涙とストレス解消の健康科学!カタルシス効果エビデンスで読む感動漫画5選

涙とストレス解消の健康科学!カタルシス効果エビデンスで読む感動漫画5選

「泣いたらスッキリする」は本当か

博士課程で認知科学を研究している僕は、研究室で行き詰まったとき、意図的に「泣ける漫画」を読むことがある。

「泣いたらスッキリする」という感覚は多くの人が経験しているが、科学的にはどう説明されるのだろうか。

興味深いことに、2019年にEmotion誌で発表された研究では、197名の被験者を対象に、泣くことと生理的ストレス反応の関係を調査した結果、泣くことが呼吸を安定させ、心拍数を調整する効果があることが示された(DOI: 10.1037/emo0000633)。

今回は、涙とカタルシスの科学エビデンスに基づいて、ストレス解消に効く感動漫画5作品を選定した。

涙とカタルシスの心理学的基盤

カタルシスとは何か

カタルシス(catharsis)とは、「強い感情の表現によって生じる解放感」を指す。

2014年にFrontiers in Psychologyで発表されたレビュー論文では、35カ国を対象とした回顧的調査で、大多数の人が「泣いた後に気分が良くなった」と報告していることが確認された(DOI: 10.3389/fpsyg.2014.00502)。

しかし、この研究は同時に興味深い発見もしている。実験室での研究では、泣いた直後は気分が悪化するが、時間が経つと回復し、泣く前よりも気分が良くなることがあるというのだ。

泣くことの生理的メカニズム

泣くことがストレス解消につながるメカニズムとして、以下が提唱されている:

  1. 副交感神経系の活性化: 泣くことで副交感神経が活性化し、身体がリラックスモードに入る
  2. オキシトシンの分泌: 長時間泣くと、「絆ホルモン」と呼ばれるオキシトシンが分泌される
  3. 呼吸の安定化: 2019年の研究では、泣いている間は呼吸が安定し、泣いていない人よりも呼吸率の上昇が抑えられることが示された

物語とカタルシス

2013年にPLOS ONEで発表された研究では、フィクションを読んで「物語に没入」した人は、共感能力が向上することが示された(DOI: 10.1371/journal.pone.0055341)。

重要なのは、この効果が「感情的に物語に入り込んだ」場合にのみ見られたという点だ。つまり、物語への没入と感情的反応(涙を含む)は、心理的効果と関連しているのだ。

漫画で泣く意義

漫画は、安全な環境で強い感情を体験させてくれる。実生活では泣くことに抵抗がある人も、漫画のキャラクターに感情移入することで、自然に涙を流すことができる。

また、2024年の研究によると、物語への没入(narrative transportation)は、読者が登場人物の視点を想像し、共感することで生じる。漫画の視覚的表現は、この没入を促進する効果がある。

ストレス解消に効く感動漫画5選

1. 『ONE PIECE』尾田栄一郎 ー 仲間との絆と別れ

ONE PIECE 1巻

著者: 尾田 栄一郎

海賊王を目指す少年ルフィの冒険。仲間との絆、別れ、再会を描く大長編

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『ONE PIECE』は、海賊王を目指す少年ルフィが仲間と共に冒険する物語だ。

カタルシスの観点から注目すべきは、この漫画が描く**「別れ」と「絆」**の場面だ。

ゴーイングメリー号との別れ、エースの死、ナミの過去、チョッパーとヒルルクの物語。これらの場面では、多くの読者が涙を流す。しかし、単に悲しいだけではない。喪失を経験し、それでも前に進むという構造が、カタルシスを生み出している。

研究が示すように、泣いた直後は気分が悪化するが、その後回復する。『ONE PIECE』の感動シーンも同様で、泣いた後には「明日も頑張ろう」という気持ちが湧いてくる。

カタルシス心理学的ポイント: 喪失と前進の物語構造による感情の解放。

2. 『フルーツバスケット』高屋奈月 ー 傷ついた心の癒し

フルーツバスケット 1巻

十二支の呪いを受けた一族と、孤児の少女の交流。心の傷と癒しを描く名作

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『フルーツバスケット』は、十二支の動物に変身する呪いを受けた草摩家と、母を亡くした少女・本田透の交流を描く物語だ。

この漫画が泣ける理由は、「傷ついた心」を正面から描いている点だ。

草摩家の人々は、それぞれ深い心の傷を抱えている。家族からの拒絶、自己否定、孤独。しかし、透との出会いを通じて、少しずつ心を開いていく。

カタルシス研究では、泣くことの効果は「社会的サポート」があるときに高まることが示されている。『フルーツバスケット』で登場人物が癒されていく姿を見ることで、読者自身も「自分も受け入れられている」という感覚を得られる。

