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レビュー

概要

『パパと親父のウチご飯 1巻』は、子育て中の父親2人が、子どもたちと一緒に暮らしながら家庭料理を身につけていく物語です。新潮社の紹介でも、千石、晴海、愛梨、清一郎という4人で作る暮らしがシリーズの核として扱われています。この1巻では、その共同生活が始まる段階のぎこちなさと、料理を通じて少しずつ家の空気が整っていく様子が丁寧に描かれます。

料理漫画というと、専門知識や名店級の味を競う作品を想像しがちです。けれどこの本の中心にあるのは、うまい料理そのものではなく、「今日の晩ごはんをどう回すか」という生活の現実です。仕事、子どもの機嫌、買い物、後片づけ、台所の段取り。そうした家庭の細かい負荷がきちんと物語の中に入っているので、食卓が単なる演出ではなく、家族の関係を作り直す場所として見えてきます。

本の具体的な内容

1巻の面白さは、料理が父親たちの感情表現になっているところです。言葉だけでは埋めにくい距離があるときでも、子どものために献立を考え、失敗しながら作り、同じ食卓につくことで関係が少しずつほぐれていく。派手な事件が起きなくても、食べてもらえるか、喜んでもらえるかという一点に気持ちが集まるので、読んでいる側も自然にその場へ引き込まれます。

新潮社の既刊紹介では、あまから回鍋肉、照り焼きチキンサンド、レアチーズケーキ、お子様ランチ、おでんといった料理が並びます。この作品の良さは、そうしたメニューが「映える料理」として出てくるのではなく、それぞれの場面の気分や関係性と結びついている点です。しっかり食べさせたい日、少しごほうび感を出したい日、家の空気を明るくしたい日。料理がイベントではなく会話の延長になっているので、食卓の温度が伝わりやすいです。

また、本書は父親像を理想化しすぎません。最初から何でもできるわけではなく、段取りの悪さや気まずさも見せます。そこがむしろ信用できます。家庭の中心を料理が支えるのは分かっていても、毎日きっちり回すのは難しい。その現実を踏まえたうえで、2人が少しずつ手つきを覚え、自分なりの役割を持ち始めるので、成長譚としても読み応えがあります。

子どもたちの存在も大きいです。大人だけなら流してしまえることでも、子どもがいると向き合わざるを得ません。何を食べさせるか、どんな言い方をするか、どこまで相手の事情をのみ込むか。そうした小さな判断が積み重なって、この家にしかないルールができていく。共同生活ものとして読んでも面白いのは、そのルール作りが台所から始まるからです。

さらに、このシリーズは巻末レシピの実用性でも記憶に残ります。作中に出てきた料理を読者が再現できるようにしてあるので、読後に「おいしそうだった」で終わりません。料理漫画の楽しさを保ちつつ、現実の生活へ橋をかけてくれる構成です。読み物として温かく、実用品としてもちゃんと役に立つ。この両立はかなり強い魅力です。

類書との比較

家族漫画として読むなら、親子の情緒だけに寄せた作品よりも、生活の手触りが濃いです。料理漫画として読むなら、グルメの蘊蓄や勝負より、毎日の食卓がどう家族を支えるかに比重があります。だからこそ、ドラマチックな展開よりも、暮らしが少しずつ変わっていく過程を見たい人に向いています。父親が料理を覚える話でありながら、家事と育児の分担、他人同士が家になる過程まで描けているのがこの本の強みです。

こんな人におすすめ

  • 料理漫画を読みたいが、生活感のある作品が好きな人
  • 子育てや家事のリアルが入った家族漫画を探している人
  • レシピ付きで、読後に実際の料理も試してみたい人

感想

この本を読むと、家庭料理は「上手に作ること」以上に、「家の空気を保つこと」なのだとよく分かります。腹を満たすだけなら外食でも済みますが、誰かのために献立を考えて、家で食べる形にすることには別の意味がある。その意味を説教くさく語るのではなく、共同生活のドタバタの中で自然に見せてくれるのがうまいです。

父親2人の未完成さを笑いにしつつ、笑いだけで終わらせないところも良かったです。台所に立つことは、そのまま家族と向き合う行為になっていきます。だから料理の成功よりも、食卓が続いていくこと自体にじんわりした価値が出ます。ごはんものの漫画としても、家族ものの漫画としても、かなり信頼できる1巻です。

シリーズの入口として見ても出来がよく、1巻だけで共同生活の楽しさと難しさがきちんと伝わります。食卓から家族ができていく話を読みたい人には、安心して勧められる作品です。

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    佐々木 健太

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