データ分析本おすすめ5選!38歳が実践したビジネス現場で使える統計学入門

データ分析本おすすめ5選!38歳が実践したビジネス現場で使える統計学入門

「データの根拠は?」

会議でこの一言を言われたとき、あなたは自信を持って答えられるだろうか。

アクセンチュアとQlikの9カ国9,000人を対象とした調査によると、「データリテラシースキルに自信がある」と答えた日本人はわずか9%。グローバル平均の21%を大きく下回る。さらに、38%の日本人が意思決定時に「直感に頼っている」と回答している。

私自身、外資系コンサルティング会社で働いていた頃、データに基づいた提案ができずに苦労した経験がある。経済学を学んでいたはずなのに、実務で使える統計の知識が圧倒的に不足していたのだ。

2児の父となった今、子供たちが社会に出る頃にはデータリテラシーは「読み書き」と同じ基礎スキルになっているはずだ。だからこそ、まず自分が学び直すことにした。

この記事では、38歳の私が実際に読んで「ビジネス現場で使える」と実感したデータ分析本を5冊、段階別に紹介する。

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なぜ今、ビジネスパーソンにデータ分析スキルが必要なのか

「うちの会社はまだアナログだから関係ない」と思っている人もいるかもしれない。しかし、データが示す現実は厳しい。

日本企業のデータ活用の遅れ

総務省の令和5年版情報通信白書によると、デジタル化を「未実施」と回答した日本企業は50%以上。中小企業に限ると70%以上にのぼる。

デジタル化の課題として最も多く挙げられたのは「人材不足」で41.7%、次いで「デジタル技術の知識・リテラシー不足」が30.7%だった。つまり、データを扱える人材が圧倒的に足りていないのだ。

データリテラシー不足がもたらす経済損失

先ほどのアクセンチュア・Qlik調査では、情報やデータに関する問題によるストレスで、日本人従業員一人あたり年間4日以上の生産性損失が発生していることも明らかになった。これを金額換算すると、日本全体で年間1.6兆円の損失になる。

私が「データ分析を学ぼう」と決めた瞬間

コンサル時代、あるクライアントへの提案で「この施策で売上が上がります」と言ったとき、「どれくらい上がるの?その根拠は?」と返された。私は曖昧な回答しかできなかった。

帰り道、悔しさで頭がいっぱいだった。経済学部を出ているのに、実務で使えるレベルの統計知識がなかった。その日から、私のデータ分析学習が始まった。

データ分析本おすすめ5選:段階別学習ロードマップ

ここからは、私が実際に読んで「この順番で読むと理解が深まる」と感じた5冊を紹介する。

第1段階:なぜ統計が必要かを理解する

まず最初に読むべきは、統計学の「全体像」と「ビジネスでの活用イメージ」を掴める本だ。

1. 統計学が最強の学問である(西内啓)

この本を読んだとき、目から鱗が落ちた。統計学がなぜ「最強」なのか、その理由がクリアに理解できる。

西内啓さんは東京大学医学部卒の生物統計学者で、専門的な内容を一般読者にも分かりやすく解説する力がある。

『統計学が最強の学問である』の特徴は、統計学の「使いどころ」を具体例で示している点だ。医療、経済、マーケティングなど、様々な分野でどのように統計が活用されているかが分かる。

私がこの本で最も印象に残ったのは、「ランダム化比較試験(RCT)」の重要性を説明した部分だ。新薬の効果を測定する方法が、ビジネスの施策効果測定にも応用できることを知り、統計学への見方が変わった。

統計学が最強の学問である

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第2段階:統計の基礎概念を身につける

「なぜ統計が必要か」が分かったら、次は基礎概念を学ぶ番だ。ただし、数学が苦手な人でも挫折しない本を選ぶことが重要だ。

2. 完全独習 統計学入門(小島寛之)

この本は、高校数学の知識があれば読める。微分積分は使わない。

『完全独習 統計学入門』で学べるのは、平均、標準偏差、正規分布、推定、検定といった統計の基本概念だ。これらは、どんなデータ分析でも必ず使う「土台」になる。

著者の小島寛之さんは帝京大学教授で、数学教育の専門家だ。「文系でも理解できる」をコンセプトに書かれており、実際、私も数学が得意ではないが、この本で統計の基礎を固めることができた。

特に「標準偏差」の説明が秀逸だった。なぜバラツキを測る指標として標準偏差が使われるのか、その本質的な理由が理解できる。

完全独習 統計学入門

高校数学で読める統計入門。Clinical Biostatisticsカテゴリ#1ベストセラー

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第3段階:因果関係の見極め方を学ぶ

基礎を押さえたら、次は「相関と因果の違い」を理解する段階だ。ここを理解しないと、データに騙される危険がある。

3. データ分析の力 因果関係に迫る思考法(伊藤公一朗)

「アイスクリームの売上と水難事故には相関がある」という有名な例がある。だからといって「アイスクリームを規制すれば水難事故が減る」わけではない。両者の背後には「夏の暑さ」という共通の原因(交絡因子)があるからだ。

シカゴ大学准教授の伊藤公一朗さんが書いた『データ分析の力』は、この「因果関係」を見極める方法を分かりやすく解説している。

この本で紹介されている「自然実験」や「差の差分析」といった手法は、ビジネスの現場でも応用できる。たとえば、新しい施策の効果を「施策前後の変化」だけでなく、「施策を実施しなかった場合との比較」で測定する考え方は、投資対効果の説明に役立つ。

データ分析の力 因果関係に迫る思考法

光文社新書。因果関係の見極め方を実例で学べる。新書サイズで手軽に読める

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4. 「原因と結果」の経済学(中室牧子、津川友介)

