『それ犯罪かもしれない図鑑』要約【SNS時代の親子防犯ハンドブック】
はじめに
子どものトラブル対策というと、どうしても「知らない人についていかない」「SNSに気をつける」といった防犯の話に寄りがちです。
もちろんそれは大事です。けれど、今の子どもを取り巻くリスクは、もっと日常の中にあります。
- 友だちの写真を軽い気持ちで投稿する
- 書店で本を撮って共有する
- 空き家を秘密基地にする
- 自転車のライトが壊れたまま乗る
- 友だちの持ち物を隠して笑う
本人に悪気がなくても、ルール違反では済まないことがあります。しかもやっかいなのは、親の側も「それって本当にダメなの?」を即答しにくいことです。
『それ犯罪かもしれない図鑑』は、そうした日常のグレーゾーンを、子どもにもわかる場面に落とし込んで学べる本です。出版社の金の星社では ハンディ版 それ犯罪かもしれない図鑑 の書名で案内されており、この記事では公式紹介、プレスリリース、公開記事をもとに、その要点を整理します。
『それ犯罪かもしれない図鑑』書籍情報
- 書名: ハンディ版 それ犯罪かもしれない図鑑
- 監修: 小島洋祐
- 絵: 小豆だるま
- 出版社: 金の星社
- 初版: 2025年9月
- 判型: 19×14.8cm
- ページ数: 128ページ
- 対象: 小学校中学年から
- ASIN: 4323072171
金の星社の公式紹介では、本書を ありそうでなかった、法律 × 子どもあるある と位置づけています。現役弁護士の監修と、くすっと笑えるイラストを組み合わせ、子どもがやってしまいそうな行動を「なぜいけないのか」から考えられる形にした本です。
監修の小島洋祐氏は、東京弁護士会所属の弁護士で、港区教育委員会教育委員を歴任し、2021年には 小学生からのなんでも法律相談 の監修も担当しています。法律の専門性だけでなく、子ども向けに法を伝える経験がある点は、本書の信頼性につながっています。
『それ犯罪かもしれない図鑑』の要点
1. 法律を「遠いルール」ではなく「日常の行動」に引き戻している
この本のいちばん大きな特徴は、犯罪や違法行為を特別な世界の話にしていないことです。
金の星社の紹介文では、子どものちょっとした行動が、じつは法を犯しているかもしれないと説明されています。ここで扱われているのは、ニュースで見る大事件ではなく、子どもが日常でふとやってしまいそうなことばかりです。
たとえば公開情報で確認できるだけでも、次のような例があります。
- 人の家に入ったボールを勝手に取りに行く
- 空き家を秘密基地にする
- お金を見つけてそのまま持っていく
- 借りたマンガを返さず自分のものにする
- 友だちの写真をSNSにアップする
- 上履きを隠す
- 文化財に落書きする
- ながらスマホで移動する
こうした行動は、学校や家庭では「ダメなこと」として注意されても、法律と結びつけて説明される機会はそこまで多くありません。だから子どもは「怒られること」と「社会のルールに反すること」の違いを理解しにくい。
本書はそこを埋めてくれます。法律を暗記させるのではなく、「その行動は誰を困らせるのか」「なぜ社会で禁止されるのか」という筋道で理解させる入口になっているからです。
2. SNS時代の子どもが本当に直面する論点を外していない
今の子どもの防犯や法教育で外せないのが、SNSやスマホまわりの問題です。
金の星社のプレスリリースでは、本書が 子どもの行動とSNSの危険に特化した実践的な内容 を含むことが強調されています。紹介されている例もかなり現代的です。
- SNSのアイコンに推しの写真を使う
- 友だちと撮った写真を投稿する
- 書店で本を撮影する
これらは、子どもからすると悪ふざけでも悪意でもなく、「みんなやっている」「便利だから」「かわいいから」で済ませがちな行動です。ですが、著作権や肖像権、プライバシー、迷惑行為といった論点が絡みやすく、家庭で最初に線引きを学んでおいたほうがいい領域でもあります。
ここがこの本の強いところです。SNSトラブルを単に「危ないからやめよう」と怖がらせるのでなく、どうしてその行動が問題になるのかを場面から考えさせてくれる。防犯教育と情報モラル教育が自然に一つにつながっています。
3. 子どもを守る本であると同時に、加害者にしない本でもある
この本を防犯本としてだけ読むと、少しもったいないと感じます。
