レビュー
概要
『ダンス・ダンス・ダンスール』第1巻は、少女・法田乃愛と少年・月城春哉がバレエという身体表現を通してアイデンティティを探すストーリー。中学生の乃愛は母親の破綻と向き合いながら、バレエ団の華やかさと陰に潜む厳しさを同時に体験させられます。春哉は海外のプリンス・アルベルトとして登場し、彼の純粋さが少しずつ乃愛の視野を広げる。履歴としては、エリートと庶民のはざまで身体を使いながら成長する若者たちをリアルに描写する構成です。
読みどころ
1) バレエの稽古場を写実的に描くコマ
コンクリートの床、鏡に映る身体、繰り返しのポーズ。このマンガはバレエの現場をシャッター音のようにコマ割りで切り取る。バレエ団での練習、痛みに耐えて膝を曲げる様子、見学者の視線を意識したサビの取り方など、フォーカスの置かれ方がリアルです。
2) 友情とライバル関係が絡む心理描写
乃愛と春哉の距離が微妙に変化する一方で、同級生・聖人や先輩の影がその関係に影響する。それぞれが抱える「家族との断絶」「自分への期待」をバレエの回転に重ね合わせ、感情の軌跡を描いていく。ライバルとして存在する者たちの裏表も丁寧に描かれ、緊張感が続きます。
3) 音楽と静寂の,使い分け
音楽をコマとして表す仕掛けがあり、たとえばクラシックの旋律が画面の中で「波状」のように描かれ、静かな反復が視覚化される。ほどけるような柔らかいシーンでも、静けさには耳をすませるような音の文字が浮かびます。
類書との比較
バレエを扱った漫画では『白鳥の湖』連想があるものの、『ダンス・ダンス・ダンスール』は現代性とメタフィジカルを兼ね備えている。たとえば、同じ身体演出では『BLUE GIANT』のようなジャズもあるが、こちらは繊細さと荘厳さを同時に描き、身体表現の社会的な側面にも切り込む。バレエの稽古と家族の不協和音を同列に描写するあたりは、『ましろのおと』の音楽と人生との重なり方にも近い。
こんな人におすすめ
- バレエの訓練と青春の交錯を読みたい人
- クラシック芸術の側面と現代の日常を重ねたい読者
- リアリティのあるスポ根要素を求めるマンガファン
- 身体表現に宿る心理的な振動を追体験したい人
感想
1巻を読み終えると、自分の姿勢を一度チェックしたくなる。身体の節目で起きる感情の変化を、バレエの鍛錬と並行して描いていくため、単なる技術本ではなく、精神性や受容のプロセスを描く力作になっている。バレエという言語を通じて青春を説明する試みが力強く、続きが待ち遠しい。