医療本おすすめ6選!認知科学者が選ぶ健康情報の正しい理解法とヘルスリテラシー
「テレビで紹介されていた健康法、本当に効果があるのだろうか」
健康に関する情報があふれる現代において、このような疑問を持つ方は少なくないはずです。興味深いことに、認知科学の研究は、私たちが医療情報を判断する際に、さまざまな「認知バイアス」によって判断が歪められることを明らかにしています。
京都大学大学院で認知科学を研究している私(西村)は、学術論文と一般向け健康書の両方を読み込む中で、「なぜ人は科学的根拠のない健康法を信じてしまうのか」という問いに強い関心を持つようになりました。
データによると、ネット上の健康情報には科学的根拠が不十分なものが多く含まれており、2016年にはDeNAが運営する医療情報サイト「WELQ」の問題が大きな社会問題となりました。これは決して特殊な事例ではなく、私たちの日常に潜む認知バイアスの表れなのです。
ヘルスリテラシーの第一人者による体系的な解説書。2023年ヘルスコミュニケーション関連学会優秀書籍賞受賞。
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医療本おすすめ:医療情報を歪める5つの認知バイアス
医療情報を正しく理解するためには、まず私たちの脳がどのような「罠」にはまりやすいかを知る必要があります。
可用性ヒューリスティック:目立つ情報に振り回される
メディアで大きく取り上げられた病気や健康リスクを過大評価する傾向を「可用性ヒューリスティック」と呼びます。珍しい感染症のニュースを見ると、実際のリスクとは不釣り合いな不安を感じてしまうのはこのためです。
仮説ですが、これは人類が長い進化の過程で獲得した生存戦略の副産物かもしれません。危険な情報に敏感に反応することは、かつては生存に有利だったのでしょう。しかし情報過多の現代では、この傾向が却って正確な判断を妨げています。
確証バイアス:信じたいものだけを信じる
自分が信じたい健康情報ばかり集めてしまう傾向は「確証バイアス」として知られています。特定のサプリメントが効くと信じている人は、その効果を示す情報ばかりを探し、否定的な研究結果を無視してしまいがちです。
この傾向は、ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』で詳しく解説されているSystem 1(直感的思考)の特性と密接に関連しています。
楽観バイアス:「自分は大丈夫」という過信
自分は平均的な人よりも健康で、病気になりにくいと考える傾向を「楽観バイアス」と呼びます。この傾向が健康診断の受診率低下や予防行動の不足につながることは、多くの研究で示されています。
フレーミング効果:伝え方で印象が変わる
「手術の成功率は90%」と「手術の失敗率は10%」では、同じ内容であっても患者の反応は大きく異なります。これが「フレーミング効果」です。医療におけるインフォームドコンセントの場面では、この効果を意識することが重要になります。
利用可能性バイアス:繰り返し見ると信じてしまう
怪しげな健康食品でも、目を引く広告を何度も見かけると、つい試してみたくなる。これは「利用可能性バイアス」の働きです。医療におけるエビデンスは、このバイアスを補正するための重要な手段といえます。
医療本おすすめ:ヘルスリテラシーを高める「か・ち・も・な・い」
聖路加国際大学の中山和弘教授が提唱する「か・ち・も・な・い」は、健康情報の信頼性を確認するための実践的なフレームワークです。
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| か(書いた人は誰か) | 著者の専門性と利益相反 |
| ち(違う情報と比べたか) | 複数の情報源との照合 |
| も(元ネタは何か) | 一次情報の確認 |
| な(何のための情報か) | 情報の目的と意図 |
| い(いつの情報か) | 情報の鮮度と更新状況 |
このフレームワークを習慣化することで、System 2(論理的思考)を意識的に起動し、認知バイアスの影響を軽減することができます。
医療本おすすめ:エビデンスレベルを理解する
EBM(エビデンスに基づく医療)の考え方を理解することは、ヘルスリテラシー向上の基盤となります。
エビデンスレベルのピラミッド
エビデンスには信頼性の階層があります。
- システマティックレビュー・メタ分析:複数の研究を統合した最も信頼性の高いエビデンス
- ランダム化比較試験(RCT):無作為割付による介入研究
- コホート研究:長期的な追跡調査
- 症例対照研究:患者群と対照群の比較
- 症例報告・専門家意見:個別事例や経験に基づく見解
「〇〇大学の研究」という情報だけでは、そのエビデンスレベルを判断することはできません。RCTやメタ分析の結果を重視し、単一の研究に飛びつかないことが重要です。
医療本おすすめ6選:認知科学者が厳選したヘルスリテラシー向上の必読書
1. これからのヘルスリテラシー 健康を決める力
ヘルスリテラシー研究の第一人者である中山和弘教授による決定版。2023年ヘルスコミュニケーション関連学会優秀書籍賞を受賞した本書は、「か・ち・も・な・い」の提唱者自身による解説という点で、最も信頼性の高い一冊です。
