将棋本おすすめ6選!認知科学で解明する先読み力と戦略思考の鍛え方

将棋本おすすめ6選!認知科学で解明する先読み力と戦略思考の鍛え方

プロ棋士は「思考時間0秒」でも正答率80%を叩き出す。

この驚くべき事実は、理化学研究所の「将棋プロジェクト」で科学的に実証されました。アマチュア四段程度の将棋愛好家では到底及ばない数値です。プロ棋士の脳には、長年の修練によって形成された「直観回路」が存在し、無意識のうちに最善手を選択できるようになっているのです。

興味深いことに、この能力は生まれつきの才能ではなく、適切な学習法によって誰でも向上させることができます。では、どのような本を読み、どのような練習をすれば、私たちも棋士の脳に近づけるのでしょうか。

今回は、脳科学の研究成果に基づいて、将棋の先読み力と戦略思考を効果的に鍛えられる本を6冊厳選しました。

1手詰ハンドブック

詰将棋の名著。1手詰300問で直感的思考を鍛える

¥1,320(記事作成時の価格です)

amazon.co.jp

プロ棋士の脳で起きていること

尾状核が担う「直観」の正体

理化学研究所と富士通の共同研究によると、プロ棋士が次の一手を選択する際、大脳基底核の一部である「尾状核(びじょうかく)頭部」が強く活性化することが判明しました。尾状核は習慣的な行動選択を担う部位であり、長年の修練によって「言葉にできない記憶」として蓄積されています。

つまり、プロ棋士の直観とは「なんとなくの勘」ではなく、膨大な経験がパターンとして脳に刻まれた結果なのです。これは心理学者Daniel Kahnemanが提唱した「System 1(直感的・自動的思考)」の典型例といえます。

『ファスト&スロー』から読み解く人間の思考システムで詳しく解説したように、人間の思考にはSystem 1(直感的思考)とSystem 2(論理的思考)の二つのモードがあります。

プロ棋士はSystem 1で瞬時に有力な候補手を絞り込み、System 2で詳細な読みを検証するという二段構えの思考を行っています。この効率的な思考法が、膨大な選択肢の中から最善手を見つけ出す秘訣なのです。

チャンキング理論と将棋

認知心理学者Herbert Simonは1973年、チェスの名人と初心者の違いを研究しました。その結果、名人は盤面を「意味のある塊(チャンク)」として認識しているのに対し、初心者は個々の駒を一つずつ処理していることが分かりました。

将棋でも同様のメカニズムが働いています。たとえば「矢倉囲い」や「美濃囲い」という形を一目で認識できるようになると、その部分の情報処理が大幅に効率化されます。これがパターン認識能力であり、詰将棋や手筋問題を繰り返すことで強化できます。

将棋本おすすめ6選:認知科学に基づく選書

パターン認識を鍛える本(System 1強化)

1. 1手詰ハンドブック(浦野真彦)

1手詰ハンドブック

詰将棋の入門書として定評のある一冊。300問収録

¥1,320(記事作成時の価格です)

amazon.co.jp

「詰みの形」を脳に刻み込むには、1手詰から始めるのが最も効果的です。『1手詰ハンドブック』は300問を収録し、繰り返し解くことでパターン認識能力を飛躍的に向上させます。

認知科学的に重要なのは「短時間で解く」という点です。理研の研究が示すように、プロ棋士は思考時間が短いほど正答率が高くなります。これは直感的思考(System 1)が正しく機能している証拠です。1手詰を「考えずに解ける」レベルまで反復することで、詰みのパターンが長期記憶として定着し、実戦で無意識に活用できるようになります。

1日10〜15分、通勤時間やちょっとした隙間時間に解き続けることをおすすめします。最初は時間がかかっても構いません。同じ問題を繰り返し解くうちに、解答時間が短縮されていく過程こそが、脳の神経回路が強化されている証拠なのです。

2. 藤井聡太推薦!将棋が強くなる実戦1手詰(書籍編集部)

