『BUTTER』柚木麻子|要約・感想【木嶋佳苗事件を基にした話題作】

『BUTTER』柚木麻子|要約・感想【木嶋佳苗事件を基にした話題作】

「若くも美しくもない女が、男たちの金と命を奪った」

この一文に、私は引き込まれた。

柚木麻子さんの『BUTTER』。木嶋佳苗事件を基にした小説だ。

読み始めたら止まらなかった。592ページを、一気に読み切った。

『BUTTER』とは

BUTTER

著者: 柚木麻子

柚木麻子著。木嶋佳苗事件を基にした長編小説。結婚詐欺殺人犯と女性記者の対話を通じて、女性の生きづらさを描く。新潮文庫。

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『BUTTER』は、2017年に単行本が刊行され、2020年に文庫化された長編小説。

35カ国で翻訳が決定し、英国ウォーターストーンズの「今年の本」にも選出された。日本を超える28万部を海外で売り上げた話題作だ。

著者の柚木麻子さんは、この作品を「現時点での最高傑作」と位置づけている。

あらすじ

主人公の里佳は、週刊誌で働く30代の女性記者。

彼女が取材するのは、結婚詐欺の末に男性3人を殺害したとされる容疑者・梶井真奈子(通称カジマナ)。

カジマナは、若くも美しくもない。しかし、女性としての自信に満ち溢れている。

「私はブスじゃない。私を愛さない男が、見る目がないだけ」

その言葉に、里佳は動揺する。

カジマナは、取材の条件として「バターを使った料理を作ること」を要求する。

里佳はバター料理を作り、カジマナに報告する。その対話を通じて、里佳自身の価値観が揺さぶられていく——。

木嶋佳苗事件との関連

本作は、2009年に発覚した**「首都圏連続不審死事件」**を基にしている。

婚活サイトで出会った男性から金銭を騙し取り、複数の男性を殺害したとされる事件だ。

犯人の木嶋佳苗は、料理教室に通い、高級食材で男性たちの胃袋を掴んでいたとされる。

ただし、本作は完全なフィクション。事件をそのまま描いたものではなく、柚木麻子さんが独自のテーマを込めた作品になっている。

衝撃のテーマ:女性の「生きづらさ」

この小説の核心は、殺人事件ではない

描かれているのは、現代社会における女性の生きづらさだ。

ルッキズムへの問い

カジマナは、世間的には「美人」ではない。

しかし、彼女は自分の容姿を恥じない。むしろ、自信に満ちている。

「痩せなければ」「綺麗にならなければ」——そんな社会の圧力に、カジマナは抵抗する。

一方、主人公の里佳は、痩せていて、世間的には「まとも」な女性だ。

でも、彼女はカジマナに出会って気づく。

自分は、社会の価値観に縛られてきたのではないか——。

「食べること」への罪悪感

本作では、バター料理が重要なモチーフになっている。

カジマナは、バターをたっぷり使った料理を愛する。罪悪感なく、美味しいものを食べる。

里佳は最初、その姿に戸惑う。

「こんなに脂っこいものを食べて、太らないのか」 「女性なのに、そんなに食べていいのか」

でも、カジマナの影響で、里佳も変わっていく。

「食べること」への罪悪感を手放す——。それは、自分を解放することでもあった。

私が感じたこと

28歳、女性。この本を読んで、自分の中の「縛り」に気づいた。

痩せなければいけない?

私は、ずっと「痩せなければ」と思ってきた。

糖質制限、置き換えダイエット、ジム通い——。何度も挑戦して、何度も挫折した。

でも、なぜ痩せなければいけないのか。

「モテるため」「綺麗に見られるため」——結局、他人の目を気にしていただけかもしれない。

カジマナの「私はブスじゃない」という言葉が、頭から離れない。

美味しいものを食べていい

本書を読んでから、バターを買った。

ホットケーキにたっぷり塗って、罪悪感なく食べた。

美味しかった。それでいいと思った。

「女性らしく」「ヘルシーに」——そんな縛りを、少しだけ手放せた気がする。

注意点:重いテーマを含む

正直に書くと、この本は読む人を選ぶ

殺人事件を扱っている。女性の生きづらさを、容赦なく描いている。

「楽しい小説」ではない。読んでいて苦しくなる場面もある。

でも、その苦しさの先に、何かが変わる感覚がある。

読書メーターのレビューでは「日本の女の生きづらさをここまで掘り下げてくれるとは」という声が多い。

こんな人におすすめ

  • 女性の生きづらさをテーマにした小説を読みたい人
  • 実際の事件を基にしたフィクションに興味がある人
  • 柚木麻子さんのファン
  • 「食」と「欲望」をテーマにした作品が好きな人
  • 海外で評価された日本文学を読みたい人

特に、「痩せなければ」「綺麗にならなければ」というプレッシャーを感じている人に読んでほしい。

カジマナという強烈なキャラクターが、その縛りを揺さぶってくれる。

まとめ:自分を解放する物語

『BUTTER』は、殺人事件の小説であり、フェミニズム小説であり、グルメ小説でもある。

柚木麻子さんの集大成と言われる理由が、読めばわかる。

592ページという長さだが、一気に読める。

読み終えたとき、自分の中の何かが変わっている。

「痩せなければ」「綺麗にならなければ」——そんな縛りに疲れた人へ。

この本が、解放のきっかけになるかもしれない。

BUTTER

著者: 柚木麻子

柚木麻子著。35カ国で翻訳、英国ウォーターストーンズ「今年の本」選出。女性の生きづらさを描いた傑作。

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この記事のライター

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森田 美優

出版社勤務を経てフリーライターに。小説からビジネス書、漫画まで幅広く読む雑食系読書家。Z世代の視点から現代的な読書の楽しみ方を発信。

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