『自分とか、ないから。』要約・感想|自分探し疲れのZ世代に刺さる東洋哲学

『自分とか、ないから。』要約・感想|自分探し疲れのZ世代に刺さる東洋哲学

「自分らしく生きたい」 「本当の自分を見つけたい」

そう思って、何年も自分探しを続けてきた。

自己分析本を読み、性格診断を受け、キャリアカウンセリングにも行った。でも、「本当の自分」はいつまで経っても見つからない。

28歳になって、ようやく気づいた。

探しても見つからないのは、そもそも「本当の自分」なんてないからだ。

『自分とか、ないから。教養としての東洋哲学』を読んで、目の前が開けた気がした。

『自分とか、ないから。』とは

自分とか、ないから。教養としての東洋哲学

しんめいP著、鎌田東二監修。仏教・老荘思想・禅など東洋哲学の「無我」の思想を、現代人向けにわかりやすく解説。自分探しに疲れた人への処方箋。

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著者のしんめいPさんは、東洋哲学をわかりやすく発信するクリエイター。京都大学名誉教授の鎌田東二氏が監修を務めている。

本書のテーマは、「自分」という概念への執着を手放すこと

仏教の「無我」、老子の「道」、禅の「空」——。東洋哲学が2000年以上前から説いてきた思想が、現代の「自分探し疲れ」への処方箋になる。

352ページと分厚いが、イラストや図解が豊富で読みやすい。哲学の入門書として最適だ。

衝撃の主張:「自分」は幻想である

本書の核心は、この一文に集約される。

「自分」とは、脳が作り出した便利なフィクションにすぎない

西洋哲学では「我思う、ゆえに我あり」(デカルト)のように、「自分」の存在を前提としてきた。

一方、東洋哲学は真逆のアプローチをとる。

仏教の「無我(アナートマン)」 という思想は、「固定的な自己は存在しない」と説く。私たちが「自分」と呼んでいるものは、刻一刻と変化する現象の連続にすぎない。

この考え方を知ったとき、正直、最初は抵抗があった。

「自分がない」なんて、なんだか怖い。アイデンティティの否定みたいで。

でも、読み進めるうちに理解した。

「自分がない」のではなく、「固定的な自分に執着する必要がない」 ということだ。

「自分らしさ」の呪縛から解放される

本書を読んで、私は大きな気づきを得た。

1. 「本当の自分」を探す必要はない

「本当の自分を探す」というのは、蜃気楼を追いかけているようなものです

この一文にハッとした。

私は何年も「本当の自分」を探してきた。でも、探せば探すほど迷走した。自己分析を重ねるたびに、「私ってこういう人なのかな?」「いや、違うかも」と揺れ動く。

本書によれば、「自分」は固定されたものではなく、状況や関係性によって常に変化するもの

「本当の自分」を探すより、今この瞬間の自分を受け入れる ほうがよほど健全だという。

2. 「自分らしさ」への執着が苦しみを生む

SNSを見ると、みんな「自分らしく」生きているように見える。

キラキラした投稿を見るたびに、「私は自分らしく生きられているんだろうか」と不安になっていた。

でも、本書はこう説く。

「自分らしさ」への執着こそが、苦しみの原因になっている

仏教では、執着(しゅうじゃく)こそが苦しみの根源 だと教える。

「自分らしくあらねばならない」という執着が、かえって自分を苦しめている。そう気づいたとき、肩の力が抜けた。

3. 「空っぽ」は悪いことではない

「自分がない」と言われると、なんだか空虚に感じる。

でも、本書では 「空っぽであること」の価値 を教えてくれる。

老子の言葉が引用されている。

器は空っぽだからこそ、ものを入れられる

固定された「自分」がないからこそ、どんな状況にも適応できる。どんな人とも関われる。

「自分がない」ことは、無限の可能性を持っている ということでもある。

東洋哲学の3つのキーワード

本書で解説される東洋哲学の中から、特に印象に残った概念を紹介する。

無我(むが):仏教

