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レビュー

概要

『ラーメン赤猫』1巻は、猫たちが切り盛りするラーメン店で、唯一の人間スタッフとして働くことになった珠子を中心に進む日常グルメ漫画です。設定だけ聞くと完全にギャグですが、実際に読むと、笑いだけでなく、働く場所としてのあたたかさや、店を回すプロ意識がかなり丁寧に描かれています。猫がラーメンを作り、接客し、毛づくろいの延長のように店の空気を整えていく。そのおかしさと自然さの両立が、この1巻の一番の魅力です。

珠子はラーメン職人を目指して店に入るわけではありません。ある縁で赤猫を訪れ、気がつけば人間にしかできない雑務や接客の補助を担うことになります。だから読者も珠子と同じ目線で、猫だけの職場のルールや、それぞれの猫の個性に少しずつ慣れていけます。無理に世界観を飲み込ませず、見習いの視点から導入する作りがうまいです。

読みどころ

1巻の読みどころは、まず「猫が働く店」という奇抜な設定を、一発ネタで終わらせないところです。厨房担当、接客担当、店長的な役割といった分担がしっかりあり、しかもそれぞれがちゃんと店の仕事に誇りを持っています。猫だからかわいい、だけではなく、働く仲間として信頼関係ができている。このバランスがとてもいいです。

また、珠子の存在が物語の潤滑油になっています。猫たちの世界は完成していても、人間の客や社会との接点では珠子の役割が大きい。だから彼女は単なるツッコミ役ではなく、この店が外へ開いていくための窓口でもあります。新しい職場に入ったときの戸惑い、少しずつ認められていく嬉しさが自然に描かれるので、働く漫画としても読みやすいです。

ラーメン描写そのものも侮れません。料理漫画のように極端な対決や蘊蓄合戦があるわけではありませんが、一杯のラーメンをどう提供するか、店の空気をどう保つかに、それぞれの猫の性格が出ます。だから味そのものより、「誰がどう出すか」が印象に残ります。食べ物漫画としての方向性が少し独特で、そこが面白いです。

さらに、この作品は優しさの描き方が上手いです。珠子をすぐ戦力扱いせず、でも甘やかしすぎず、少しずつ店の一員にしていく。その距離感が、猫たちの可愛さよりも先に「ここで働きたい」と思わせます。癒やし系に見えて、職場漫画としての気持ちよさがかなりあります。

類書との比較

食べ物漫画でいえば『ラーメン大好き小泉さん』は食べる側の快楽が中心ですが、『ラーメン赤猫』は店を運営する側の空気が主役です。また、動物が働く日常漫画として見ると『しろくまカフェ』の系統にも見えますが、本作はもう少し「職場」に寄っています。ほのぼのしているのに、仕事の段取りや責任分担がある。そのため、かわいいだけで終わらない読み味があります。

こんな人におすすめ

かわいい動物ものが好きな人、日常系だけど少し仕事の匂いがある漫画を読みたい人、疲れているときにやさしい作品を探している人に向いています。料理漫画としての熱量もあるので、グルメ漫画好きにも十分すすめられます。

感想

読んでいて一番よかったのは、「赤猫で働くと毎日ちょっと機嫌がよくなりそうだ」と思えたことでした。猫たちは気まぐれでも無責任ではありません。店に来る客へきちんと向き合っていて、その誠実さがあるから、ファンタジー設定でも地に足がついています。

珠子がこの店に居場所を見つけていく流れも心地よく、1巻の時点でかなり続きを読みたくなります。ラーメンを主役にした漫画でありながら、実際には「働く場所と仲間」に惹かれる作品でした。

この作品がうまいのは、猫のかわいさをサービスとして消費しないことです。もちろん見た目の可愛さは大きな魅力ですが、店の中ではそれぞれが仕事人として立っています。だから読者は「猫がラーメンを作っている」驚きだけでなく、「この店はちゃんと回っている」という納得も得られます。設定の面白さを、職場ドラマの説得力で支えているのが強いです。

1巻の時点で、赤猫という店にまた来たくなる感覚がきちんと生まれます。劇的な事件がなくても、一人ひとりの働き方や客との距離感を見ていたくなるからです。日常系、グルメ、職場ものの境界をうまくまたぎながら、読む人の気分を静かによくしてくれる一冊でした。

ラーメン漫画という入口から入っても、最終的には「働く場所が人を支える」という話として残るのが本作の強みです。珠子が店に必要とされることで、読者も赤猫という場の居心地を一緒に体験できます。派手な勝負や泣かせに頼らず、店の空気のよさそのもので読ませる1巻でした。

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    佐々木 健太

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