レビュー

概要

『これからのヘルスリテラシー 健康を決める力』は、「健康を決める力=意思決定する力」を鍛えるための本です。健康の情報って、テレビ、SNS、口コミ、専門家の発信…とにかく多い。しかも、強い言い切りほど拡散されるから、気づくと“怖い情報”や“都合の良い情報”に振り回されてしまいます。

本書は、医学的な基礎知識がなくてもヘルスリテラシーを身につけられる、とされています。フルカラーで視覚的に分かりやすく、諸外国との比較やSNS、新型コロナウイルスといった近年の話題も扱う。つまり、「知識を詰める」より「判断の仕方を学ぶ」教科書です。

読みどころ

1) いきなり“正解の健康法”を提示しない

健康本の多くは、「これをやればOK」に寄ります。でも本書は逆で、まず「ヘルスリテラシーとは意思決定する力」と定義し、情報に基づく意思決定へ進みます。健康を“手段”ではなく“判断”として扱うので、長く使える視点が残ります。

2) エビデンスを「信頼できる情報」として扱い、距離感を作る

エビデンスという言葉は便利ですが、万能ではありません。本書は、信頼できる情報としてのエビデンスを扱い、よりよい意思決定のプロセスと落とし穴まで説明します。「科学っぽい」情報に弱い人ほど、ここを知っておく価値が大きいです。

3) ネット時代の“情報の確かめ方”が具体化されている

目次に「情報の信頼性の確認方法『か・ち・も・な・い』」という章があります。こういう覚えやすい型があると、情報の洪水の中でも立ち止まれる。SNSの流行や煽りに飲まれにくくなります。

本の具体的な内容

目次は次のように、意思決定を中心に組まれています。

  • 第1章:ヘルスリテラシーとは意思決定する力
  • 第2章:納得がいく意思決定は情報に基づく意思決定
  • 第3章:信頼できる情報としてのエビデンス
  • 第4章:よりよい意思決定のプロセスと落とし穴
  • 第5章:コミュニケーションとインターネットがもたらす変化
  • 第6章:情報の信頼性の確認方法「か・ち・も・な・い」
  • 第7章:ヘルスリテラシーを支えあう市民・患者と医療者のコミュニケーション
  • 第8章:患者・市民中心の意思決定支援
  • 第9章:意思決定ガイドで「胸に『お・ち・た・か』」を学ぶ
  • 第10章:日本人のヘルスリテラシーの低さと意思決定できる幸せ
  • 第11章:へルスリテラシーに配慮した社会づくり(組織、病院、職場)
  • 第12章:子どもと高齢者のヘルスリテラシー
  • 第13章:健康をつくる力からみた健康
  • 第14章:誰もが参加できるソーシャルメディアとヘルスリテラシー
  • 第15章:新型コロナウイルスで問われたヘルスリテラシー

「健康教育や公衆衛生、健康科学の教科書としておすすめ」とある通り、個人の生活改善だけでなく、社会の中で意思決定を支える視点まで扱います。健康は個人の努力だけで決まらない、という現実に向き合う構成だと感じました。

類書との比較

健康本は、食事・運動・睡眠のような具体テーマに寄ったものが多いです。本書はそれらを“どう選ぶか”の本。だから、流行の健康法が変わっても、SNSの話題が変わっても、使い回せます。

また、「患者・市民中心の意思決定支援」や「社会づくり」まで扱う点で、自己啓発系の健康本より、公衆衛生の教科書に近い立ち位置です。逆に、今すぐできる具体的な健康法だけが欲しい人には遠回りに感じるかもしれません。

こんな人におすすめ

  • 健康情報に振り回されて疲れている人
  • 「科学的に正しい」に弱く、判断軸を作りたい人
  • 家族の健康や医療の意思決定で迷うことが増えてきた人
  • 職場や学校で、健康教育・啓発に関わる人

感想

健康は、知識の量より「決め方」で差がつくと感じます。何を信じるか、何を選ぶか、何を続けるか。情報が増えるほど、弱いのは“決め方”です。判断軸がない人ほど損をしやすい。本書はその“決め方”を、エビデンスとコミュニケーションの両方から支えてくれるのが良かったです。

特に、SNSやコロナの話題まで含めて扱うことで、「医療は病院の中だけのものではない」という現実が見えてきます。自分の健康だけでなく、家族や社会の意思決定にも関わるテーマだからこそ、こういう教科書が必要なんだと思いました。

目次にある「か・ち・も・な・い」や「お・ち・た・か」のように、判断の型を“覚えられる形”にしているのも良いところです。情報の信頼性って、本当は毎回丁寧に確かめたいけど、日常ではそんな余裕がない。だからこそ、型があるだけで立ち止まれる確率が上がります。

健康情報は、善意や不安で拡散されるので、「正しいかどうか」だけでなく「自分は何を根拠に信じたのか」を振り返れる状態が大事だと感じます。本書は、その振り返りまで含めて“ヘルスリテラシー”だと教えてくれる。流行の健康法に疲れた人ほど、一度戻ってきたい土台の本でした。

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    大手出版社で書籍編集を10年経験後、独立してブロガーとして活動。科学論文と書籍を融合させた知識発信で注目を集める。
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    佐々木 健太

    元外資系コンサルタントから転身したライター。経済学の知識を活かしながら、健康・お金・人間関係の最適化を追求。エビデンスベースの実践的な知識発信を心がける。

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