同じく因果関係を扱う本として、慶應義塾大学教授の中室牧子さんと、カリフォルニア大学ロサンゼルス校准教授の津川友介さんによる『「原因と結果」の経済学』もおすすめだ。

この本は、日常生活で目にする「〜すると〜になる」という主張の多くが、実は因果関係ではなく相関関係に過ぎないことを明らかにしている。

「学歴が高いと年収が高い」は本当に因果関係なのか。「朝食を食べる子供は成績が良い」は朝食のおかげなのか。こうした疑問に、データ分析の手法を使って切り込んでいく。

「原因と結果」の経済学

データから真実を見抜く思考法。因果関係を見極める力を養う

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第4段階:ビジネス現場での実践を学ぶ

理論を学んだら、最後は「ビジネス現場でどう活かすか」を学ぶ段階だ。

5. 会社を変える分析の力(河本薫)

大阪ガスでデータ分析チームを率いた河本薫さんの『会社を変える分析の力』は、「分析力」と「現場を動かす力」の両方を語っている点が価値だ。

どんなに精緻な分析をしても、現場が動かなければ意味がない。河本さんは、分析結果を「使ってもらう」ためのコミュニケーション術についても詳しく解説している。

私がこの本で学んだのは、「完璧な分析より、80%の精度で素早く判断を支援する分析の方が価値がある」という考え方だ。ビジネスはスピードが命だから、100%を目指して時間をかけるより、80%で早く判断できる材料を提供する方が良い場合が多い。

会社を変える分析の力

講談社現代新書。大阪ガスのデータ分析チームを率いた著者による実践書

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データ分析スキルを身につける5ステップ

本を読むだけでは、スキルは身につかない。実践が必要だ。ここでは、私が実際に行った学習ステップを紹介する。

ステップ1:まずは1冊を通読する(1週間)

最初は『統計学が最強の学問である』を通読することをおすすめする。細かいところは理解できなくても構わない。統計学の「地図」を頭に入れることが目的だ。

通勤時間を使えば、1週間で読み終えられる。

ステップ2:基礎概念を紙に書いて整理する(2週間)

『完全独習 統計学入門』を読みながら、平均、分散、標準偏差、正規分布といった基本概念をノートに整理する。

私は週末の2時間を使って、子供たちが寝た後に学習時間を確保した。手を動かして書くことで、記憶の定着が全然違う。

ステップ3:「相関と因果」を意識してニュースを読む(継続)

『データ分析の力』と『「原因と結果」の経済学』を読んだ後は、日常的にニュースや調査結果を「相関か因果か」という視点で見るようになる。

「〜すると〜になる」という主張を見たら、「本当に因果関係があるのか?交絡因子はないか?」と考える習慣をつける。

ステップ4:自社のデータで簡単な分析を試す(1ヶ月)

ここまで来たら、実際に手を動かす段階だ。Excelで自社の売上データや顧客データを分析してみる。

まずは「平均と標準偏差を出す」「グラフを作る」といった基本的なことから始める。Excelでのデータ分析については、Excel本おすすめ!28歳事務職が仕事効率3倍にした関数&マクロ活用書5選も参考になる。

ステップ5:会議で「データに基づいた発言」を1つする(実践)

学んだことを実践するには、会議で「データに基づいた発言」を意識的に行うのが効果的だ。

たとえば、「売上が伸びている」ではなく「前年同月比で15%増加」と言う。「お客様の声が多い」ではなく「アンケート回答者200名中45%が不満を持っている」と言う。

最初は小さな一歩でいい。その積み重ねが、データドリブンな思考を身につける近道だ。

明日から実践できる3つのアクション

最後に、この記事を読んだ明日から実践できる具体的なアクションを3つ紹介する。

1. 会議資料に「n数」を追加する

「10人中8人が満足」という表現を見たら、その「10人」というサンプルサイズ(n数)の妥当性を考える。10人のアンケートと1,000人のアンケートでは、信頼性がまったく違う。

自分の資料を作るときも、必ず「n=○○」と明記する習慣をつける。

2. 「相関」と「因果」を区別して発言する

「広告費を増やしたら売上が上がった」と言いたいとき、本当にそれは因果関係なのかを考える。季節要因や競合の動きなど、他の要因が影響していないか確認する。

確信が持てないときは、「広告費と売上に相関が見られる」という表現にとどめる。

3. データの出典を必ず確認する

「〜という調査によると」という情報を見たら、その調査の「誰が」「いつ」「何人を対象に」「どのような方法で」実施したかを確認する習慣をつける。

信頼できるデータと、信頼性に疑問があるデータを見分ける力は、ビジネスパーソンの必須スキルだ。

さらに学びを深めたい人へ

データ分析の基礎を身につけた後、さらに発展的な内容を学びたい人には、AI・機械学習の分野への展開がおすすめだ。

AI・機械学習本おすすめ6選!認知科学者が選ぶディープラーニング理論と実践の最適ロードマップでは、データ分析の発展形としての機械学習について詳しく紹介している。

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)のDX動向調査が示すように、データサイエンティストの需要は今後も高まり続ける。今のうちに基礎を固めておくことで、キャリアの選択肢は確実に広がる。

データリテラシーは、2児の父として子供たちに伝えたいスキルの一つでもある。「測定できるものは改善できる」——これは私の座右の銘だが、まさにデータ分析の本質を表している言葉だと思う。

まずは『統計学が最強の学問である』を手に取ってみてほしい。統計学が「最強」である理由を知ったとき、きっとあなたも学ぶモチベーションが湧いてくるはずだ。

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この記事のライター

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佐々木 健太

元外資系コンサルタントから転身したライター。経済学の知識を活かしながら、健康・お金・人間関係の最適化を追求。エビデンスベースの実践的な知識発信を心がける。

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