レビュー
概要
『ハンディ版 それ犯罪かもしれない図鑑』は、子どもが日常でついやってしまいそうな行動を、法律の視点から見直すための入門書です。金の星社の公式紹介では、法律 × 子どもあるある をテーマに、くすっと笑える絵と弁護士監修の解説で、違法になりうる行動をわかりやすく紹介する本だと説明されています。
内容の軸になっているのは、いわゆる重大犯罪の話だけではありません。空き家に勝手に入る、人の家に入ったボールを黙って取りに行く、友だちの写真をSNSに上げる、書店で本を撮影する、自転車のライトがつかないまま乗る、といった、子どもや保護者が「これもダメなのか」と感じやすい日常の境界線が扱われています。法律を恐怖で覚えるのではなく、生活のルールとして理解するための本だといえます。
読みどころ
本書の読みどころは、正しさを押しつける説教本ではなく、行動の場面から入れる点にあります。金の星社のプレスリリースでは、子どもがやってしまいそうな行動を50項目取り上げているとされ、構成も まち編 / 友だち編 / 学校編 / 交通編 と生活場面ごとに整理されています。これなら、抽象的な法律用語が苦手でも、自分の行動と結びつけて読み進めやすいはずです。
また、SNS時代の論点が入っているのも大きな特徴です。友だちとの写真投稿や推しの写真の扱いなど、いまの子どもにとって身近なテーマが含まれており、防犯や情報モラルの話と自然につながります。家庭で「やってはいけない」で終わらせず、「なぜダメなのか」「どこから他人を傷つけるのか」を話す材料として使いやすい本です。
本書の重要ポイント
重要なのは、この本が 被害者にならないため だけでなく、加害者にならないため の視点も同時に持っていることです。SNS、学校、交通、友人関係など、トラブルは被害と加害が紙一重で起こります。本書はその境目を子ども目線のシーンで示すことで、法教育と防犯教育を一冊でつなげています。
監修の小島洋祐氏は、弁護士として活動するだけでなく、港区教育委員会教育委員を歴任し、小学生からのなんでも法律相談 も監修しています。法律の専門性と、子ども向けに伝える経験の両方がある点は、本書の安心材料です。
気になった点
公開情報だけを見ると、本書はとても入りやすい反面、条文や罰則の厳密な説明を深掘りする本ではなさそうです。したがって、中高生以上が学校の法教育や時事問題をさらに深く学ぶには、別の資料で補う余地はあります。ただ、親子で最初に読む一冊としては、その軽さとわかりやすさこそ強みです。
まとめ
『ハンディ版 それ犯罪かもしれない図鑑』は、子どもにルールを教える本というより、家庭で社会のルールを話すきっかけを作る本です。SNSトラブル、いたずら、軽い気持ちの迷惑行為などを、法律という少し遠く感じる言葉ではなく、日常の行動として見せてくれる点に価値があります。
親が一方的に注意するよりも、同じページを見ながら「これはどうしてダメなんだろう」と会話するほうが、子どもには残りやすいはずです。防犯、法教育、情報モラルをまとめて入り口から学びたい家庭に合う一冊です。