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レビュー

概要

『メタ思考トレーニング 発想力が飛躍的にアップする34問』は、細谷功によるワーク形式の思考本だ。狙いは「考え方の型」を鍛えることにある。著者の他の本でも軸になる「具体と抽象を往復する力」を、読むだけではなく実際に頭を動かしながら身につける構成だ。タイトルどおり中心には34問の設問があり、答えそのものよりも、どこまで視点をずらせるか、前提を疑えるかが試される。

この本でいうメタ思考は、単に上から眺めることではない。自分の見方を自覚することだ。さらに、その見方を外し、別の見方へ切り替えることでもある。仕事で議論が平行線になる。企画に既視感が残る。そんな場面では、知識不足より視点の固定を疑ったほうがいい。本書はそこに直接手を入れてくる。

読みどころ

読みどころは、設問が単なるクイズではなく、思考の癖をあぶり出す装置になっていることだ。ある対象を別の業界に置き換えてみる、逆の立場から眺める、そもそもの前提を外してみる、といった問いが続くので、自分がいつも同じ角度から考えていたことに気づきやすい。企画、問題解決、会議、文章整理など、応用先が広いのも強みだ。

また、本書は「答えを当てる本」ではなく、「問いに耐える本」だと感じる。すぐに結論を出すのではなく、問いの置き方を変えることで、見えてくる世界がどう変わるかを体験させる。たとえば、目の前の問題をそのまま解こうとするのではなく、何が本当の問題なのか、誰にとっての問題なのか、なぜその前提で考えているのかまで掘り下げる。これができるだけで、議論の質はかなり変わる。

さらに、具体と抽象の行き来を実感しやすいのも本書のよさだ。抽象的に考えろと言われても、多くの人はそこで止まってしまう。本書は、目の前の具体例から共通構造を抜き出し、別の具体へ戻すという往復運動を何度もさせる。そのため、抽象化がふわっとした精神論にならず、実務のなかで使える感覚として残る。

思考本としてはめずらしく、読むだけでわかった気にさせないところも評価したい。頭を使わないと前に進みにくいので楽な本ではないが、そのぶん読み終えたあとに「考え方の筋トレをした」という感覚が残る。発想法の本を何冊か読んだけれど実務で変化が出ない、という人ほど相性がいい。

たとえば会議で意見が割れたときも、本書の発想を使うと「どちらが正しいか」ではなく、「そもそも何を同じだと見なし、何を違うと見ているのか」という整理に進みやすい。商品企画、採用、営業提案、組織課題の切り分けなど、答えが1つではない仕事で特に効く。設問そのものを覚えるというより、問い直しの姿勢を持ち帰れる本だ。

類書との比較

『イシューからはじめよ』のような問題設定の本は、優れたフレームを提示してくれる一方で、読者側に一定の実務経験を要求するところがある。本書はそこより手前で、そもそも視点を切り替える筋力をどう鍛えるかに寄っている。そのため、問題解決の理論書というより、発想の柔軟性を上げるためのドリル本に近い。

また、『ゼロ秒思考』のようなアウトプットの量を増やす本とも方向が違う。あちらが「とにかく書いて整理する」本だとすれば、こちらは「どう視点をずらして考えるか」を鍛える本だ。量を回す前に問いの質を変えたい人には、本書のほうが効きやすい。

こんな人におすすめ

  • 刺激的なアイデア出しをルーティンにしたいビジネスパーソン
  • 企画やプロダクト開発で、多様な角度を常に考えたいチーム
  • 仕事の前提を疑う癖を身につけたい人
  • ブレストで行き詰まったとき、すぐ使える問を持っておきたい人

感想

この本を読んで良かったのは、「発想力がある人」と「ない人」の差を、才能ではなく訓練可能な差として見直せることだ。思考の柔らかい人は、最初から自由なのではなく、前提を外す癖がついているだけなのだとわかる。これは企画職だけでなく、管理職、教育、営業、日常の会話でも効く視点だと思う。

一気読みする本というより、机に置いて何度か使う本だろう。会議前、企画前、壁打ち前に1問だけでも眺めると、視点がずれて頭がほぐれる。思考本を読んでも実務で使えなかった人にこそ試してほしい、手を動かして効くタイプの一冊だ。

発想力の本というとクリエイター向けに見えがちだが、本書はむしろ日常の判断にも応用しやすい。目の前の不満をそのまま問題だと決めつけず、構造を見て別の打ち手を探す癖がつくからだ。思考の柔軟性を増やしたい人にとって、かなり実戦的なトレーニングになる。

資料作成や面接準備のように、一見正解がありそうな場面でも、本書の視点は役に立つ。相手は何を見ているのか、自分は何を前提に語っているのかを一段上から見直せるからだ。発想本でありながら、判断ミスを減らす本としても読める。

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