筋トレの運動生理学本おすすめ!筋肥大メカニズムを科学的に完全解明

筋トレの運動生理学本おすすめ!筋肥大メカニズムを科学的に完全解明

「筋トレしているのに、なかなか筋肉がつかない」——こんな悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか。

興味深いことに、筋トレの効果が出ない原因の多くは、メカニズムを理解していないことにあります。ネット上には様々な情報が溢れていますが、科学的根拠に基づいていないものも少なくありません。

私は京都大学大学院で認知科学を研究していますが、運動生理学は認知機能とも密接に関連する分野として注目しています。実際、名古屋大学の研究チームは、筋力トレーニングが脳の認知機能を向上させることを報告しています。

本記事では、筋肥大のメカニズムを分子レベルから解説し、科学的に効率の良いトレーニング法を紹介します。

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筋肥大の分子メカニズム——mTOR経路とは何か

筋肉が大きくなる(筋肥大する)プロセスには、複雑な分子メカニズムが関わっています。その中心にあるのがmTOR(エムトール)経路です。

mTORは筋タンパク質合成の「マスタースイッチ」

mTOR(Mammalian Target of Rapamycin)は、細胞内でタンパク質合成を制御する酵素です。データによると、mTORが活性化されると筋タンパク質合成が促進され、逆に阻害されると筋肥大効果が約60%も減少することがわかっています。

mTORを活性化する主な要因は3つあります。

活性化要因具体的内容実践への応用
機械的刺激トレーニングによる筋への負荷適切な強度でのレジスタンストレーニング
アミノ酸特にロイシンが重要トレーニング前後のタンパク質摂取
ホルモンインスリン様成長因子など適切な栄養と睡眠

サテライト細胞——筋肉の「幹細胞」

もう一つ重要なのがサテライト細胞です。これは筋線維の周囲に存在する幹細胞で、トレーニングによる機械的刺激を受けると活性化し、損傷した筋線維の修復と成長に寄与します。

興味深いことに、サテライト細胞の数と機能は40歳以降に低下し始めます。これが後述する「サルコペニア」(加齢性筋肉減少症)の一因となっています。

超回復理論の真実——フィットネス-疲労モデル

「超回復」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。トレーニング後に休息を取ると、筋肉が以前より強くなって回復するという理論です。

単純な超回復モデルの限界

従来の超回復理論は、「トレーニング → 筋線維損傷 → 回復 → 以前より強く再構築」という単純なモデルでした。しかし、この考え方には限界があります。

実際の筋肥大プロセスは、フィットネス-疲労理論(Fitness-Fatigue Theory)で説明する方がより正確です。

フィットネス-疲労理論とは

この理論では、トレーニングは2つの効果をもたらすと考えます。

フィットネス効果は長期的な適応(筋力・筋量の増加)で、数週間〜数ヶ月かけて蓄積されます。一方、疲労効果は短期的な機能低下で、48〜72時間で回復します。

パフォーマンスは「フィットネス効果 − 疲労効果」で決まります。つまり、適切な休息を取りながらトレーニングを継続することで、疲労を管理しながらフィットネス効果を積み上げていくことが重要なのです。

以前「習慣形成の認知メカニズム!脳科学が明かす行動の自動化プロセス」で解説しましたが、筋トレも習慣化することで継続しやすくなります。科学的に正しい方法を身につけ、長期的に取り組むことが成果につながります。

トレーニング変数の科学的最適化

効率的に筋肥大を起こすには、トレーニング変数を適切に設定することが重要です。主な変数はボリューム強度頻度の3つです。

ボリューム(総負荷量)

ボリュームは「セット数 × レップ数 × 重量」で計算される総負荷量です。

Brad Schoenfeldらの2017年のメタ分析によると、週10セット以上のトレーニングで筋肥大効果が顕著になることがわかっています。ただし、週20〜25セット/部位を超えると効果が頭打ちになるため、やりすぎは逆効果です。

強度(%1RM)

強度は1回の最大挙上重量(1RM)に対する割合で表されます。筋肥大に最適な強度は65〜85%1RM(8〜12レップ)とされてきました。

しかし、データによると、低負荷でも疲労困憊まで行えば筋肥大効果があることがわかっています。Morton et al. (2016)の研究では、30%1RMでも80%1RMと同等の筋肥大が起こることが示されました。

頻度

同じ部位のトレーニング頻度は週2〜3回が推奨されます。週1回と週2回を比較した研究では、週2回以上で有意に筋肥大効果が向上しています。

変数推奨値根拠
ボリューム週10〜20セット/部位Schoenfeld et al. (2017)
強度65〜85%1RM(8〜12回)従来の定説 + 低負荷でも有効
頻度週2〜3回/部位Schoenfeld et al. (2016)

栄養と筋肥大——タンパク質とロイシン閾値

トレーニングだけでは筋肉は大きくなりません。適切な栄養摂取、特にタンパク質が不可欠です。

タンパク質の推奨摂取量

Morton et al. (2018)のメタ分析によると、筋肥大効果を最大化するためのタンパク質摂取量は体重1kgあたり1.6〜2.2g/日です。

例えば体重70kgの人であれば、1日112〜154gのタンパク質が必要になります。これはかなりの量で、意識的に摂取しないと達成が難しい数値です。

ロイシン閾値仮説

タンパク質の中でも特に重要なのがロイシンというアミノ酸です。ロイシン閾値仮説によると、1食あたり2.5〜3gのロイシンを摂取することでmTORの活性化が最大化されます。

