レビュー
概要
相続は、いつか来ると分かっているのに、後回しにされがちです。
- 何から始めればいいか分からない
- 争いになったら怖い
- 税金がどれくらいかかるのか不安
- 制度が難しくて、調べるほど混乱する
この本は、その混乱を「ぶっちゃけ」テンポでほどきながら、相続の全体像を作っていく一冊です。相続税・贈与税・不動産・手続き・専門家の使い方まで、やるべきことを“論点別”に分解してくれるので、思考停止しにくくなります。
読みどころ
- 「生前贈与に頼りきれない時代の乗りこなし方」を冒頭で提示。2024年に生前贈与の持ち戻し期間が3年から7年になったことを受け、その範囲内で有効な対策を一覧化。孫への贈与を「税制の盲点に着目する逸機」として紹介し、持ち戻し制度や相続時精算課税の設計を具体的に提示している。
- 「相続登記の義務化」「土地放棄制度」「タワマンにかかる規制」など、相続の実務に直結する最新法改正の1ページまとめが好評。その場で「今の制度をどう使うか」まで落とし込みやすいように、手続きのフローと必要書類・税額の試算例をセットで構成している。
- 後半ではリスクとトレードオフを明確にするため、「贈与税を払う戦略」のシナリオを3つ提示し、税を払うことで相続時の争いを避けた事例、逆に払わずに争いになった事例を対比。数字だけではなく、感情や家族関係の調整も含めて相続の理解を深める。
本の具体的な内容
相続の本は「制度の説明」から入って眠くなりがちですが、本書は不安の大きい順に分解していきます。目次は次の流れです。
- 序章:相続の基本のキ
- 第1章:相続トラブル
- 第2章:遺言書
- 第3章:相続税
- 第4章:贈与税
- 第5章:不動産
- 第6章:税務調査
- 第7章:相続手続・専門家
この並びが良くて、「揉めないために何が必要か(トラブル・遺言)」→「お金の話(相続税・贈与税)」→「揉めやすい資産(不動産)」→「最後に手続きと専門家」という順で、現実の詰まりポイントに沿っています。
特に2024年以降の制度変更として、生前贈与の持ち戻し期間が延長される点に触れたうえで、相続時精算課税制度の活用、孫への贈与の扱い、贈与税を戦略的に払う考え方など、「じゃあ今後どうする?」に落としています。相続は制度の暗記より、家の事情に合わせて戦略を選ぶ作業なので、この“選択肢の出し方”が助かりました。
類書との比較
『相続税の基本』などの教科書が制度の仕組みを並べるのに対し、本書は YouTuber 税理士の視点で「今の制度を使う/逡巡する」判断を先送りしない姿勢。たとえば他書が1年に一度では済まない更新のタイミングを淡々と列挙するのに対して、橘氏は「今日の意思決定の前にチェックすべき5項目」を再現できる構成にしている。
こんな人におすすめ
・親の相続や自分の将来の資産移転をどう考えればいいか不安な人。
・税理士との相談を控えて一度自分で制度を整理したい人。
・相続に関する話題を家族で共有したい人。
感想
相続って、「知らない」ことが怖いというより、「知らないまま、間違ったまま動く」ことが怖いと思うんです。ネットの情報は断片的だし、制度も変わる。
この本は、相続で起きやすい論点を一通り並べたうえで、「今の制度はこう変わった」「じゃあ、何を選べばいいか」をテンポよく示してくれます。特に生前贈与まわりは、うっすら知っている人ほど危ない(昔の知識のまま動いてしまう)ので、最新の前提に更新できるのが良かったです。
読み終わったあと、「相続は難しいから放置」から、「相続は難しいけど、論点は分けられる」に変わります。家族で話すための土台を作る本として、かなり実用的でした。
この本を読んだあとにやるとラクになること
相続の話は、情報収集だけで疲れて終わりがちです。読後におすすめしたいのは、次の3ステップです。
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家の資産を“ざっくり棚卸し”する
現金・預金、不動産、有価証券など、種類だけでも書き出す。ここが曖昧だと、全部が不安になります。 -
揉めやすいポイントを先に言語化する
「誰が住む?」「誰が管理する?」「現金が少なくて不動産が多い?」など、トラブルの火種になりやすいところを先に見つけます。本書の“トラブル→遺言”の流れが、そのまま使えます。 -
専門家に聞く質問を用意する
いきなり相談に行くと、話が散って時間もお金もかかりやすいです。目次の章立て(相続税/贈与税/不動産/手続き)に沿って、「自分の家はどこが論点か」を整理してから相談すると、結果が早い。
相続は、完璧に備えるより「先に動いて、更新し続ける」ほうが現実的です。この本は、その最初の一歩を作るのにちょうど良いテンポと粒度でした。
特に制度改正が続く今は、“思い込みで動かないための更新”として読んでおく価値があると思います。
「うちは財産が少ないから関係ない」と思っている家庭ほど、手続きと話し合いで詰まりやすいので、早めに全体像を掴んでおくのがおすすめです。