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レビュー

概要

『GIANT KILLING(1)』は、弱小プロサッカークラブ「ETU(イースト・トウキョウ・ユナイテッド)」に、35歳の監督・達海猛が就任するところから始まるサッカー漫画です。現役時代も監督になってからも、達海の好物は「番狂わせの大物喰い=ジャイアント・キリング」。要するに、格上を倒すためのゲームメイクに燃えるタイプの指揮官です。

この1巻の面白さは、サッカー漫画を「個の才能」だけで押し切らない点にあります。スター選手が覚醒して勝つ、という単線ではなく、監督の思想、チームの空気、サポーターの期待と不満、そして“勝つための仕組み”がどう作られるのかを、最初から描きにいきます。「本当にいい監督はゲームを面白くしてくれる」というコピーが、そのまま作品の設計思想になっている印象です。

目次は「#1(1)〜#7(2)」のように細かく刻まれていて、導入巻としてテンポが良い。達海が何者で、なぜETUに必要とされ、周囲がどう反応するのかが、読む側に一気に入ってきます。

読みどころ

1) 監督という“視点”が主役になる

サッカー漫画は、どうしても選手の成長に焦点が当たりがちです。もちろんそれも熱い。でも本作は、まず監督を主役に据えます。監督はピッチに立てない。そのぶん、言葉と設計で勝ちにいく必要がある。達海の存在は、サッカーを「身体能力の勝負」から「意思決定の勝負」へ引き上げてくれます。

2) 弱小クラブの“現実”を前提にしている

弱いチームは、技術が足りないだけではありません。自信がない、空気が重い、勝ち筋が共有されていない。そういう“見えにくい負債”を抱えています。1巻は、その負債がどこに溜まり、監督がどこから手を付けるべきかを、読者に考えさせます。サッカーの戦術以前に、チームという共同体の設計がテーマになっているのが良いところです。

3) 「ジャイアントキリング」が“奇跡”ではなく“戦略”になる

番狂わせは、物語の都合だと思われがちです。でも本作がやろうとしているのは、番狂わせを“偶然”の話にしないこと。格上を倒すには、相手が嫌がる形を作り、勝負所を設計し、勝ち筋を共有しないといけない。1巻の段階から、その方向へ読者の視線を誘導してきます。

4) 監督就任が「始まり」ではなく「対立の火種」でもある

達海は“イングランド帰りの監督”として帰ってきますが、外から来た人間がいきなり組織を変えようとすると、必ず摩擦が起きます。選手、フロント、サポーター、それぞれが違う正義を持っているからです。1巻は、達海が“敵チーム”だけでなく、“味方の中の抵抗”とも向き合わされる構造を作ります。ここが作品をスポ根の単純な気持ちよさにしないポイントだと思いました。

類書との比較

部活サッカーの青春物語は、「努力と仲間」で勝つ熱さが魅力です。一方で『GIANT KILLING』は、プロのクラブが舞台で、勝敗の重さや現実のしんどさが先に来ます。努力は前提で、それだけでは埋まらない差がある。その差をどう詰めるかが面白さになります。

また、個人技の突出で気持ちよく勝つタイプの作品と比べると、本作は“勝ち方”に焦点があります。勝てる構造を作ることで、選手の魅力も立ち上がる。この順序が、導入巻から徹底されています。

こんな人におすすめ

  • サッカーを「戦術」や「監督の采配」の視点で楽しみたい人
  • 弱者が勝つ物語が好きだが、奇跡ではなく必然として描いてほしい人
  • チームづくり、組織の立て直し、リーダーシップに興味がある人
  • スター個人の覚醒より、「勝つ仕組み」の話が読みたい人

感想

この1巻で一番ワクワクするのは、達海が「勝てない現実」を言い換えてくれる瞬間です。弱いチームは、弱いから弱いまま、という循環に入りやすい。そこで必要なのは、根性論ではなく、勝ちに近づくための見取り図です。達海はその見取り図を、言葉と態度で作ろうとする。だから“監督の漫画”として面白い。

もう1つ良いのは、サッカーを知っていても知らなくても入れるところです。細かい戦術用語で置いていくのではなく、「格上に勝つには、何を捨てて何を守るか」という普遍的な問いに落としてくる。スポーツ漫画でありながら、意思決定の物語としても読める導入巻でした。

個人的には、「弱小クラブの再建」を、短期の奇跡ではなく長期の設計として始めている点が好きです。勝つための戦術も重要ですが、勝ち筋を信じられる空気、役割を引き受けられる関係性、負けたときに崩れない土台がないと、番狂わせは1回で終わってしまう。1巻は、その土台を作る“最初の言葉”が何かを見せてくれます。だから続きが読みたくなる。監督がチームに何を持ち込み、何を壊し、何を残すのか。そこを追う漫画だと思います。

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