フルカラーで視覚的にわかりやすく、日本人のヘルスリテラシーが欧州と比較して低い現状や、SNS時代の情報リテラシーについても詳細に解説されています。
2. FACTFULNESS(ファクトフルネス)
医師であり公衆衛生学者でもあったハンス・ロスリングが、データに基づいて世界を正しく見る方法を解説した世界的ベストセラー。ビル・ゲイツやバラク・オバマも絶賛した本書は、「10の思い込み」を乗り越えることで、認知バイアスから解放される道筋を示しています。
健康・医療の文脈に限らず、あらゆる情報を批判的に評価する力を養うための必読書です。
3. 世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事
UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)医療政策学・医療経済学助教授の津川友介氏が、エビデンスレベルの高い研究のみを厳選して紹介した一冊。発売10日間で10万部を突破したベストセラーです。
「体に良い食べ物」と「体に悪い食べ物」を、観察研究やRCTの結果に基づいて明確に分類。「〇〇が健康に良い」という曖昧な情報に振り回されがちな読者にとって、科学的根拠に基づく判断基準を提供してくれます。
4. LIFESPAN(ライフスパン):老いなき世界
ハーバード大学医学部教授のデビッド・シンクレアが、老化研究の最前線を解説した話題作。「老化は病気であり、治療可能である」という革新的な主張は、私たちの「老い」に対する認識を根本から覆します。
世界20カ国で刊行され、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラーとなった本書は、最新の科学研究に基づきながらも一般読者にわかりやすく書かれています。
5. 最高の体調
科学ジャーナリストの鈴木祐氏が、「進化医学」の視点から現代人の不調の原因と対策を解説。私たちの体は狩猟採集時代に最適化されており、現代の生活環境との「ミスマッチ」が様々な文明病を引き起こしているという主張は、認知科学的にも説得力があります。
炎症、腸内環境、自然との接触など、多角的な視点から健康を捉える本書は、単なる健康ハウツー本とは一線を画しています。
6. 医者が教える食事術 最強の教科書
AGE牧田クリニック院長で糖尿病専門医の牧田善二氏が、20万人以上の患者を診てきた臨床経験に基づいて、医学的に正しい食べ方を68項目にまとめた一冊。
血糖値のコントロールを中心とした内容は、特に糖尿病予備群や生活習慣病が気になる方にとって実践的な指針となります。臨床経験に基づく知見と科学的エビデンスを組み合わせた説得力のある内容です。
医療本おすすめ:認知科学に基づく4つの実践法
これらの書籍から学んだ知見を、日常生活で実践するための4つのポイントをまとめます。
1. System 2を意識的に起動する
健康情報を見たら、すぐに信じずに一度立ち止まる習慣をつけましょう。「この情報は本当か?」と自問することで、直感的なSystem 1の判断を、論理的なSystem 2でチェックすることができます。
2. 「か・ち・も・な・い」で確認する
情報の出所と著者の専門性を確認し、複数の情報源で照合することを習慣化しましょう。元となるエビデンスを調べることで、情報の信頼性を客観的に評価できます。
3. エビデンスレベルを意識する
「〇〇大学の研究」という情報だけでは不十分です。RCTやメタ分析の結果を重視し、単一の研究に飛びつかないようにしましょう。
4. 認知バイアスを自覚する
以下の問いを自分自身に投げかけることで、認知バイアスの影響を軽減できます。
- 自分が信じたいことを裏付ける情報ばかり集めていないか?(確証バイアス)
- 珍しい事例に過剰に反応していないか?(可用性ヒューリスティック)
- 「自分は大丈夫」と楽観していないか?(楽観バイアス)
科学的根拠のある健康習慣として、基本的な栄養素の補給もおすすめします。
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まとめ:メタ認知が医療判断の質を高める
認知バイアスを完全に排除することは不可能です。しかし、自分自身の認知の傾向を理解し、意識的にチェックすることで、医療情報の判断精度を大幅に向上させることができます。
このような「自分の認知についての認知」をメタ認知と呼びます。メタ認知を涵養することが、認知バイアスから逃れる第一歩であり、ヘルスリテラシー向上の核心といえるでしょう。
今回紹介した6冊は、いずれも科学的根拠に基づいた信頼性の高い書籍です。まずは『これからのヘルスリテラシー』で基礎を固め、『FACTFULNESS』で認知バイアス全般への理解を深めた上で、関心のある分野の専門書に進むことをおすすめします。
健康情報があふれる現代において、正しい判断力を身につけることは、自分と家族の健康を守るための最も重要な投資です。
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