藤井聡太八冠が推薦するこの問題集は、「実戦で現れやすい形」に特化しています。詰将棋は美しい作品性を追求するものもありますが、実戦で役立つのは頻出パターンの習得です。

本書が優れているのは「攻めの駒を大事にする」というコンセプトです。捨て駒を多用する派手な詰将棋ではなく、実戦感覚で詰ませる力を養えます。200問という適度な量も、繰り返し学習に最適です。

3. 将棋・ひと目の手筋(渡辺明 監修)

詰みだけでなく、中盤の戦いで差がつくのが「手筋」です。渡辺明九段監修の『将棋・ひと目の手筋』は、駒別の手筋から囲い崩し、端攻め、受け、必死まで網羅した208問を収録しています。

手筋とは、特定の局面で有効な駒の使い方のパターンです。「桂馬の高跳び歩の餌食」「銀は千鳥に使え」といった格言も手筋の一種であり、これらを「ひと目」で認識できるようになることが上達の鍵です。

本書のタイトルにある「ひと目」は、まさにSystem 1の働きを指しています。問題を見た瞬間に正解が浮かぶレベルを目指して反復しましょう。

戦略思考を養う本(System 2強化)

4. 四間飛車を指しこなす本1(藤井猛)

四間飛車を指しこなす本1

藤井猛九段の名著。次の一手形式で四間飛車を習得

¥1,320(記事作成時の価格です)

amazon.co.jp

戦法を一つ身につけることは、将棋上達の大きな転機になります。藤井猛九段の『四間飛車を指しこなす本』は、次の一手形式で読者が主体的に考えながら学べる構成が秀逸です。

認知科学の観点から興味深いのは、「受動的な読書」より「能動的な問題解決」のほうが記憶に定着しやすいという点です。本書は従来の定跡書と異なり、局面ごとに「あなたならどう指しますか?」と問いかけてきます。この形式が、戦法の「型」を深く理解させてくれます。

四間飛車を選んだ理由は、攻守のバランスが良く、定跡の応用範囲が広いからです。初心者が最初に覚える戦法として多くの指導者が推奨しており、本書はその学習において最良の教科書といえます。

5. 上達するヒント(羽生善治)

上達するヒント

羽生善治九段が語る将棋の考え方と大局観

¥1,430(記事作成時の価格です)

amazon.co.jp

羽生善治九段の『上達するヒント』は、具体的な手順ではなく「将棋の考え方」を教えてくれる希少な本です。構想、主戦場、玉の安全度など、大局観を養うための視点が丁寧に解説されています。

この本が認知科学的に重要なのは、「メタ認知能力」を高めてくれる点です。メタ認知とは「自分の思考を客観的に観察する能力」であり、「なぜこの手を選んだのか」「この局面で何を考えるべきか」を言語化できるようになります。

プロ棋士の強さの秘密は、直観だけでなく、その直観を検証するSystem 2の精度にもあります。『上達するヒント』は、その検証プロセスを学ぶための最良の教材です。

入門・基礎を固める本

6. 改訂版 羽生善治のやさしいこども将棋入門(羽生善治)

将棋を始めたばかりの方、あるいは子供と一緒に学びたい方には、『改訂版 羽生善治のやさしいこども将棋入門』がおすすめです。50万部以上を売り上げた入門書の改訂版で、駒の動きから5つの基本テクニック(進む・取る・成る・詰める・守る)までを段階的に学べます。

「こども」と銘打っていますが、大人の初心者にも最適です。認知科学では、新しいスキルを習得する際に「基礎の徹底」が重要であることが分かっています。曖昧な理解のまま先に進むと、後で修正が困難になります。この本は基礎を確実に固めるための最良の選択肢です。

認知科学に基づく効果的な学習法

1日15分の詰将棋習慣

東京大学の研究によると、作業記憶(ワーキングメモリ)は海馬の神経活動によって形成されています。将棋の先読みはこのワーキングメモリに強く依存するため、日常的なトレーニングが効果的です。

