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レビュー

概要

『ぼっち・ざ・ろっく』1巻は、「ぼっちちゃん」こと後藤ひとりが、ギターを愛しながらも孤独をこじらせているところから始まる音楽漫画です。 家で一人寂しく弾くだけの毎日だった後藤ひとりは、ひょんなことから伊地知虹夏が率いる「結束バンド」に加わります。 人前での演奏がまだ得意じゃないまま、“バンドマン”の世界へ足を踏み入れていきます。

この1巻の良さは、音楽が題材でありながら、いちばんの主役が「人前が怖い」という感情そのものにあるところです。才能や努力を語る前に、まず体が固まる、喉が詰まる、目線が合わない。その具体的な“しんどさ”が描かれるから、笑えるのに痛いし、痛いのに読み進めてしまうんですよね。

舞台にはライブハウスも出てきて、家でギターを弾いていた後藤が「他人がいる場所」「音を出す場所」へ連れて行かれる流れが作られます。音楽が好きなだけではどうにもならない、でも音楽が好きだからこそ逃げきれない。その板挟みが、青春としてすごくリアルです。

読みどころ

1. ぼっちの解像度が高くて、笑いが刺さる

後藤ひとりの孤独は、ただの内向的キャラではありません。人との距離の取り方が極端で、考えが暴走しやすくて、でもギターだけは好き。こういう“偏り”があるからこそ、ギャグが成立します。読者は笑いながら、「わかる」と言いたくなる瞬間に何度も出会います。

2. 「結束バンド」という居場所の作り方が丁寧

虹夏が率いる結束バンドに加入する、という展開は王道ですが、1巻は「居場所ができる」ことの嬉しさと怖さの両方を描いています。仲間ができるのは救いだけど、同時に他人の目も増える。後藤が逃げたくなる気持ちを抱えたまま、それでも一歩ずつ前に進むのが良いんですよね。

特に、“加入しただけで終わらない”のがポイントです。バンドにいる以上、練習や演奏の場面がやってくるし、当然うまくいかない瞬間もある。後藤の不器用さがギャグになる一方で、虹夏が引っ張ってくれることで、関係性が前へ進んでいく。居場所は、もらうものではなく、少しずつ育つものだと感じました。

3. 音楽漫画だけど、青春のテーマが“音”だけじゃない

ギター、バンド、演奏。もちろん音楽の要素はあるのに、読後に残るのは「人と関わること」の疲れと、少しの希望です。バンドマンになれるのか、という問いは、演奏技術よりも「自分を人前に出せるのか」という挑戦として立ち上がってきます。

こんな人におすすめ

  • 人前が苦手で、共感できる作品を探している人
  • 笑えるのに、青春の痛みも感じる漫画が好きな人
  • バンドものを、軽いノリだけでなく“心の動き”として読みたい人
  • 何かを始めたいけど怖い、という気持ちを抱えている人

感想

『ぼっち・ざ・ろっく! 1巻』を読んでまず思ったのは、「ぼっちの心の中って、こんなにうるさいんだ」ということでした。後藤ひとりの頭の中は、常に最悪の未来予想でいっぱいで、だから動けなくなる。でも、ギターを弾く時間だけは、たぶん世界が少し静かになる。そのコントラストが、この作品の読み味を決めている気がします。

そして、結束バンドに加入する展開が、いきなりキラキラした成功体験にならないのが好きです。人前での演奏に不慣れな後藤が、立派なバンドマンになれるのか。問いの中心がそこにあるからこそ、読者も「自分だったら無理かも」と思いながらページをめくってしまう。無理かも、と思うのに、なぜか応援したくなる。そこが不思議な魅力です。

全国のぼっちな少年少女に届ける、という紹介文の通り、孤独な人の心を置き去りにしない作品でした。音楽漫画としての高揚感もありつつ、いちばんは「居場所を作るのって怖いけど、やっぱり欲しい」という気持ちに寄り添ってくれる。1巻の時点で、その優しさと痛さがちゃんと両立していました。

個人的に良いなと思ったのは、後藤が“変わる”ことを、根性や覚悟で片付けないところです。怖いものは怖いまま、体は固まるまま、それでもライブハウスに行ってみる。結束バンドに混ざってみる。そういう小さな行動の積み重ねが、読者にとっても現実的な希望になります。

また、ギターという趣味が「一人で完結する安心」と「人と繋がる入口」の両方として描かれているのも印象的でした。一人で弾くからこそ上達するし、一人で弾くからこそ孤独が深まる。でもバンドに入ると、孤独は減るかもしれない代わりに、別の怖さが増える。このバランスの描き方が上手いから、音楽漫画でありつつ“人間の話”として読める1巻になっていると思います。

絵とテンポの面でも、1巻はかなり読みやすいです。後藤の不安がコマの外まであふれてくるような演出があって、気持ちの大きさが視覚的に伝わってきます。だから、音楽に詳しいかどうかより、「人前が苦手」「集団に混ざるのが怖い」といった感情に心当たりがあるかどうかで、刺さり方が変わる作品だと思いました。読んだあと、少しだけ外に出る勇気が出る。そんな後押しがある1巻です。

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    大手出版社で書籍編集を10年経験後、独立してブロガーとして活動。科学論文と書籍を融合させた知識発信で注目を集める。
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