実践的には、1食20〜40gのタンパク質を摂取すれば、この閾値に達することができます。

タンパク質摂取のタイミング

トレーニング前後2時間以内のタンパク質摂取が推奨されます。ただし、「ゴールデンタイム」と呼ばれる30分以内の摂取にこだわる必要はなく、総摂取量の方が重要です。

筋肥大を最大化するためには、オメガ3脂肪酸の摂取も重要です。研究によると、EPA・DHAは筋タンパク質合成を促進し、トレーニング後の炎症を抑制することで回復を早める効果があります。

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亜鉛も筋肥大において重要なミネラルです。テストステロンの生成に関与し、タンパク質合成をサポートすることで、トレーニング効果の最大化に貢献します。

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睡眠とホルモン——成長ホルモンとテストステロン

筋肥大において、睡眠は非常に重要な役割を果たします。

成長ホルモンの分泌

成長ホルモンは筋タンパク質合成を促進し、脂肪分解も促進します。その分泌ピークは入眠後90分の徐波睡眠(深い睡眠)中に訪れます。

睡眠の質が低いと、成長ホルモンの分泌が低下し、筋肥大効果も減少します。

テストステロンと睡眠

テストステロンも筋肥大に重要なホルモンです。Leproult & Van Cauter (2011)の研究によると、1週間の睡眠制限(5時間/日)で若年男性のテストステロンが10〜15%低下することがわかっています。

仮説ですが、睡眠を削ってトレーニング時間を確保するよりも、しっかり眠った上でトレーニングする方が効率的かもしれません。

加齢と筋肉——サルコペニア予防の科学

サルコペニア(加齢性筋肉減少症)は、高齢者のQOL低下の大きな原因となっています。

サルコペニアの進行

データによると、筋量は**30歳以降、年間0.5〜1%**のペースで減少し始めます。50歳以降はこのペースが加速し、年間1〜2%の減少となります。

70歳時点では、30代と比較して約25〜30%の筋量が失われている計算になります。これは日常生活動作に大きな影響を与えます。

予防の最も効果的な方法

Liu & Latham (2009)のCochraneレビューによると、レジスタンストレーニングがサルコペニア予防・改善に最も効果的な介入です。

高齢者でも筋力トレーニングにより有意な筋力向上が可能です。「年齢だから仕方ない」と諦める必要はありません。

また、高齢者は「同化抵抗性」があり、同じ量のタンパク質を摂取しても若年者より筋タンパク質合成が起こりにくくなります。そのため、高齢者は体重1kgあたり1.2〜1.5gとより多くのタンパク質摂取が推奨されます。

おすすめ書籍——運動生理学を深く学ぶ

ここからは、筋トレの科学を深く学ぶための書籍を紹介します。

1. 石井直方の筋肉まるわかり大事典

東京大学大学院教授(筋生理学)の石井直方氏による、筋肉に関する知識を網羅した事典です。基礎的な解剖学から、筋肥大のメカニズム、実践的なトレーニング法まで幅広くカバーしています。

「筋肉博士」と呼ばれる石井氏の知見が凝縮された一冊で、筋トレを科学的に理解したい人にとっての必読書です。

2. 究極のトレーニング

同じく石井直方氏による、より実践的なトレーニング指南書です。筋肥大のメカニズムを踏まえた上で、どのようなトレーニングが効果的かを科学的に解説しています。

理論と実践のバランスが取れており、ある程度筋トレ経験がある人がさらなる成長を目指すのに最適です。

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3. スポーツ科学の教科書

谷本道哉氏編著、石井直方氏監修の入門書です。運動生理学、バイオメカニクス、トレーニング科学など、スポーツ科学の基礎を一問一答形式でわかりやすく解説しています。

岩波ジュニア新書のため読みやすく、科学的な知識がない人でも理解しやすい構成になっています。

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4. 体脂肪が落ちるトレーニング

石井直方氏と谷本道哉氏の共著で、「スロートレーニング」の科学的根拠と実践法を解説しています。1日10分の効率的なトレーニングで筋肉を増やし体脂肪を減らす方法が紹介されています。

忙しいビジネスパーソンや、ジムに通う時間がない人に特におすすめです。

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5. 使える筋肉・使えない筋肉 理論編

「筋トレでつけた筋肉は使えない」という俗説を科学的に検証した一冊です。谷本道哉氏が、この誤解の原因と、実際に「使える」筋肉を作るための理論を解説しています。

スポーツパフォーマンス向上を目指すアスリートにも、一般のトレーニーにも有益な内容です。

まとめ——科学的アプローチで効率的な筋肥大を

2025年も残りわずかとなりました。新年に向けて「筋トレを始めよう」「もっと効率的に鍛えよう」と考えている方も多いのではないでしょうか。

本記事で解説したポイントを整理すると、以下の通りです。

  • mTOR経路を活性化することが筋肥大の鍵
  • 超回復よりもフィットネス-疲労理論で長期的に考える
  • トレーニング変数(ボリューム・強度・頻度)を科学的に最適化
  • タンパク質は体重1kgあたり1.6〜2.2g/日ロイシン閾値を意識
  • 睡眠を削らない——成長ホルモンとテストステロンのために
  • サルコペニア予防のため、年齢を問わず筋トレは有効

筋トレは「根性」や「感覚」だけでなく、科学的な理解に基づいて行うことで、より効率的に成果を得ることができます。

私自身、認知科学の研究者として、運動が脳機能に与える影響にも注目しています。筋トレは身体だけでなく、認知機能の維持・向上にも寄与することがわかっています。

ぜひ今回紹介した書籍を参考に、科学的なアプローチで筋トレに取り組んでみてください。

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西村 陸

京都大学大学院で認知科学を研究する博士課程学生。理系でありながら文学への造詣も深く、科学と文学の交差点で新たな知の可能性を探求。

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