おすすめは、朝か寝る前の15分間を詰将棋に充てること。脳は睡眠中に記憶を整理・定着させるため、寝る前の学習は特に効果的です。1手詰から始めて、解けるようになったら3手詰、5手詰と段階を上げていきましょう。

「解けない問題をゼロにする」アプローチ

多くの初心者が陥る罠は、難しい問題に挑戦しすぎることです。認知科学では「適度な難易度」が学習効率を最大化することが知られています(最近接発達領域理論)。

まずは1手詰を「全問正解できる」レベルまで繰り返しましょう。解けない問題があれば、その形を徹底的に覚える。このアプローチが、パターン認識能力を最も効率的に高めます。

実戦と復習のサイクル

本を読むだけでは上達しません。学んだ手筋や戦法を実戦で試し、その結果を振り返ることが重要です。オンライン対局サイトを活用すれば、いつでも実戦経験を積めます。

対局後は、自分の指した手を振り返り「なぜその手を選んだのか」「もっと良い手はなかったか」を考える習慣をつけましょう。これがメタ認知能力を高め、次の対局での判断精度を向上させます。

将棋が脳にもたらす恩恵

365 Collegeの記事によると、将棋は前頭葉を強く活性化させます。前頭葉は思考・創造・運動を司る「脳の最高司令部」であり、将棋を続けることで以下の効果が期待できます。

  • 集中力の向上: 局面を深く読む習慣が、日常の集中力も高める
  • 問題解決能力: 複雑な状況を分析し、最善策を導く思考法が身につく
  • 忍耐力: 長い対局を通じて、粘り強く考え続ける力が養われる
  • 認知症予防: 脳を継続的に使うことで、認知機能の低下を防ぐ

将棋は単なる趣味を超えて、人生の質を高めてくれる知的活動なのです。

まとめ:科学的に上達するための第一歩

プロ棋士の脳が特別なのは、生まれつきの才能ではなく、適切な学習法による神経回路の強化です。理化学研究所の研究が示すように、私たちも同じメカニズムで上達できます。

今日から始める3つのアクション:

  1. 1手詰ハンドブックを毎日15分解く → パターン認識能力を高める
  2. 四間飛車を指しこなす本で戦法を一つ習得 → 戦略思考の土台を作る
  3. 対局後に自分の手を振り返る → メタ認知能力を養う

将棋は「考える力」を鍛える最高のトレーニングです。本を読み、実戦を積み、振り返りを続ける。このサイクルを回し続けることで、あなたの脳も確実に進化していきます。

1手詰ハンドブック

まずはここから。詰将棋の定番入門書

¥1,320(記事作成時の価格です)

amazon.co.jp

この記事のライター

西村 陸の写真

西村 陸

京都大学大学院で認知科学を研究する博士課程学生。理系でありながら文学への造詣も深く、科学と文学の交差点で新たな知の可能性を探求。

西村 陸の他の記事を見る

本の虫達

要約・書評・レビューから学術的考察まで、今話題の本から知識を深めるための情報メディア

検索

ライター一覧

  • 高橋 啓介

    高橋 啓介

    大手出版社で書籍編集を10年経験後、独立してブロガーとして活動。科学論文と書籍を融合させた知識発信で注目を集める。
  • 森田 美優

    森田 美優

    出版社勤務を経てフリーライターに。小説からビジネス書、漫画まで幅広く読む雑食系読書家。Z世代の視点から現代的な読書の楽しみ方を発信。
  • 西村 陸

    西村 陸

    京都大学大学院で認知科学を研究する博士課程学生。理系でありながら文学への造詣も深く、科学と文学の交差点で新たな知の可能性を探求。
  • 佐々木 健太

    佐々木 健太

    元外資系コンサルタントから転身したライター。経済学の知識を活かしながら、健康・お金・人間関係の最適化を追求。エビデンスベースの実践的な知識発信を心がける。

Social Links

このサイトについて

※ 当サイトはアフィリエイトプログラムに参加しています。