本書が本当に優れているのは、被害者にならないための感覚と、加害者にならないための感覚を同時に育てられるところです。
たとえば、友だちの写真を勝手に投稿する、上履きを隠す、借りたものを返さないといった行動は、子ども同士では「冗談」「ちょっとしたいたずら」で処理されやすいものです。けれど、それをされた相手には明確な被害があります。
家庭で子どもにルールを教えるとき、つい「自分が危ない目にあわないようにしよう」という話だけに寄りがちです。しかし社会で必要なのは、自分を守る感覚と、他人を傷つけない感覚の両方です。
本書は、法律という言葉を通してその両方を扱っています。だからこそ、単なるマナー本やトラブル防止本ではなく、社会性を育てる本としても価値があります。
4. 片ページ構成と4つの編で、家庭内の会話に使いやすい
プレスリリースでは、本書が ページをめくると違反内容がわかる片ページ構成 だと紹介されています。構成は まち編 / 友だち編 / 学校編 / 交通編 の4つです。
この作りはかなり実用的です。
親子で読む本は、内容が正しくても重すぎると続きません。とくに法律の話は、言葉だけで説明すると一気に説教っぽくなります。本書は場面が先にあり、答え合わせのように法律の解説が来る構成なので、雑談の延長で開きやすい。
たとえば夕食後に1ページだけ読む、通学や習い事の前に交通編だけ見る、SNSを始める前に友だち編を一緒に確認する、といった使い方がしやすいはずです。128ページのハンディ版で持ちやすい点も、その日常性に合っています。
なぜ今この本が必要なのか
1. 親の常識だけでは追いつかない論点が増えている
昔から「人のものを取ってはいけない」「いたずらしすぎない」といった基本は変わりません。
ただ、今はそこにSNS、画像共有、スマホ撮影、自転車マナー、ネット上の著作権感覚が重なっています。つまり、親が子どもの頃に自然に身につけたルールだけでは説明しきれない場面が増えているということです。
「これはダメ」と言えても、「なぜダメなのか」を言葉にできないと、子どもは場面が変わったときに応用できません。
本書が役に立つのは、その説明の骨組みを家庭に持ち込めるからです。親が完全に法律を理解していなくても、子どもと一緒に「これって誰が困る?」「どこが行き過ぎ?」と話しやすくなる。それだけでも価値があります。
2. 怖がらせる防犯ではなく、判断力を育てる防犯が必要になっている
防犯教育には、危険を知らせる役割があります。ただ、怖い事例だけを並べると、子どもは受け身になります。
一方でこの本は、「その行動はどう見えるか」「相手にどう影響するか」「社会ではどう扱われるか」を考える方向に読者を連れていきます。これは、防犯を 危ないからやめる で終わらせず、 自分で判断する 力に変えるうえで大事です。
SNSの投稿、友だちとの距離感、いたずらの線引き、交通ルールの軽視は、どれも一瞬の判断で決まります。だからこそ、家庭で前もって場面を共有しておく意味があります。
3. 子どもだけでなく、大人の学び直しにもなる
マイナビ子育ての記事でも、本書は子どもだけでなく大人にとっても「知らなかった」が多い本として紹介されていました。
実際、親世代でも次のようなことを曖昧に覚えている人は少なくないはずです。
- 勝手に人の写真を使うことの問題
- 落とし物を自分のものにしてよい境界
- いたずらと嫌がらせの違い
- 交通ルール違反が軽く見られがちなこと
子どもに教える立場の大人が学び直せる本は、家庭で強いです。親が一方的に教えるのでなく、「これ、自分も知らなかった」と言いながら一緒に読むほうが、子どもも聞きやすいからです。
『それ犯罪かもしれない図鑑』が支持されている理由
1. 社会問題と家庭の不安が、そのまま本のテーマになっている
この本が売れている背景には、家庭の不安と社会のニュースが地続きになっていることがあります。
ここ数年は、SNSトラブル、闇バイト、特殊詐欺、迷惑行為の拡散など、子どもがネットや街の空気に早く触れる時代特有の問題が目立っています。大きな事件だけでなく、写真の扱い、軽い気持ちの投稿、危険行為のまねといった「入口の小ささ」が怖い時代です。
その中で本書は、いきなり重い犯罪の話をするのではなく、日常の小さな行動から入ります。ここが親にとって使いやすい。家庭で最初に必要なのは、極端な事例の知識より、「その行動、どこからまずいのか」を共有することだからです。
2. 法律の話なのに、説教くさくなりにくい
