『虚弱に生きる』要約・感想|頑張れない世代の生存戦略エッセイ

『虚弱に生きる』要約・感想|頑張れない世代の生存戦略エッセイ

「体力がない」

この一言が、どれだけ重いか。

病気じゃない。健康診断も問題ない。でも、とにかく体力がない。

仕事から帰ってきたら、何もできずに倒れる。週末は回復に充てるだけで終わる。友達との予定は、体調を見ながらキャンセルすることもある。

28歳、フリーランス。私も「虚弱」の側にいる人間だ。

『虚弱に生きる』を読んで、初めて「自分だけじゃなかった」と思えた。

『虚弱に生きる』とは

虚弱に生きる

絶対に終電を逃さない女著。病気じゃないけど体力がない。労働する元気も恋愛する元気もない著者による、虚弱体質のリアルをつづるサバイバル・エッセイ。扶桑社刊。

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著者の絶対に終電を逃さない女さんは、1995年生まれの文筆家。

大学卒業後、体力がないせいで就職できず、専業の文筆家になったという経歴を持つ。

SNSで「虚弱エッセイ」が話題となり、本書が刊行された。

本書では、「病気じゃないけど体力がない」という曖昧な状態を生きる著者のリアルが綴られている。

衝撃の告白:「睡眠時間は10時間必要です」

本書を読んで最初に衝撃を受けたのは、著者の日常だ。

「短く説明するのが難しいんですが、まず睡眠時間は10時間必要です。体力がないからすぐに疲れるし、少しでも無理をすると体調を崩します」

10時間睡眠——。

これを聞いて「甘えだ」と思う人もいるかもしれない。

でも、私にはわかる。必要なものは必要なのだ。

私も7時間睡眠では足りない。8時間寝ても、疲れが抜けない日がある。

「普通の人」と同じ生活ができない。それが、虚弱体質のリアルだ。

「体力をつけるための体力がない」

本書で最も共感したのは、この言葉だ。

「体力をつけるための体力がない」

「体力がないなら運動すればいい」——そう言われることがある。

でも、運動するための体力がないのだ。

仕事でヘトヘトになった体で、ジムに行く気力なんてない。休日は体力を回復させるだけで精一杯。

この矛盾を、著者は見事に言語化してくれた。

本書の構成:虚弱を多面的に捉える

本書は全5章で構成されている。

第一章「体力がないと何もできない」

体力がないと、仕事もできない。趣味もできない。恋愛もできない。

体力は、あらゆる活動の土台だということを、著者は身をもって示している。

第二章「健康に捧げた二十代後半」

著者は二十代後半を「健康のため」に捧げたという。

整体、鍼灸、漢方、サプリ——。あらゆることを試してきた。

私も似たような経験がある。健康になるために、お金と時間を費やしてきた。

第三章「なぜ虚弱なのか」

なぜ自分は虚弱なのか。著者は自分のルーツを探る。

眼鏡をかけて不眠症が治った話、体育での傷が今も残る話——。

原因がはっきりしない不調を抱えて生きる難しさが綴られている。

第四章「虚弱な女として生きる」

女性として虚弱に生きることの難しさ。

生理を巡る葛藤、「女性なのに体力がない」という偏見——。

ジェンダーの視点からも、虚弱を捉え直している。

第五章「虚弱の現在と未来」

虚弱な自分と、どう折り合いをつけていくか。

著者なりの「生存戦略」が語られる。

私が共感した3つのポイント

1. 「家と職場の往復で疲れ切る」

「家と職場の往復で疲れ切ってしまい、アフターファイブに飲みに行ったり習い事をするなんてもってのほか」

これ、本当にそう。

仕事が終わって、まっすぐ家に帰る。ご飯を食べて、お風呂に入って、寝る。それだけで精一杯。

「仕事帰りにジム」「退勤後に飲み会」——そんな生活は、私には無理だ。

2. 「理由のはっきりしない不調」

著者は「理由のはっきりしない不調」を抱えている。

病院に行っても、「異常なし」と言われる。でも、確かに辛い。

この**「病気じゃないけど辛い」**という状態を、社会は認めてくれない。

本書は、そんな人たちの存在を可視化してくれた。

3. 「健康は社会資本」

著者は「体力」を「社会資本」と捉えている。

「体力という社会資本を持てない」

健康な体は、社会で生きていくための「資本」だ。

その資本を持たずに生きることの難しさを、著者は訴えている。

注意点:万人向けではない

正直に書くと、本書は万人向けではない

健康で体力のある人には、理解しにくい内容かもしれない。

「甘えでは?」「努力が足りないのでは?」——そう感じる人もいるだろう。

でも、著者はこう語っている。

「虚弱体質な人だけでなく、健康で体力のある人にも読んでもらいたい。そういう人達にも読んでもらわないと、社会に伝わらない」

この本は、虚弱な人のための本であると同時に、虚弱な人を理解するための本でもある。

読後感:「自分だけじゃなかった」

この本を読み終えて、泣きそうになった。

「自分だけじゃなかった」

ずっと、自分を責めてきた。「なんで普通のことができないんだろう」「もっと頑張らないと」——。

でも、頑張れないのは、頑張る体力がないからだ。

それは甘えじゃない。怠けでもない。

本書は、そんな私を肯定してくれた。

こんな人におすすめ

  • 「病気じゃないけど体力がない」と感じている人
  • 周りと同じペースで生活できず悩んでいる人
  • 「頑張れない自分」を責めている人
  • 虚弱体質の人の気持ちを理解したい人
  • 働き方や生き方を見直したい人

特に、「普通のことが普通にできない」と悩んでいる人に読んでほしい。

あなたは、一人じゃない。

まとめ:虚弱でも、生きていける

『虚弱に生きる』は、虚弱体質のリアルを可視化した画期的なエッセイだ。

著者の言葉は、飾り気がない。でも、だからこそ刺さる。

「体力がない」という一言の重さを、社会に伝えてくれた。

読み終えたとき、少しだけ肩の力が抜けた。

虚弱でも、生きていける。自分なりのペースで、生きていけばいい。

そんなことを、この本は教えてくれた。

虚弱に生きる

絶対に終電を逃さない女著。「病気じゃないけど体力がない」人のためのサバイバル・エッセイ。頑張れない自分を責めている人に。

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森田 美優

出版社勤務を経てフリーライターに。小説からビジネス書、漫画まで幅広く読む雑食系読書家。Z世代の視点から現代的な読書の楽しみ方を発信。

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