『組織の違和感』要約【リモートワーク後のリーダーは何を変えるべきか】
はじめに
リモートワークと出社のハイブリッドが定着してから、チーム運営の難しさはむしろ増えたと感じる場面が多い。
- 会議は終わったのに、誰も納得していない
- 1on1をしても、表面的な会話で終わる
- 「言ったつもり」「伝わったはず」のズレが繰り返される
勅使川原真衣さんの『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』は、このズレを「個人のやる気不足」ではなく、観察と設計の問題として扱う一冊だった。
この本の要点(内容要約)
1. 違和感は「未処理の情報」であり、問題の入口になる
本書の出発点はシンプルで、職場の「あれ、なんか変だな」を放置しないことだ。わかりやすいトラブルだけを問題認定していると、見えないズレは蓄積し、あとで大きな離職・対立として噴き出す。
違和感の段階で立ち止まり、事実を観察し、解釈を分ける。この順番を守るだけで、議論の質が上がるというのが第1章の核になっている。
2. まず相手の前に「自分の解釈のクセ」を把握する
第2章では、自分がどの場面で過敏になり、どの場面で見落とすかを確認する重要性が示される。リーダーが自分の反応パターンを理解していないと、部下の行動をすぐに「態度の問題」に変換してしまう。
本音と建前のズレ、無意識の決めつけ、感情が動く引き金を可視化することで、対話の精度が上がる。相手を変える前に観測装置を整える、という整理が実務的だった。
3. 相手を「性格」ではなく「行動パターン」で見る
第3章では、対人コミュニケーションを相性の問題として捉える。重要なのは、好き嫌いで人を見るのではなく、意思決定の速さ、説明の粒度、反応のスタイルといった観察可能な行動で把握すること。
この視点に変えると、「あの人は扱いづらい」から「この人には先に論点を整理して渡すほうが機能する」と打ち手に変換できる。
4. 組織は「最適な人材探し」より「今いる人の組み合わせ」
第4章は、万能な個人を求める発想から抜けることを促す。チーム成果は個人能力の単純和ではなく、役割分担と相互補完の設計で決まる。
評価と評判を混同しない、感情的なラベリングを減らす、仕事の依頼を「誰に何をどう渡すか」で具体化する。リーダーの仕事は管理より機能設計だと整理される。
5. 対話は「正しい言葉」より「訂正可能な関係」をつくる
第5章・第6章では、面談、相談、雑談、フィードバックの場面ごとに、決めつけを減らす話し方が提示される。100%わかり合うことを目標にせず、ズレたら訂正できる関係を維持することが重視される。
「いてくれてありがとう」から始まる信頼、否定から入らない交通整理、感謝と確認の反復。派手さはないが、離職防止と心理的安全性に直結する実装論だ。
ここが実務で効く(分析)
この本を読んで特に有効だと感じたのは、リモートワーク後のマネジメント課題に対して、再現しやすい分解軸を与えてくれる点だ。
よくある失敗は、成果が落ちたときに「気合い」「コミュ力」「当事者意識」で片づけることだが、本書はそれを避ける。代わりに、
- 事実(何が起きたか)
- 解釈(どう意味づけたか)
- 設計(次回どう場を作るか)
に切り分ける。これにより、人格批判をせずに改善サイクルを回せる。
また、相性を固定的な相手評価ではなく、状況依存の組み合わせ問題として扱うため、リーダーが打てる手が増える。評価面談、会議設計、役割分担、オンボーディングなど、管理職の主要業務に直接接続できる内容だ。
明日からの実践(20%)
1. 1週間の「違和感ログ」を取る
会議・1on1・チャットで「なんか変だ」と思った場面を1行で記録する。ポイントは結論を書かないこと。まず事実だけ集める。
2. 週次会議で「解釈」を分けて確認する
同じログをチームで見て、「事実」と「推測」を分離して話す。ここで初めて対策を決めると、責任の押し付け合いが減る。
3. 面談の冒頭質問を固定する
1on1の最初に毎回この2問を聞く。
- 今週、進めやすかった仕事は何か
- 今週、進めにくかった仕事は何か
この定点観測だけで、相性と業務設計のズレが早期に見えるようになる。
まとめ
『組織の違和感』は、リーダーの仕事を「指示する人」から「関係と場を設計する人」へ再定義する本だった。
リモートワーク後の現場では、見えにくいズレをどれだけ早く観察し、決めつけずに扱えるかが成果を左右する。違和感をノイズではなくデータとして扱う姿勢が、チーム運営の質を一段引き上げる。