法教育の本は必要でも、堅すぎると家庭では開かれません。
その点で本書は、図鑑形式とイラストの力をかなりうまく使っています。金の星社の紹介でも、くすっと笑える絵とまじめな解説の組み合わせが強調されていました。つまり、子どもが先に「これ見たことある」「これやりそう」と反応できるように作られているわけです。
親子向けの実用書では、この入りやすさが重要です。正しいことが書いてあっても、読まれなければ意味がありません。本書は、法律という硬いテーマを家庭内の雑談レベルまで下ろしてくれるので、読むハードルが低い。その設計が支持につながっているのだと思います。
3. 親子で同じ場面を見ながら話せる
プレスリリースでは、元版とハンディ版の累計が 53,000部に達したことや、Amazon の複数カテゴリで上位に入ったことが紹介されていました。数字も大きいですが、それ以上に強いのは、家庭で共有しやすいテーマ設計です。
子ども向けの本と親向けの本が分かれていると、結局「親だけが読んで終わる」ことがあります。本書はそうなりにくい。子どもは具体的な場面から入り、親はその背景にある法律やルールを学び直せるからです。
家庭で役立つ本は、読み終わったあとに会話が残る本です。本書は「知識を増やす本」というより、「これ、うちではどうする?」を話すための本として機能しやすい。そこがロングヒットの理由だと感じます。
読後に家庭で試したいこと
1. SNSと写真のルールを3つだけ決める
本書の内容を読んだあと、最初にやりやすいのは家庭内ルールの言語化です。
全部を細かく決める必要はありません。まずは3つで十分です。
- 友だちの写真は本人と保護者の了解なく載せない
- 人の作品や本は撮って配らない
- 困ったら消す前に大人へ相談する
ルールは少ないほうが守りやすいです。大事なのは、禁止事項の数ではなく、迷ったときに戻れる基準を持つことです。
2. 「被害」と「加害」をセットで話す
子どもとの会話では、「自分が危ない目にあわないようにしよう」だけで終わらせないほうが効果的です。
たとえば写真投稿の話なら、
- 勝手に投稿されたら自分はどう感じるか
- 自分が投稿したら相手はどう感じるか
の両方を聞いてみる。上履きを隠す話でも、
- されたら困ること
- した側はどこまで想像できていたか
を合わせて考える。こうすると、ルールが罰ではなく、相手と自分を守るためのものとして理解しやすくなります。
3. ニュースや日常の出来事とつなげる
この本は、一度読んで終わりにするより、日常の話題に戻して使うほうが向いています。
たとえば、
- 学校で友だち同士の写真の話が出た
- 公園で迷惑行為を見かけた
- 自転車の危ない乗り方を見た
- ニュースで闇バイトや特殊詐欺の話題を見た
といったタイミングで、「この前の本に似た場面あったよね」と戻れると強いです。
本書そのものが闇バイトや特殊詐欺を全面テーマにしているわけではありませんが、日常の小さなルールを軽く見ない感覚は、そうしたより深刻なリスクを避ける土台にもなります。法を遠いものではなく、自分の生活に関わるものとして感じられるからです。
『それ犯罪かもしれない図鑑』が向いている家庭
- 子どもがスマホやSNSに触れ始めている家庭
- いたずらや友だちトラブルを「どこまで注意すべきか」で迷う家庭
- 防犯だけでなく、法教育や情報モラルも一緒に扱いたい家庭
- 親子で読みながら会話できる、重すぎない実用書を探している家庭
小学校中学年からが対象ですが、公開情報を見る限り、親が横で一緒に読む前提なら、もっと早い段階の家庭でも話のきっかけにはなりそうです。逆に、中高学年以降は「知っているつもり」を崩す本として役立つはずです。
まとめ
『それ犯罪かもしれない図鑑』の良さは、法律を偉そうに語らないことにあります。
日常のいたずら、SNSでの軽い投稿、学校や交通のルール違反など、子どもにとって身近な場面から入り、「それはなぜ問題なのか」を一緒に考えられる。だから、防犯本としても、情報モラル本としても、社会性を育てる本としても使えます。
親子の会話で本当に役立つ本は、正しさを押しつける本ではなく、「これ、どう思う?」と話し始められる本です。本書はまさにそのタイプです。
SNS時代の子育てでは、危険を避けることと、他人を傷つけないことを同時に教える必要があります。その入口として、この本はかなり使いやすい一冊だと感じます。
