レビュー
概要
『四間飛車を指しこなす本 1』は、四間飛車を単なる「覚える戦法」ではなく、「使いこなす戦法」として身につけるための定跡書です。著者は藤井システムで知られる藤井猛。人気戦法である四間飛車を、雰囲気ではなく、考え方ごと整理してくれる一冊になっています。
将棋の定跡書は、変化手順を大量に並べて終わるものも多いですが、本書はそれだけではありません。なぜその駒組みになるのか、何を狙っているのか、相手の急戦にどう対抗するのかという「意味」が前に出てきます。そのため、暗記が抜けても盤上で立て直しやすいです。
四間飛車はアマチュアに人気の高い戦法ですが、だからこそ中途半端に知っていると勝ち切れません。本書はまさにその弱点を補う本で、好きだから指す、から、理解して指す、へ進むための橋渡しをしてくれます。
1) 手順ではなく発想から入れる
本書の一番いいところは、「この局面ではこの手」と丸暗記させるのではなく、「なぜこの形を作るのか」から説明してくれる点です。四間飛車は受けの形、玉の囲い、反撃のタイミングがかみ合って初めて力を発揮する戦法なので、意味を理解しているかどうかが大きいです。
その意味で、本書はただの定跡集ではなく、戦法の教科書に近い読み味があります。駒の位置が少し変わっただけでも方針がずれる将棋において、考え方を先に入れてくれるのは大きいです。実戦で局面が本と少し違っても、方向性を見失いにくくなります。
特に、四間飛車を何となく好きで指している人ほど、本書の価値を感じやすいと思います。定跡の枝葉ではなく、幹の部分を持てるようになるからです。
2) 急戦対策の不安を減らしてくれる
振り飛車党がつまずきやすいのは、居飛車側から強い急戦を仕掛けられたときです。四間飛車は形が整う前に攻められると苦しくなりやすく、ここで負けが続くと戦法そのものが嫌になります。
本書はその不安に正面から向き合っています。棒銀のような分かりやすい急戦だけでなく、「どの筋が危ないのか」「どこまで受ければ十分か」といった感覚を整理してくれるので、過剰に受けすぎたり、逆に軽く見て崩れたりする失敗を減らしやすいです。
これは級位者から初段前後の人に特にありがたいはずです。受け方の知識が少ないと、四間飛車は気持ちよく指せません。本書はそこで土台を作ってくれます。
3) 四間飛車を「武器」にするための本
将棋の戦法書には、知識として面白い本と、実戦で武器になる本があります。本書は後者です。読んで終わりではなく、並べて、試して、負けた局面を見返すときに効いてきます。
四間飛車は一度形が身につくと、自分の将棋の軸になりやすい戦法です。だからこそ、最初にしっかりした本で基礎を押さえておく意味が大きい。本書は、変化の暗記に疲れるより前に、「四間飛車らしい感覚」を身体に入れてくれる本だと感じます。
シリーズものの第1巻なので、まず全体像をつかみ、得意戦法として続ける価値があるかを判断する入口としても優秀です。いきなり難解な研究書へ行くより、ここから入るほうが長く使えます。
4) 将棋の勉強の仕方まで教えてくれる
良い戦法書は、局面知識だけでなく、どう学べばいいかも教えてくれます。本書はそこも優れています。盤に並べながら「この手は何のためか」を考える癖がつくので、ほかの戦法を学ぶときにも応用が利きます。
将棋は、読む量だけでなく、形をどう理解するかが重要です。本書を通ると、定跡の勉強が「答え合わせ」ではなく「構造理解」になりやすい。これは将棋の上達全体に効く感覚です。
その意味で、本書は四間飛車党のための本であると同時に、将棋の考え方を深めたい人の本でもあります。好きな戦法を軸に、勉強の質を一段上げたい人に向いています。
こんな人におすすめ
- 四間飛車を本気で得意戦法にしたい人
- 急戦対策があいまいで実戦で崩れやすい人
- 丸暗記ではなく、意味から定跡を理解したい人
- 振り飛車を指しているが、方針がふわっとしがちな人
- 将棋の勉強方法そのものを見直したい人
感想
四間飛車は人気戦法だけに、断片的な知識だけでもそれなりに指せてしまいます。でも、それだけでは壁にぶつかる。本書はその壁を越えるために必要な「理解の筋道」を与えてくれる本でした。
読んで終わりの本ではなく、何度も盤に並べて戻ってくる本です。勝つための一冊であると同時に、四間飛車の面白さを長く味わうための一冊でもあります。振り飛車を続けたい人なら、かなり早い段階で手元に置く価値があると思います。