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レビュー

概要

『レスキューナースが教えるプチプラ防災』は、防災を「買いそろえるイベント」ではなく、「いまの暮らしの中で回る仕組み」に変える本です。著者は国際災害レスキューナースとして、国内外の被災地派遣を重ねてきた人。現場の経験から、本当に役に立った備えと、代用テク、そして72時間をしのぐための考え方が整理されています。

タイトルにある「プチプラ」は、安く済ませるための言い訳ではありません。むしろ、続けるための現実解です。高いグッズを買って満足しても、置き場所がなくて散らかる。期限管理ができずに放置する。そういう「よくある失敗」を、本書は生活の設計として修正していきます。

構成は、第1章が備え、第2章が災害発生後72時間の生き延び方、第3章が被災後の生活テク、第4章が心の整え方。さらに備蓄量の目安までまとまっています。読むほど「不安を減らす方法」が、具体の行動に落ちていくタイプの1冊です。

読みどころ

1) 第1章で「命を守る備え」を、優先順位で整理する

備蓄は、全部を完璧にすると破綻します。本書はそこをわかっていて、命を守る備えから順番に並べます。水、食、明かり、衛生、体温。ここを軸にすると、迷いが減ります。

防災グッズ選びは、情報が多すぎます。ここがまず問題です。本書のように「まずここ」と決められると、買う物のブレが減ります。結果として、予算も収納も守れます。

2) 第2章の「72時間」パートが、リアルな目線になる

災害直後の72時間は、特に厳しい。ここで必要になるのは、派手な便利グッズよりも、体を守る基本です。本書は「生き延びる」目線で、何が足りなくなるかを想定します。

この章を読むと、防災が“災害映画”から“生活の延長”になります。停電、断水、情報の混乱。そこで慌てないために、普段から何を整えておくかが見えてきます。

3) 第3章は「代用テク」と「知恵」が詰まっている

被災後に困るのは、日用品が足りないことだけではありません。手元にある物でどう代用するか。どう工夫して衛生を保つか。そういう知恵が効きます。本書は、この「代用テク」を強調します。

“プチプラ”の本質は、安さではなく代替可能性だと思いました。高価な専用品がなくても、似た役割を果たす物を持っていれば、詰みを回避できます。ここが、買い物よりも強い防災になります。

たとえば停電時は明かりだけでなく、スマホの充電が詰まりやすいです。断水では手洗いが難しくなります。トイレの問題も早い段階で現れます。そうした場面を想像し、代用できる道具を揃える。ここが本書の現実的な視点です。

4) 第4章が「心」を扱うのが、意外と重要

防災本は物に寄りがちです。でも実際は、災害時に判断力が落ちます。恐怖や疲労で、家族の衝突も増えやすい。本書は「動じない心をつくる」を1章使って扱います。

この章があると、防災が「荷物の準備」だけではなく、「家族でどう動くか」の話に広がります。避難の判断、声かけ、情報の扱い。ここまで考えて初めて、備えが“使える”になります。

5) 備蓄量の目安があると、準備が“終わる”

防災の準備が続かない理由の1つは、ゴールが見えないことです。何をどれだけ持てばいいかが曖昧だと、買い足しが止まりません。本書は備蓄量の目安を示すので、準備に区切りがつきます。

もちろん家族構成や持病で必要量は変わります。それでも「まずこのライン」を持てるだけで、防災が“無限の不安”から“管理できるタスク”に変わります。

類書との比較

防災本には、グッズのカタログ型が多いです。見ているだけで安心感が出ますが、買うだけで終わりやすい弱点があります。さらに、家の事情に合わない物を増やしてしまうこともあります。

本書は、備えを「代用テク」と「正しい知識」で支えます。買う物の量より、回し方を重視する。だから、ミニマルに暮らしたい人とも相性がいいです。公的な防災資料が体系的なのに対して、本書は現場の目線で「ここが詰まる」を先回りしてくれます。家庭で実装しやすいのは、こういう本だと思います。

こんな人におすすめ

  • 防災が気になるのに、何から始めればいいかわからない人
  • グッズを買ったのに続かず、生活に馴染ませたい人
  • 72時間の乗り切り方を、具体の手順で知りたい人

感想

防災は、頑張るほど続かないことがあります。本棚の1冊として置くだけでは意味がありません。暮らしへ差し込めたとき、初めて強くなります。本書は、その“差し込み方”がうまいです。

読み終わったあとに残るのは、「高い物を買い足す」より、「普段の物を防災としても使える形に整える」という発想でした。しかも、災害直後の72時間、被災後の生活、心の整え方まで一続きです。防災を“自分ごと”として引き寄せたい人には、かなり頼れる1冊だと思います。

一気に完璧を目指すより、週末に1カテゴリだけ整える。そういう進め方が似合う本でした。読むことで不安が増えるのではなく、手が動く方向に変わります。

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    佐々木 健太

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