レビュー
「全集中の呼吸」——社会現象となったこの言葉は、単なる必殺技ではない。
家族を鬼に殺され、唯一生き残った妹・禰豆子も鬼にされた竈門炭治郎。彼は妹を人間に戻すため、鬼を狩る「鬼殺隊」に入隊する。
吾峠呼世晴の描く「鬼」は、ただの悪ではない。彼らにも人間だった頃の記憶があり、悲しい過去がある。炭治郎が鬼にすら慈悲を向けるのは、彼らの痛みを理解しているから。敵にも背景がある——この描き方が、深い余韻を残す。
「呼吸」という設定も秀逸。水の呼吸、炎の呼吸、雷の呼吸。修行によって身につける技術体系は、日本の武道文化を彷彿とさせる。
善逸、伊之助、煉獄さん、柱たち。個性的なキャラクターも魅力的だ。特に煉獄杏寿郎の「心を燃やせ」は、多くの人の心に火をつけた。
全23巻で完結という潔さも評価できる。引き伸ばしをせず、物語としての美しさを優先した判断。「終わり方」を知っている作品は、何度でも読み返せる。