投資漫画おすすめ!行動経済学エビデンスで読む大学生が知るべきリスク判断5選
「投資に興味はあるけど、なんとなく怖い」
大学生からこうした声を聞くことが増えました。興味深いことに、第一生命経済研究所の調査によると、大学生の約80%が投資に興味を持っているにもかかわらず、実際に投資している学生は約26%に過ぎません。この「興味と実践のギャップ」は、なぜ生まれるのでしょうか。
行動経済学の研究では、人間が投資において非合理的な判断をする傾向があることが明らかになっています。そして興味深いことに、漫画はこうした「認知バイアス」を疑似体験し、リスク判断力を高めるのに効果的なメディアなのです。
なぜ投資漫画が金融リテラシー教育に効果的なのか
投資漫画がリスク判断の学習に役立つ理由は、行動経済学の知見で説明できます。
損失回避バイアスの疑似体験
ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーの「プロスペクト理論」によると、人間は同額の損失を利益の約2.25倍重く感じます。これが「損失回避バイアス」です。
漫画では、登場人物が損失を恐れて非合理的な判断をする場面が繰り返し描かれます。読者はその心理を追体験することで、「自分も同じ罠にはまるかもしれない」という気づきを得られるのです。
大学生向けビジネス漫画でも解説した通り、漫画には「状況モデル」を構築しやすいという特性があります。投資という抽象的な概念が、具体的な場面として頭の中に描かれるのです。
日本の大学生の金融リテラシーの現状
J-FLEC(金融経済教育推進機構)の金融リテラシー調査によると、若年層(18-29歳)の金融リテラシー正答率は41.2%に過ぎません。複利計算の理解度は46.0%、分散投資の理解度は50.1%と、基礎的な概念の理解も十分とは言えない状況です。
この教育ギャップを埋める手段として、投資漫画は非常に有効です。教科書のような抽象的な知識ではなく、物語を通じて投資の「感覚」と「落とし穴」を同時に掴むことができるからです。
投資漫画おすすめ5選:行動経済学の視点から選ぶ作品
リスク判断力を高める観点から、大学生に特におすすめの投資漫画を5作品厳選しました。
選定基準:認知バイアスを学ぶ3つの要素
投資漫画を選ぶ際、以下の3つの観点を重視しました。
要素1:認知バイアスが具体的に描かれている
プロスペクト理論、サンクコストの誤謬、アンカリング効果など、行動経済学の主要概念が物語の中で具体的に描かれている作品を選びました。
要素2:失敗のプロセスが詳細に描かれている
投資の失敗は、単一の原因ではなく、複数の認知バイアスが連鎖して起こります。その過程が丁寧に描かれている作品は、学びの深さが違います。
要素3:反面教師としての学びがある
成功事例だけでなく、失敗事例から学ぶことの重要性は多くの研究で示されています。ネガティブな感情を伴う学習は行動変容を促すのです。
1. インベスターZ:行動経済学の教科書的作品
三田紀房による『インベスターZ』は、投資部に所属する中学生・財前孝史が投資を学んでいく物語です。
全21巻を通じて、プロスペクト理論、アンカリング効果、ハーディング行動(群集心理)など、行動経済学の主要概念がストーリーの中で自然に解説されます。堀江貴文氏や前澤友作氏など実在の起業家も登場し、投資哲学を語る場面も見どころです。
特に注目すべきは、バブル経済のメカニズムを解説するエピソードです。なぜ人々は熱狂し、なぜ冷静な判断ができなくなるのか。ハーディング行動の恐ろしさを、歴史的事例を交えて描いています。
2. カイジ:サンクコストの誤謬を極限で描く
福本伸行による『カイジ』は、累計2000万部を超える大ヒット作品です。
ギャンブルを題材にしていますが、その本質は「極限状況における人間の意思決定」を描いた作品です。サンクコストの誤謬(「ここまで来たら引き返せない」という心理)、ギャンブラーの誤謬(「次こそは当たる」という錯覚)、確率認知のバイアスなど、投資判断にも直結する認知の歪みが、緊迫したストーリーの中で描かれます。
心理学漫画の認知科学的分析でも触れましたが、感情を伴う学習は記憶に定着しやすいという特性があります。カイジの極限状況は、認知バイアスの危険性を強烈に印象づけます。
