レビュー
概要
『将棋・ひと目の手筋―初級の壁を突破する208問 (MYCOM将棋文庫SP)』は、将棋を覚えたての人が「勝ち方がわからない」という壁を越えるための、次の一手問題集です。実戦によく現れる形を部分図で示し、「ここで何を指すべきか」を一問一答で体に入れていきます。
将棋の初級者がつまずくのは、定跡の暗記不足ではありません。局面ごとに“やること”が見えないことです。本書はそこを、「手筋」という形で整理します。手筋は、局面が変わっても使い回せる道具です。だから、覚えるほどに勝ち筋が見えるようになります。
構成(目次がそのまま練習メニューになる)
目次は大きく5章です。
- 第1章 駒別ひと目の手筋(歩/香/桂…)
- 第2章 囲いくずしの手筋(美濃くずし/舟囲いくずし/穴熊くずし…)
- 第3章 端攻め・ひと目の手筋
- 第4章 ひと目の受け(序盤/中盤/終盤…)
- 第5章 ひと目の必死
駒別→囲い→端→受け→必死、という並びが良いです。攻めのパターンを覚えるだけでなく、受け方もセットで入る。最後に必死(詰みはないが受けなしの状態)へ進むので、終盤の勝ち切りにもつながります。
読みどころ
1) 部分図だから、読むハードルが低い
初心者にとって、盤面全体の読みは負担が大きいです。本書は部分図を中心に、局面の焦点だけを取り出します。だから、1問に集中しやすい。短時間で回せる。続けやすい。問題集としての設計が初心者向きです。
さらに、「次の一手形式」でポイントを言葉にしてくれるのが助かります。初心者は、良い手を見ても「なぜそれが良いのか」が言語化できません。言語化できないと再現できない。本書は、答えの手だけでなく“狙い”を置いてくれるので、実戦へ移植しやすいです。
2) 駒ごとの手筋で「武器」が増える
歩、香、桂、銀、金、角、飛車。駒は違うのに、初心者のうちは「攻め方が全部同じ」に見えがちです。駒別の章は、「この駒ならこういう狙いがある」という視点を作ってくれます。すると、盤面の見え方が変わります。
駒別の練習は、序盤にも効きます。 たとえば歩の使い方がわかると、端歩の突き合いや位取りの意味が見えるようになります。 桂の手筋が見えてくると、攻めの“跳躍”が使える。 銀の使い方がつかめると、攻守の切り替えが速くなる。 問題集なのに、序盤の迷いが減ります。 そこが良いところです。
3) 囲い崩しと受けの章が、勝率に直結する
将棋は、攻め筋だけ覚えても勝てません。相手の囲いを崩す手筋が必要です。さらに、自分が崩されない受けも必要になります。本書は、囲い崩しと受けを、初心者のうちから“問題として”扱います。ここが実戦向きです。勝てない理由は、攻めがわからないだけでなく、受けが薄いことも多いからです。
囲い崩しは、相手の守りの形(美濃、舟囲い、穴熊など)を知って初めて「どこが急所か」がわかります。本書はその急所を、部分図で何度も見せます。だから、実戦で囲いを見たときに“狙う場所”が思い出せます。受けの章も同様で、序盤・中盤・終盤で受け方が違うことを、問題として分けてくれるのがありがたいです。
4) 「必死」で終盤の詰めが甘い癖を直す
終盤は、詰将棋だけでは足りません。詰みがない局面でも、相手に受けがなくなる形を作れます。本書が最後に必死を置くのは、終盤で勝ち切る感覚を育てるためだと思います。逆転負けを減らしたい人に効きます。
読み方のコツ(208問を“分割”して回す)
208問を一気に解く必要はありません。おすすめは、駒別の章を「今日は歩だけ」「今日は桂だけ」と分割し、1日10問程度で回すことです。その次は、囲い崩しを繰り返す。端攻めと受けは、実戦で出やすい形から当てにいく。最後に必死を集中的にやる。問題集は“配分”で伸び方が変わります。
復習のコツは、間違えた問題に印をつけ、3日後にもう一度解くことです。手筋は「知っている」だけでは弱く、「見えた瞬間に指せる」まで落とす必要があります。反復の間隔を空けると、実戦で使える記憶になります。
また、実戦で負けた将棋の中に、本書で見た形が出ていることが多いです。負けた原因が“読みの不足”ではなく“手筋の見落とし”だったと気づけると、復習が前向きになります。問題集を、反省の道具としても使えるのが良いところです。
感想
この本を読んで良いと思うのは、初心者の「局面が読めない」を、手筋という道具で解決しようとしている点です。勝てないとき、初心者は自分のセンス不足だと感じがちです。でも実際には、知っている型が少ないだけです。本書は、その型を208問で増やしてくれます。
将棋は暗記より、反復で強くなる競技です。次の一手形式で、実戦の形を繰り返す。これが一番伸びる。初級の壁を突破したい人に、手堅い1冊です。
こんな人におすすめ
- 将棋を覚えたが、勝ち方が見えない人
- 囲い崩しや受けで崩れやすい人
- 終盤で勝ち切れず、逆転負けが多い人