固定的で永続的な「自己」は存在しない

私たちが「自分」と呼んでいるものは、五蘊(ごうん) という5つの要素の集合体にすぎない。

  • 色(しき):肉体
  • 受(じゅ):感覚
  • 想(そう):表象
  • 行(ぎょう):意志
  • 識(しき):認識

これらは常に変化している。だから「固定的な自分」は存在しない。

道(タオ):老荘思想

作為なく、自然のままに生きる

老子が説く「道(タオ)」は、無為自然(むいしぜん) の思想。

「こうあるべき」という思い込みを手放し、自然の流れに身を任せる。

私のように「自分らしさ」に縛られている人間には、解放的な教えだった。

空(くう):禅

すべてのものは、それ自体で独立して存在しているわけではない

禅の「空」は、あらゆるものは相互依存している という教え。

「自分」も、周囲との関係の中で成り立っている。独立した「自分」というのは、実は幻想なのだ。

実践:「自分へのこだわり」を手放す3つの方法

本書では、東洋哲学の教えを日常に活かす方法も紹介されている。

1. 「私」を主語にしない

「私は〜したい」「私は〜が好き」という言い方を減らしてみる

「私」を強調しすぎると、自己への執着が強まる。

主語を曖昧にしたり、「〜かもしれない」と可能性として語ることで、固定的な自己像から距離を置ける。

2. 「今」に集中する

過去の自分、未来の自分について考えすぎない

「昔の私はこうだった」「将来の私はこうなりたい」——こうした思考が、「自分」への執着を強める。

マインドフルネス の実践で、「今この瞬間」に意識を向ける。これが「無我」の入口になる。

3. 変化を受け入れる

「私は変わった」ことを恐れない

昨日の自分と今日の自分は違う。それは自然なことだ。

「一貫性がない」ことを恥じる必要はない。変化こそが自然の摂理だと、本書は教えてくれる。

読後の変化:自分探しをやめた

この本を読んでから、私は「自分探し」をやめた。

「本当の自分」を探すのではなく、今の自分をそのまま受け入れる

矛盾していても、一貫性がなくても、いい。

この考え方にシフトしてから、不思議と心が軽くなった。

SNSを見ても、「自分らしく生きている人」を羨まなくなった。そもそも「自分らしさ」に執着する必要がないのだから。

こんな人におすすめ

  • 「本当の自分がわからない」と悩んでいる人
  • 自己分析を繰り返しても答えが出ない人
  • 「自分らしさ」のプレッシャーに疲れている人
  • 西洋的な自己啓発に違和感を感じている人
  • 東洋哲学に興味があるが、難しそうで手が出せなかった人

特に、Z世代の「自分探し疲れ」 に刺さる一冊だと思う。

私たちは「自分らしさ」「個性」を求められて育った。でも、その呪縛が逆に苦しみを生んでいたのかもしれない。

まとめ:「自分」を手放すと楽になる

『自分とか、ないから。』は、東洋哲学の知恵を現代人向けに翻訳した良書 だ。

西洋的な「自己実現」の価値観に疲れた人にこそ、読んでほしい。

「自分がない」ことは、怖いことではない。

むしろ、どんな自分にもなれる可能性 を持っているということだ。

自分探しに疲れたら、一度立ち止まって、この本を手に取ってみてほしい。

きっと、肩の荷が下りる感覚を味わえるはずだ。

自分とか、ないから。教養としての東洋哲学

しんめいP著。「自分」という概念への執着を手放し、楽に生きるための東洋哲学入門書。352ページ、図解・イラスト豊富。

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この記事のライター

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森田 美優

出版社勤務を経てフリーライターに。小説からビジネス書、漫画まで幅広く読む雑食系読書家。Z世代の視点から現代的な読書の楽しみ方を発信。

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