3. 闇金ウシジマくん:金融リテラシーの反面教師
真鍋昌平による『闇金ウシジマくん』は、小学館漫画賞を受賞した全46巻の大作です。
闇金業者・丑嶋馨の視点から、金融リテラシーの欠如がもたらす悲劇を描きます。「自分だけは大丈夫」という確証バイアス、「今借りれば後でなんとかなる」という現在バイアス、「少額だから問題ない」というフレーミング効果への無知。これらの認知バイアスが、いかにして人生を狂わせるかを、リアルに描いています。
反面教師として、この作品から学べることは多いでしょう。投資を始める前に「やってはいけないこと」を知ることの重要性を教えてくれます。
4. 正直不動産:アンカリング効果の実践例
夏原武原作、大谷アキラ作画の『正直不動産』は、NHKでドラマ化もされた人気作です。
嘘がつけなくなった不動産営業マン・永瀬財地を主人公に、不動産業界の「裏側」を描きます。不動産投資における認知バイアス、特にアンカリング効果(最初に提示された価格が「基準」になる心理)やフレーミング効果(同じ情報でも提示の仕方で印象が変わる心理)が、具体的な営業シーンを通じて描かれます。
「なぜその物件が高く見えるのか」「なぜその条件に納得してしまうのか」という疑問に、行動経済学の視点から答えてくれる作品です。
5. 砂の栄冠:投資とリスク管理を野球で学ぶ
三田紀房による『砂の栄冠』は、高校野球を題材にしながら投資の本質を描いた異色作です。
甲子園を目指す野球部員・七嶋裕之が、謎のスポンサーから1000万円を預かり、チームの強化に「投資」していく物語。限られた資源をどう配分するか、リスクとリターンをどう評価するか、短期的成果と長期的成長のバランスをどう取るか。投資判断の本質が、野球という身近な題材を通じて描かれます。
全25巻完結。インベスターZの作者による作品だけあり、投資哲学が随所に散りばめられています。
投資漫画の効果的な読み方:リスク判断力を高める3つのポイント
投資漫画を「娯楽」ではなく「学び」として読むために、3つの読み方を提案します。
読み方1:登場人物の認知バイアスに名前をつける
物語の中で登場人物が非合理的な判断をしたとき、「これはサンクコストの誤謬だ」「アンカリング効果にはまっている」と名前をつけてみてください。
認知バイアスに名前をつけることで、自分が同じ状況に陥ったときに「待てよ、これはあのバイアスでは?」と気づけるようになります。
読み方2:「自分ならどうするか」を常に考える
起業漫画とアントレプレナーシップで解説したように、漫画の主人公の判断を追体験することは「代理的経験」として学習効果があります。
投資漫画を読むときも、「自分ならここでどう判断するか」を常に考えながら読むことで、リスク判断のシミュレーション訓練になります。
読み方3:失敗シーンを重点的に分析する
成功事例より失敗事例から学ぶことの重要性は、多くの研究で示されています。投資漫画の失敗シーンには、避けるべきリスクのパターンが詰まっています。
なぜ失敗したのか、どの時点で引き返すべきだったのか、どうすれば防げたのかを考えることで、リスク管理能力が養われます。
まとめ:漫画で始める行動経済学的投資リテラシー
投資漫画が金融リテラシー教育に効果的な理由を、行動経済学の視点から解説しました。
損失回避バイアスの疑似体験により、「なぜ人は投資で非合理的な判断をするのか」が体感できる。認知バイアスのパターン学習により、自分が陥りやすい罠を事前に知ることができる。反面教師効果により、失敗から学ぶ姿勢が身につく。
MUFG調査によると、20代の投資商品保有率は2019年の13%から2024年には32%まで増加しています。新NISA制度の開始もあり、投資を始める大学生は今後さらに増えるでしょう。
投資という大きな決断をする前に、まずは漫画で「投資の心理的罠」を学んでみてはいかがでしょうか。
行動経済学についてより深く学びたい方には、カーネマンの名著『ファスト&スロー』もおすすめです。人間の思考システムを二つに分け、なぜ私たちが非合理的な判断をするのかを解説しています。
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