、近年提唱された「第5の源泉」を体現する作品です。
『ブルーピリオド』は、「マンガ大賞2020」第1位に輝いた作品です。主人公の矢口八虎は、成績優秀でリア充な高校生。しかし、美術との出会いが彼の人生を一変させます。
この作品が心理学的に興味深いのは、**想像的経験(imagined experiences)**の効果を描いている点です。Banduraの4つの源泉に加えて、近年の研究では「成功する自分を想像すること」が第5の源泉として提唱されています。
八虎は絵を描く前に、完成形をイメージします。「この絵で何を表現したいのか」「見る人にどんな感情を抱かせたいのか」——そうした想像のプロセスが、彼の創作活動を支えています。これはスポーツ心理学で言う「イメージトレーニング」と同じ原理です。
また、『ブルーピリオド』は内発的動機づけの重要性も描いています。八虎は外的な報酬(評価や名声)ではなく、純粋に「描きたい」という欲求に突き動かされています。研究によると、内発的動機づけは自己効力感と強い正の相関があります。
自己効力感を高める漫画の読み方
最後に、これらの作品をより効果的に読むための3つのポイントをお伝えします。
1. 登場人物との類似点を意識する
代理経験の効果は、モデルとの類似性が高いほど強まります。読む際には、「自分とこのキャラクターの共通点は何か」を意識してみてください。年齢、境遇、性格、悩み——何か一つでも接点を見つけることで、物語の効果は高まります。
2. 成功だけでなく失敗の過程にも注目する
自己効力感は、単なるポジティブシンキングではありません。重要なのは、失敗を「学習の機会」として再解釈できるかどうかです。紹介した5作品はすべて、主人公の挫折と回復を丁寧に描いています。その過程にこそ、真の学びがあります。
3. 読後に小さな行動を起こす
漫画から得た「自分にもできるかも」という感覚を、実際の達成経験に変換することが重要です。読み終えたら、何か一つ、小さな行動を起こしてみてください。それが、漫画から得た代理経験を、あなた自身の達成経験に変える第一歩になります。
まとめ:自己効力感漫画の科学的選定
今回紹介した5作品を、自己効力感の源泉別に整理します:
| 作品 | 主な源泉 | 特徴 |
|---|---|---|
| ハイキュー!! | 達成経験 | 小さな成功の積み重ね |
| 昭和元禄落語心中 | 代理経験・言語的説得 | 師弟関係と観察学習 |
| 左ききのエレン | 創造的自己効力感 | 才能と努力の対比 |
| ベイビーステップ | 達成経験・メタ認知 | 論理的アプローチと継続 |
| ブルーピリオド | 想像的経験 | 内発的動機づけ |
自己効力感は、私たちの行動と成果を大きく左右する心理的資源です。そして幸いなことに、それは鍛えることができます。
漫画という物語体験を通じて、あなたの中の「自分にはできる」という感覚が、少しでも育まれることを願っています。
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