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レビュー

概要

『ゴブリンスレイヤー』1巻は、「ゴブリンだけを狩り続ける冒険者」を主人公にしたダークファンタジーです。RPG的な世界観では、ゴブリンは下級モンスターとして扱われがちです。ところが本作は、ゴブリンの脅威を徹底的に現実寄りに描き、油断が即死に繋がる世界として提示します。その結果、主人公が「ゴブリン以外を狩らない」ことが、偏屈さではなく合理として立ち上がります。

もう1つの特徴は、登場人物に固有名がほとんど出ず、肩書で呼ばれる点です。女神官、受付嬢、妖精弓手、鉱人道士、蜥蜴僧侶といった呼び名が、キャラクターの役割そのものになっていて、TRPGのセッションを覗いているような感覚があります。

※本作には、強い暴力描写に加え、ゴブリンによる性的暴力を示す描写があります。苦手な方は注意が必要です。

読みどころ

1) 「弱い敵」を弱いままにしない怖さ

この作品の恐怖は、敵が強いからではなく、敵が“卑怯”であることにあります。数で押す、罠を張る、逃げる、増える。そうした厄介さが積み重なり、戦闘がゲームの作業ではなく、生存の問題に変わっていきます。1巻の序盤で、その世界のルールが分かります。

2) ゴブリンスレイヤーの戦い方が、英雄譚と逆方向

主人公は、必殺技や天賦の才で勝つタイプではありません。装備、準備、手順、地形。勝ちを“偶然”にしないための積み上げで戦います。だから読後に残るのは爽快感だけでなく、「こういう相手と戦うなら、こうするしかない」という納得です。徹底した現場主義が、キャラの魅力になります。

3) 女神官が「恐怖を知った初心者」として機能する

女神官は、読者の感情の受け皿になります。経験不足のまま現場に出て、世界の残酷さに直面する。その恐怖があるから、ゴブリンスレイヤーの無表情な行動が、冷酷ではなく生存の知恵として見えてくる。1巻は、この対比で物語を加速させます。

4) パーティが揃うと、作品の色が少し変わる

妖精弓手、鉱人道士、蜥蜴僧侶が加わることで、単独の復讐譚ではなく“冒険”の輪郭が生まれます。ただ、明るい仲良しパーティにはならない。価値観のズレがあるまま協力し、互いの合理を理解していく。この硬さが、ダークファンタジーとしての手触りを残します。

こんな人におすすめ

  • きれいごとでは終わらないファンタジーを読みたい人
  • 戦闘が「準備と判断」で決まる作品が好きな人
  • TRPG的なパーティ運用の面白さを味わいたい人

1巻は、世界の残酷さを見せる一方で、「だからこそ、生き残る術を磨く」という方向に物語が進みます。好みは分かれますが、危険な相手を危険として扱う徹底ぶりが、強烈に記憶に残る作品です。

1巻で描かれる“最初の事件”が、この作品の倫理観を決める

物語は、初心者の冒険者たちが「相手は最弱のゴブリンだから」と依頼を受けるところから始まります。そこで起きるのは、油断が命取りになる現実です。ここでゴブリンスレイヤーが現れ、手遅れになりかけた現場から女神官を救い出す。この導入だけで、本作が「成長物語」より先に「生存の物語」であることが分かります。

彼がゴブリンだけを狩り続ける理由も、演出で説明されます。名声にならず、報酬も少ない。だから熟練者は避け、新米が犠牲になる。こういう“社会問題”があるからこそ、彼の偏執は私怨ではなく役割として立ち上がります。ギルドの受付嬢は感謝を抱き、周囲は気味悪さを覚える。その同居が、1巻の空気を濃くしています。

戦闘の面白さは「強い技」ではなく「勝ち筋の作り方」

ゴブリンスレイヤーの戦い方は、派手な必殺技から遠いです。洞窟という地形、視界、足場、相手が増える速度。こうした条件を読み、火や煙、狭さといった要素を味方に付ける。つまり、戦闘が“力量勝負”ではなく“手順勝負”になっている。ここが、1巻を読み進める推進力になります。

女神官が加入してからは、奇跡(回数制限のある切り札)をどう使うかが緊張感を作ります。最初は回復と灯りのような小さな奇跡でも、「いつ使うか」で生存率が変わる。戦闘がゲーム的に見えて、実は判断の連続だと分かってくるのが面白いところです。

読む前に知っておきたい注意点

本作は、暴力描写が強いだけでなく、ゴブリンによる性的暴力を示す描写があります。世界の残酷さを描くための表現であっても、苦手な人には負担が大きい。ダークファンタジーの中でも刺激が強い部類なので、安心して読める作品を探している場合は注意してください。

そのうえで、危険を危険として扱い、準備と判断で生き残る物語が好きなら、これ以上ない導入巻です。「最弱」と呼ばれる敵を“最弱のままにしない”。この徹底が、1巻で強く刻まれます。

また、固有名ではなく肩書で呼ぶ演出のおかげで、登場人物が「職能」として見えてくるのも特徴です。前衛が何を守り、後衛が何を支え、回復役がどこで決断するか。戦闘の噛み合わせを“役割”で読む楽しさが、1巻の時点ではっきりあります。

本の虫達

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