レビュー
概要
九州の海沿いの高校を舞台に、放課後の部活として“ていぼう部”に集う鶴木陽渚が、漁協の指導を受けながら魚を獲る技術と共同体感覚を学ぶ。1巻では、彼女が初めてノコギリエビを掴む場面や、疑似科学的な気象チャートを使って潮の流れを読む過程が描かれ、漁港社会の時間感覚と読者をつなげる。部員たちの会話は指示代名詞をほぼ使わず、魚の種類と漁具の操作にフォーカスする。
読みどころ
作品の中心は“漁の科学”。作中の天候解析ルーチンは、簡易的な気圧読み取り→風速とのクロス計算→潮位推定というフローを着実に描き出す。第1巻のクライマックスでは、陽渚たちが“水温計”と“塩分濃度”をモニタリングしながらウナギの群れをトレースする場面があり、まるでフィールドノートを読むような感覚になる。彼女らが教えられるのは、釣果の数値だけでなく、社会的な時間の使い方――“網を上げるタイミング”や“干潮と満潮のリズム”――にも向き合うことだ。
類書との比較
自然科学的な部活動漫画としては『凪のお暇』のような時間の使い方に近いが、『放課後ていぼう日誌』はもっと具体的に“現場のデータ”を扱う。『ARIA』のような観察日誌形式よりも、むしろ『Dr. STONE』の田村のように現場スケールでスキルを分解し、即戦力として提示する。『一番好きな漁場を語る』系の作品とは異なり、チームの魚種選定こそが価値を生み出すと描く点が差別化ポイントだ。
こんな人におすすめ
- 漁業の技術や小さな集落の時間感覚に興味がある人
- フィールドワーク的な観察をマンガで追いたい人
- 自然のリズムを身体に取り込む方法を知りたい読者
- 文化的な技能とチームワークの描写が好きな人
感想
初めて油壺の網を立てた瞬間、潮の流れと自分の体温が一致する描写はとても身体的だった。海に浮かぶようにページをめくりながら、水温計の振れ幅を実際にグラフにしたくなる。漁協さんたちの「いいね!」のリアクションからはローカルコミュニティの“承認タイミング”が伝わり、科学よりも社会の流れを先に理解する構成が説得力を持っていた。