また、この漫画は**「泣くこと自体」を肯定的に描いている**。透が「泣いてもいいんですよ」と言う場面は、読者にとっても涙を流す許可を与えてくれる。

カタルシス心理学的ポイント: 傷の受容と、泣くことへの許可。

3. 『暗殺教室』松井優征 ー 終わりと成長のカタルシス

暗殺教室 1巻

著者: 松井優征

謎の生物を暗殺するために学ぶ中学生たち。師弟の絆と成長を描く

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『暗殺教室』は、謎の超生物「殺せんせー」を暗殺するために、落ちこぼれクラスの生徒たちが成長していく物語だ。

この漫画が最終回で多くの読者を泣かせたのは、「終わり」と「成長」が重なる瞬間を描いたからだ。

生徒たちは1年間、殺せんせーと過ごす。その間に彼らは大きく成長する。しかし、物語の目的は「殺せんせーを暗殺すること」だ。成長すればするほど、別れが近づく。

この**「成長=別れへの接近」**という構造が、強烈なカタルシスを生む。最終回で殺せんせーに別れを告げる場面は、「卒業」という普遍的なテーマと重なり、読者の感情を揺さぶる。

カタルシス心理学的ポイント: 終わりと成長の重なりによる感情の解放。

4. 『プラネテス』幸村誠 ー 夢と死に向き合う

プラネテス 1巻

著者: 幸村誠

宇宙でスペースデブリを回収する作業員たちの物語。夢と現実、生と死を描く

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『プラネテス』は、宇宙でスペースデブリ(宇宙ゴミ)を回収する作業員たちの物語だ。

この漫画が深い感動を与えるのは、「夢」と「死」という重いテーマを正面から描いているからだ。

主人公のハチマキは、自分の宇宙船を持つという夢を持っている。しかし、宇宙は危険な場所だ。同僚が事故で亡くなる。夢を追うことのリスクと、それでも夢を追う意味を、物語は問いかける。

カタルシス研究では、**「ネガティブな感情を安全に体験する」**ことの価値が指摘されている。『プラネテス』は、死や挫折という重いテーマを、フィクションという安全な枠組みの中で体験させてくれる。

カタルシス心理学的ポイント: 重いテーマを安全に体験することによる感情の浄化。

5. 『この音とまれ!』アミュー ー 音楽が感情を解放する

この音とまれ! 1巻

箏曲部を舞台に、音楽と青春を描く。演奏シーンの感動が圧巻

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『この音とまれ!』は、廃部寸前の箏曲部を立て直すために奮闘する高校生たちの物語だ。

この漫画が泣けるのは、「音楽」という感情表現の手段を描いているからだ。

登場人物たちは、言葉では表現できない感情を、箏の演奏に込める。大会での演奏シーンでは、彼らの成長、葛藤、絆がすべて音楽として表現される。読者は、その「音」を想像しながら涙を流す。

興味深いことに、カタルシス研究では**「感情を表現すること」自体が心理的効果を持つ**ことが示されている。『この音とまれ!』の登場人物が演奏を通じて感情を解放する姿は、読者自身の感情解放のモデルになる。

カタルシス心理学的ポイント: 音楽(芸術)を通じた感情の表現と解放。

カタルシス要素別・漫画の読み方

カタルシスの要素該当漫画学べるポイント
別れと前進ONE PIECE喪失を経験し、前に進む
傷の癒しフルーツバスケット心の傷を受け入れる
終わりと成長暗殺教室別れを通じて成長する
重いテーマの体験プラネテス安全に深い感情を体験する
感情の表現この音とまれ!言葉以外で感情を表す

漫画でカタルシスを得る3つの方法

1. 「泣くこと」を自分に許可する

研究によると、泣くことの効果は**「恥ずかしさ」や「抵抗」があると低下する**。漫画を読むときは、「泣いてもいい」と自分に許可を与えよう。一人で読む環境を整えるのも効果的だ。

2. 物語に「没入」する

カタルシス効果は、物語に深く入り込んだときに高まる。スマホの通知をオフにし、集中できる環境で読む。登場人物の気持ちを想像しながら読むことで、感情移入が深まる。

3. 泣いた後の「回復時間」を取る

研究が示すように、泣いた直後は気分が悪化することがある。しかし、時間が経つと回復し、泣く前よりも気分が良くなる。泣いた後は、すぐに次の活動に移らず、感情を整理する時間を取ろう。

まとめ:泣くことは「弱さ」ではない

「泣く」ことに対してネガティブなイメージを持つ人もいる。しかし、科学が示すように、泣くことは心身を調整するメカニズムの一つだ。

2019年の研究が示すように、泣くことは呼吸と心拍を安定させる効果がある。また、物語への没入と感情的反応は、共感能力の向上とも関連している。

今回紹介した5作品は、それぞれ異なる角度から「泣ける」体験を提供してくれる。「最近泣いていないな」と感じている人は、ぜひ一人で静かに読んでみてほしい。

漫画を読んで涙を流した後、きっと心が少し軽くなっているはずだ。

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西村 陸

京都大学大学院で認知科学を研究する博士課程学生。理系でありながら文学への造詣も深く、科学と文学の交差点で新たな知の可能性を探求。

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