『難病ALSのママが綴るいのちのレシピ』レビュー|母の味を未来に残す闘病エッセイ
料理って、栄養や手順だけでは終わらないんですよね。
あの味を食べると家を思い出す、あの匂いで誰かの顔が浮かぶ。そういう “おいしい記憶” は、写真より長く残ることがあります。
『難病ALSのママが綴るいのちのレシピ もしもキッチンに立てたなら』は、その記憶を未来へ渡そうとする本です。ALSとともに生きる著者・はらだまさこさんが、子どもたちに母の味を残したいという思いから綴った、エッセイとレシピの本。徳間書店の紹介文、Amazon商品ページ、ABEMAの報道を見ても、単なる闘病記やレシピ集に収まらない強さが伝わってきました。
『難病ALSのママが綴るいのちのレシピ』レビュー|心に残るのは「母の味を残したい」という願い
本書のいちばん強い核は、病気そのものではなく、「何を残せるか」を考え続ける姿勢にあります。
徳間書店の紹介によると、著者は4才と12才の子を持つ母であり、福岡でオーガニック喫茶店を営むシェフです。2023年にALSと診断され、徐々に体の自由が奪われていく中でも、「子どもたちに母の味を残したい」と願ってこの本を書いた。
ここが本当に強いです。
できなくなっていくことを数えるのではなく、まだ渡せるものに目を向けている。しかもその渡し方が、言葉だけでなく “味” であることに、この本ならではの切実さがあります。
『難病ALSのママが綴るいのちのレシピ』の魅力|17品のレシピがそのまま人生の記録になっている
Amazonと版元情報によると、本書には17品のレシピが収録されています。
- 喫茶店の大人気メニュー、鉄板ナポリタン
- タイで出会った青唐辛子のグリーンカレー
- 子どもたちにいつか作ってあげたいお弁当
- 心とからだにやさしい自然派ごはん
ここで大事なのは、レシピが付録ではないことです。
この本では、料理そのものが家族の記憶であり、著者の生き方そのものになっています。だからレシピを読むことは、味を知ることと同時に、その人がどんな時間を家族と過ごしてきたのかを知ることにもつながる。料理好きの人に響くのはもちろん、普段あまり料理をしない人にも届く理由はそこだと思います。
『難病ALSのママが綴るいのちのレシピ』が闘病記だけで終わらない理由
ABEMAの報道では、著者が100を超える手持ちのレシピから17品を厳選したこと、いまはキッチンに立てなくても仲間の力を借りながら最終チェックに関わったことが紹介されています。
この事実だけでも、本書が “失われていくもの” の記録に閉じていないとわかります。
病気と向き合いながら、それでも味を残す。店の仲間や家族と一緒に本を作る。自分一人ではできないことを、誰かの力を借りて形にしていく。そこには、闘病のつらさだけでなく、人に支えられて生きることの明るさもあります。
だからこの本は、読者をただ沈ませる本ではなく、「できない中のできること」を考えさせる本として響くんだと思います。
『難病ALSのママが綴るいのちのレシピ』が広く届いている理由
Amazon商品ページでは、「Mr.サンデー」放送後に売れ筋ランキング総合1位を獲得したと紹介されていました。さらに現在のAmazon売れ筋ランキングでも、本全体で上位に入り、「カフェの本」「お弁当の本」など複数カテゴリで1位表示が確認できます。
この広がりは、単にテーマが重いから注目されたわけではないはずです。
病気、家族、料理という切り口は、それぞれ単独でも人を動かしますが、本書ではそれが全部つながっています。しかも説教臭さがなく、「おいしい記憶を残したい」というすごく具体的な願いに落ちている。だから、闘病記を普段読まない人にも届きやすいのだと思います。
『難病ALSのママが綴るいのちのレシピ』が向いている人
- 闘病エッセイでも希望が残る本を読みたい人
- 家族に受け渡す味や記憶に惹かれる人
- レシピ本以上の物語を求める人
- 食べることと生きることのつながりを考えたい人
『難病ALSのママが綴るいのちのレシピ』まとめ
『難病ALSのママが綴るいのちのレシピ もしもキッチンに立てたなら』は、病の記録であると同時に、家族へ渡したい味の本です。
読後に残りそうなのは、悲しさだけではありません。鉄板ナポリタンやグリーンカレーのような具体的な料理の記憶が、人を生かし、つなぎ止めるのだという感覚です。病気を前にしても、「何を残せるか」を考え続ける強さに触れたい人には、かなり印象に残る一冊だと思います。
