レビュー
概要
『働きマン(1)』は、週刊『JIDAI』の女性編集者・松方弘子(29歳)が、仕事に没頭すると“働きマン”へ変身する…という比喩を軸に、「働くとは何か」を問い直す漫画です。仕事に燃える主人公を描きつつ、周囲のいろんなタイプの働き方も同時に映し出すので、読んでいて「自分はどのタイプに近いんだろう」と勝手に照らされます。
この作品の良さは、頑張ることを美談にしないところです。寝食を忘れて働くのはかっこいい。でも同時に、生活は荒れるし、恋愛は面倒になるし、心もすり減る。仕事の充実と、仕事の呪いが、同じページに並びます。
読みどころ
1) 仕事の“熱”が、ちゃんと羨ましい
仕事へ本気で向き合える人って、実は貴重です。松方の集中は、嫉妬したくなるくらい気持ちいい。その熱があるからこそ、うまくいかないときの痛みも大きい。1巻はその両方を見せます。
2) 「働く」の定義が、登場人物ごとに違う
仕事は人生の中心、という人もいれば、生活のための手段、という人もいる。夢を追う人もいれば、安定を守る人もいる。松方の周りの人たちの視線を通して、“働く”の意味が1つじゃないことが浮かびます。
3) 編集者という仕事が、言葉のリアルで刺さる
編集の現場は、締切、取材、原稿、会議、修正…と、地味な積み重ねです。でも、その積み重ねの中で「言葉が人に届く瞬間」がある。松方がそこに取り憑かれている感じが、すごく伝わってきます。
本の具体的な内容
1巻では、松方弘子が週刊誌の編集者として、仕事にのめり込む姿が中心に描かれます。彼女は「仕事人間」というラベルで片づけられがちだけれど、実際は仕事の中にしか見つからない充実があり、そこに救われてもいる。
一方で、仕事に没頭するほど、他のものが後回しになる。体調、生活、恋愛、人間関係。全部を完璧にできない現実の中で、「今は仕事を取る」を繰り返す。その選択が積み重なって、松方という人物の輪郭になります。
また、本書の説明文にもある通り、松方だけでなく、松方の周りで働く“様々なタイプの人達”の視線が入ります。ここがこの作品の面白さで、主人公を好きになれる人も、なれない人も、「でも分かる」が残る。働き方は正解が1つじゃないからこそ、松方の極端さが鏡になります。
仕事描写のリアル(編集者の“報われ方”の少なさ)
編集の仕事って、完成物の裏側に隠れがちで、誰かが褒められても自分は名前が出ない、みたいなことが普通に起きます。締切に追われて、頭を下げて、直して、また直して。そういう報われ方の少なさがあるから、ハマると「全部仕事で取り返したい」状態になる。本作は、その中毒性をきれいに言語化してくれます。
そして、仕事に没頭すると“変身”するという比喩が、笑える一方で痛い。変身している間は強いけれど、変身が解けた瞬間に疲れが全部来る。そういう人、実はかなり多いと思います。
類書との比較
仕事漫画は、成功譚に寄るか、業界ネタに寄るかが多いです。『働きマン』は、業界の面白さを持ちながら、最終的に「働くって、どういうこと?」という問いを残します。しかも説教ではなく、松方の矛盾をそのまま見せることで問いを立てる。だから、読者が自分の生活に持ち帰りやすいです。
また、女性の仕事を描く漫画は、恋愛と対立しがちですが、本作は恋愛を“敵”にしません。むしろ、仕事を選び続ける自分の中の矛盾を描く。ここが大人向けだと思います。
こんな人におすすめ
- 仕事が好きだけど、たまに自分が怖くなる人
- 仕事と生活のバランスで悩んでいる人
- 誰かの働き方を見て、モヤっとしてしまうことがある人
- 頑張る人の話を、きれいごと抜きで読みたい人
感想
松方弘子は、万人に好かれる主人公ではないと思います。忙しくて厳しくて、余裕がない。だから言葉も尖る。それでも仕事をやめられない。 1巻は、その矛盾を逃げずに描きます。仕事に没頭すると、人は優しくいられない瞬間がある。そこまで含めてリアルです。
読んでいて一番刺さるのは、「働く」って、生活の手段であると同時に、自己肯定感の源にもなりうることです。だから、うまくいっているときは高揚するし、うまくいかないときは自分が空っぽになる。その危うさまで含めて、“働く”を描いているのが『働きマン』の強さだと思いました。
この作品は、仕事が好きな人を甘やかさないし、仕事が嫌いな人も切り捨てない。どっちの気持ちも理解しつつ、「じゃあ自分はどう働く?」を置いていきます。読み終えたあと、明日すぐ劇的に変われるわけじゃないのに、仕事の見え方が少しだけ変わる。その“少し”が、しんどい時期に意外と効くんですよね。
読後に残す3つのメモ(行動につなげる)
読み終えた直後の余韻は、数日で薄れていきます。 次の3つだけメモしておくと、この本(この巻)の学びや刺さった感情を、日常に持ち帰りやすくなります。
- 刺さった一文/場面(どこが動いたか)
- それが刺さった理由(いまの自分の状況との接点)
- 明日から変える小さな行動(または、やめること)