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レビュー

概要

『小学生でもできる言語化』は、「思っていることはあるのに、うまく言えない」「書こうとしても言葉が出てこない」という悩みに対して、言語化を才能ではなく練習できる技術として教える本です。著者の田丸雅智はショートショート作家として知られていますが、本書では創作論に寄りすぎず、子どもでも試せるやさしい手順へ落としているのが特徴です。

本書が扱うのは、難しい作文テクニックや高度な語彙力ではありません。まず「言葉にするとは何か」を整理し、言葉をブロックのように集めて並べる感覚を身につけ、そのうえで書く、まねる、単語をためるといった練習へつなげていきます。タイトルだけ見ると子ども向けの入門書ですが、実際には大人の学び直しにもかなり向いています。

読みどころ

読みどころは、言語化を抽象論のままにしない点です。本書は第1章で「言葉にするってどういうことか」を説明し、言語化そのものの意味をあいまいにしたまま先へ進みません。うまく話せない人ほど、いきなり上手な表現や正解の言い回しを探して止まりがちです。本書はそこを避け、まず自分の中にあるものをどう切り分け、どう拾い上げるかから始めます。

特に良いのは、「言葉をブロックにたとえる」発想です。言語化をセンスではなく部品の組み合わせとして捉え直せるので、苦手意識がかなり和らぎます。第2章では、とりあえず書いてみる、ほかの人をまねる、自分に合うやり方を探す、日本語の単語帳をつくるといった練習が並びます。どれも地味ですが、実際に力がつくのはこういう地味な反復です。

さらに、本書は「相手がいることも忘れずに」という視点を入れているのが実践的です。自分の頭の整理だけで終わらず、相手にどう届くかまで意識するので、会話、作文、発表、日記など幅広い場面に応用しやすいです。第3章で言語化と未来の選択肢を結びつけているのも良くて、単なる国語の練習ではなく、自分の考えを持ち、それを伝える力として位置づけられています。

家庭で使うなら、読書感想文や日記の前に取り入れるのも合っています。いきなり長文を書かせるより、見たものを言葉にする、感じたことを短く書く、似た表現をまねるといった小さな練習を重ねるほうが、子どもは詰まりにくいです。本書はその「一段目の足場」を作る本としてかなり優秀です。

類書との比較

子ども向けの文章本や読書感想文の本は多いですが、それらは「どう書けばうまく見えるか」に寄ることがあります。一方で本書は、書き方の前に「そもそも言葉にするとは何か」を分解して教えるのが違いです。作文の型をすぐ覚えたい人には遠回りに見えるかもしれませんが、考えを言葉へ変える基礎を固めたい人にはむしろ近道です。

また、大人向けの言語化本は仕事術やプレゼン術に寄りやすく、子どもや初学者には少し圧の強いものがあります。本書は入口がやさしいぶん、苦手意識のある人でも手をつけやすいです。内容を薄くしているのではなく、学ぶ順番を丁寧にしている本だと考えると、この本の価値は見えやすいと思います。

こんな人におすすめ

  • 自分の気持ちや考えを言葉にするのが苦手な子ども。
  • 子どもの表現力を伸ばしたい保護者や教育関係者。
  • 話す力、書く力の土台をやさしく学び直したい大人。
  • 文章術より前に、言語化の基本動作を身につけたい人。

感想

この本を読んで感じるのは、言語化ができないのは能力不足というより、手順を知らないことが大きいという点です。言いたいことが全くないのではなく、頭の中の材料をどう拾って並べればいいか分からない。その詰まりを小さくほどいていく作りになっているので、読者を置いていきません。

特にいいのは、「小学生でもできる」という言葉を内容の薄さに使っていないところです。むしろ、誰でも試せる形までかみ砕いてあるからこそ、大人にも効きます。会議でうまく話せない人、感想を書くと一言で終わってしまう人、子どもの「なんかイヤ」を言葉にする手伝いをしたい人など、想像以上に対象は広いです。

言語化の本を読んでも、結局何をすればいいのか分からず終わることがあります。本書はそこを避けて、書く、まねる、集める、繰り返すという動きに戻してくれます。表現力を伸ばしたい人が最初に読む本としても、基礎をやり直したい人の一冊としても使いやすい本でした。

学校の勉強だけでなく、家庭での会話を少し深めたい人にも向いています。子どもがうまく説明できずに怒ったり黙ったりするとき、叱るより先に必要なのは、言葉へ変える補助線です。そうした補助線の引き方を考える本としても価値がありました。

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