レビュー

概要

『貯金はこれでつくれます 本当にお金が増える46のコツ』は、貯金を「テクニック」より前に「メンタル(心の整え方)」として捉えるところから始まる節約・資産形成の本です。内容紹介では、借金450万円・貯金40万円の状態から、4年で資産1000万円に到達した経緯が示されますが、主張の核は「まず心を整えて“貯金メンタル”をつくる。その上で“使わない仕組み”を作る」という順番にあります。

節約本の多くは、固定費削減や家計簿、買わないコツなどの手段にすぐ入ります。本書はそれを否定しない一方で、「上辺だけをまねても続かない」理由を、感情や思い込みの側から説明します。衝動買いを単なる意思の弱さにせず、ストレスや正当化の癖(浪費メンタル)として整理し、土台から変える構成です。

読みどころ

1) 「貯金はメンタルが9割」:自分軸を作らないと節約は続かない

節約が続かない人は、行動のルールがないというより、判断基準が揺れていることが多いです。「こうあるべき」「みんなが持っているから」「頑張ったご褒美」などの思考が、支出を増やしていく。本書は、まず自分にとって大事なものを言語化し、そこから支出を見直します。

目次の中にある「つけ麺置き換え法」のように、身近な行動へ落とす工夫も出てきます。抽象的な“自分軸”を日々の買い物へ接続する小さな仕掛けがあり、そこが良いところです。

2) 固定費→変動費の順番がわかりやすい(しかも「家計簿めんどくさい」前提)

節約初心者は固定費削減から、というのは定番ですが、本書はその定番を“やれる形”に寄せています。目次に「家計簿めんどくさいの壁を越えるコツ」があるように、理想的な管理ではなく、継続できる管理へ落とし込む視点がある。

固定費は一度下げると効果が続くので、生活の負担が小さい。次に変動費で「使わない仕組み」を作る。ここでも意志の力ではなく、ルール化・仕組み化へ寄せていきます。

3) 「貯蓄率」を上げる発想が、貯金を“再現性”のあるものにする

お金の不安を減らすために「貯蓄率」を意識せよ、という流れが出てきます。貯金額は収入で見え方が変わりますが、率にすると比較の軸が揃う。数字の置き方が変わるだけで、「いくら貯めるか」から「どの仕組みで貯め続けるか」へ視点が移ります。

4) 投資・副業編が“現実的な注意点”とセットで出てくる

後半には投資・副業の章があります。目次には「リスク許容度」「生活防衛費」を重視する、と明記されています。投資を煽るのではなく、耐えられる範囲を決めてから動く順番が示されるので、初心者が恐怖で止まったり、勢いに任せて突っ込んだりする両極端を避けやすい。

また「フリマサイトでいらないものをお金に代える」など、いきなり稼ぐ話ではなく、まずは家の中の資産を現金化する発想も含まれます。ハードルが低い分、始めやすいです。

類書との比較

節約・お金の本には、(1)家計の改善(節約・固定費削減)に特化したもの、(2)投資による資産形成を中心に据えるもの、(3)マインドや価値観の整理を軸にするものがあります。本書は(1)の実務と(3)の価値観整理を強く結びつけ、「節約は自分軸がないと続かない」という立て付けで走ります。

投資中心の本に比べると、派手なリターンの話は控えめで、生活防衛費やリスク許容度など、守りの設計が先に来ます。逆に、固定費削減のチェックリスト本よりは、なぜ浪費に戻ってしまうのか、なぜ“ご褒美”が増えるのか、といった心理面の説明が厚い。節約を何度も挫折してきた人ほど相性が良いと思います。

こんな人におすすめ

  • 贅沢しているつもりはないのに、なぜかお金が貯まらない人
  • 節約テクニックを試しても続かず、リバウンドしてしまう人
  • まずは10万円でもいいから、確実に貯まる仕組みを作りたい人
  • 投資を始めたいが、生活防衛費やリスクの取り方から整理したい人

感想

この本を読んで刺さったのは、「節約は我慢」ではなく「心と仕組み」の問題として扱っているところです。節約が続かないとき、問題は情報不足ではなく“判断の軸”が揺れていることが多い。自分軸が曖昧だと、ストレスを理由に支出が膨らみ、後から自己嫌悪になる。この流れを、メンタルの整え方として言語化してくれるのは助かります。

また、固定費→変動費→投資・副業という流れがあり、段階的にできるのも良い。いきなり完璧な家計管理を目指すのではなく、再現性のある順番で積み上げられる。貯金を“根性”でやってきて疲れた人に、現実的な再スタートを切らせてくれる1冊でした。

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    佐々木 健太

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