『ほどなく、お別れです』感想・レビュー【映画化で話題の葬儀ファンタジー小説】
「別れの言葉を、こんなふうに言えたらいいのに」
長月天音さんの『ほどなく、お別れです』を読み終えたとき、最初に浮かんだのがこの感想でした。
タイトルからして静かな物語を想像していたのですが、実際は想像以上に“生きる側”の気持ちに寄り添う作品でした。葬儀という重たいテーマを扱いながら、読後には不思議と前を向ける。そういう力を持った小説です。
2026年2月6日(金)には、浜辺美波さん・目黒蓮さんW主演で映画版が公開され、原作への注目も一気に高まりました。公開後の2026年2月14日報道では、公開7日間で興行収入11億円超のヒットになっていて、まさに「今読む価値がある」一冊だと感じています。
『ほどなく、お別れです』とは
長月天音による葬儀ファンタジー小説。就職活動に悩む主人公・清水美空が、葬祭プランナーの現場で“お見送り”の意味を学んでいく物語。
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本作は、長月天音さんのデビュー作であり、「小学館文庫小説賞」大賞受賞作でもあります。
主人公は、就職活動がうまくいかず将来に迷っている清水美空。偶然のきっかけで葬儀会社に関わることになり、納棺師でもある先輩葬祭プランナー・漆原礼二と出会います。美空は現場で厳しく鍛えられながら、遺族と故人に向き合う仕事の意味を学んでいきます。
「葬儀小説」と聞くと重く感じるかもしれませんが、実際には読みやすく、エピソードごとの温度感が絶妙です。悲しみを扱いながらも、読者を置いていかないやさしさがあります。
あらすじ(ネタバレ控えめ)
就活に連敗し、自分に何ができるのかわからなくなっていた美空は、葬儀会社・坂東会館で働くことになります。
最初は戸惑いの連続です。遺族の感情の大きさ、現場で求められる気配り、言葉の重み。どれも学校や就活では教えてもらえないことばかり。それでも、美空は漆原の背中を見ながら、一件一件の葬儀に向き合っていきます。
物語は「死」そのものより、「残された人がどう区切りをつけるか」に重点が置かれています。だからこそ、ただ悲しいだけで終わらず、「今日をどう生きるか」を考えたくなる構成になっています。
読みどころ
1. 葬儀を“人生の区切りの儀式”として描く視点
この作品で印象的なのは、葬儀を業務として処理するのではなく、故人と遺族の関係をつなぎ直す時間として描いていることです。
「きれいに送る」だけではなく、「残された人がこれから生きていくために何が必要か」を考える。形式だけでは埋まらない部分に、登場人物たちが本気で向き合う姿が描かれます。
ニュースで見る葬儀はどうしても外側の情報だけになりがちですが、本作は内側の感情に踏み込んでくれるので、読者側の見え方も変わっていきます。
2. 主人公・美空の成長がリアル
美空は最初から強い主人公ではありません。迷うし、落ち込むし、言葉を選びきれず失敗もします。この不器用さがとてもリアルです。
だからこそ、少しずつ「相手の気持ちを受け止める力」を身につけていく変化が説得力を持ちます。成長物語としての手触りがしっかりあるので、感情移入しやすいんですよね。
キャリアに迷っている時期に読むと、「完璧じゃなくても、現場で育っていける」というメッセージとして響きます。
3. ことばの温度が高い
この小説には、派手な名言よりも「現場で実際に必要な言葉」が多く出てきます。
遺族に寄り添うとき、何を言うかより、どう在るか。励ましのつもりの言葉が相手を追い込むこともあるし、短い一言が救いになることもある。そうした言葉の繊細さが繰り返し描かれることで、会話の解像度が上がります。
読後に日常会話まで少し丁寧になる、そんなタイプの作品です。
この本を読んで感じたこと
読んでいて何度も思ったのは、「別れを避けるほど、今を雑に扱ってしまう」ということでした。
普段は「いつでも連絡できる」「また会える」と思って後回しにしがちなことが、この物語では後回しにできません。だからこそ、日々の会話や関係をちゃんと扱う大切さが浮き彫りになります。
もう一つ強く感じたのは、仕事の価値は“目立つ成果”だけで決まらないという点です。葬祭プランナーの仕事は、派手な評価を得にくいかもしれませんが、誰かの人生に深く関わる仕事でもある。そういう「見えにくい貢献」に光を当てる姿勢が、この小説のすごく好きなところです。
映画版が話題になってから原作を手に取る人も多いと思いますが、原作は人物の内面がより丁寧に描かれているので、映画を観たあとにも読む価値があります。むしろ両方に触れると、作品世界の厚みが増します。
実生活で活かせる3つのポイント
1. 「大事な人との連絡」を先送りしない
この本を読んでから、連絡しようと思った相手にはその日のうちに短く送るようにしました。
長文じゃなくていいし、完璧な言葉じゃなくてもいい。先送りしないこと自体が、関係を守る行動になると実感しています。
2. 気遣いは“正解探し”より“相手を見る”
相手を励ます言葉を探すより、相手の状態を見ることのほうが大事だと、この物語は何度も教えてくれます。
会話で迷ったときは、結論を急がず、まず相手の話を受け止める。これだけで人間関係の摩擦はかなり減ります。
3. 仕事選びの軸を「社会的意義」でも持つ
転職やキャリアを考えるとき、条件面だけで判断すると迷いやすいです。
この作品を読むと、「自分の仕事は誰のどんな時間を支えているか」という視点が持てるようになります。収入や肩書きだけでなく、仕事の意味で選ぶ感覚を育てたい人におすすめです。
こんな人におすすめ
- 映画『ほどなく、お別れです』を観て原作が気になっている人
- 最近、人間関係や別れについて考えることが増えた人
- やさしいけれど薄くない感動小説を読みたい人
- 仕事の意味を見失いかけている人
- 「泣ける」だけで終わらない物語を探している人
まとめ
『ほどなく、お別れです』は、死を扱いながら、実は「どう生きるか」を丁寧に描いた小説です。
映画化で話題になっている今だからこそ、原作の言葉の温度をじっくり味わってほしいと思います。しんどい時期に読むと、前向きな気合いではなく、静かな支えをもらえるタイプの一冊です。
「大切な人との時間を、ちゃんと大切にしたい」
そんな気持ちが少しでもあるなら、この本はきっと響きます。
映画化で話題の葬儀ファンタジー小説。別れと向き合う人たちの物語を通して、今日をどう生きるかを考えさせてくれる一冊。
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