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レビュー

概要

『あさひなぐ』1巻では、二ツ坂高校に進学した東島旭が、薙刀(なぎなた)部に出会い、武道の世界へ踏み込んでいきます。旭は中学時代、美術部でした。運動部に入ろうと考えていた入学初日、通学の電車で宮路真春と出会い、成り行きで薙刀部の見学へ行くことになります。

そこで見た真春の強さが、旭の背中を押します。「強い人になりたい」という、かなりシンプルで切実な動機で入部を決める。1巻は、この“始まりの一歩”を、テンポ良く、でも軽くしすぎずに描いていきます。

薙刀は題材としてはマイナー寄りです。でも本作は、「薙刀って何?」で読者を置いていかない。構えや間合いの雰囲気、部活の空気、強い人が放つ圧のようなものを先に見せて、興味を作ってから説明が入ってきます。

読みどころ

1) 旭の“初心者の目線”が気持ちいい

武道漫画の導入は、いきなり才能の片鱗を見せることも多いです。でも旭は、最初から上手いわけではありません。
「強くなりたい」と思う理由はあるのに、体は思うように動かない。気持ちだけが先に走る。そのギャップが、入部のワクワクと同時に「この先の努力」を見せてくれます。

2) 真春の存在が、“憧れ”だけで終わらない

旭が惹かれるのは真春の強さです。ただのアイドル的な先輩ではなく、武道をやってきた人の線の太さがある。
憧れって、優しいだけだと続かない。近くにいるほど、差が見えるほど、しんどくなる。でもそのしんどさが「追いつきたい」に変わる。1巻は、その感情の動きを自然に見せます。

3) 部活の空気がリアルで、仲良しだけじゃない

薙刀部は、青春のキラキラだけでは回りません。練習はきついし、上下関係や温度差もある。
それでも旭は入ってしまう。入ったからには、逃げられない。1巻は、部活という箱の“楽しさ”と“逃げにくさ”を同時に立ち上げるのが上手いです。

1巻の面白さ(「武道の強さ」と「人としての強さ」が同時に問われる)

旭が欲しいのは、ただ勝てる力だけではありません。
電車で真春と出会ったとき、旭はまだ自分の輪郭が薄い。でも薙刀部に入ると、勝ち負けだけでなく、言い訳しないことや、怖いのに立つことを求められます。武道は、心の癖を隠せないんですよね。

1巻の段階では、技術の説明を長々とやるより、「強い人の動きってこう見える」「初心者はここで止まる」という差を、体感として見せてきます。
だから、読者側にも「旭が強くなる過程」を見守りたい気持ちが生まれる。スポーツものの“成長の快感”が、武道の緊張と一緒に入ってきます。

薙刀という題材の強さ(「距離」と「間」が主役になる)

薙刀は、殴り合いの迫力で見せる競技ではありません。
相手との距離、踏み込みの一歩、気配の読み合い。そういう“間”が勝負になります。だから、派手な必殺技がなくても緊張が続く。1巻からその緊張が立ち上がっているのが良いです。

武道ものって、強い人のかっこよさが先に来ることがあります。でも『あさひなぐ』は、かっこよさの前に「怖い」「恥ずかしい」「でもやりたい」が来る。
旭が初心者としてつまずくたび、薙刀の難しさが伝わるし、同時に“上達したら景色が変わる”期待も生まれます。

序盤では、3年生の引退が近い空気もあり、部活の時間が有限であることも見えてきます。
今できる人と、これからできる人。世代の差があるからこそ、焦りも希望も濃くなる。1巻は、そのスタートラインをきれいに引いてくれます。

こんな人におすすめ

  • 部活ものが好きで、王道の成長を追いたい人
  • マイナー競技でも、空気がリアルならハマれる人
  • “強くなる理由”が切実な主人公を読みたい人

感想

1巻を読んで感じるのは、薙刀が「かっこいい武道」として描かれているだけではなく、部活としての泥臭さもきちんと出ているところです。
旭の動機はシンプルで、少し無謀です。でもその無謀さがあるから、真春の強さが刺さるし、旭の迷いも刺さる。スタート地点の温度がちょうどいい。

あと、旭が美術部出身という設定が効いている気がします。身体表現に慣れていない人が、いきなり武道の世界に入る。その怖さと面白さがある。
薙刀という題材を入口にしつつ、結局は「自分はどんな人間になりたいのか」という話になっていく予感がします。1巻は、その予感を作り切る導入巻でした。

練習の積み重ねで景色が変わっていくタイプの部活ものが好きなら、かなり相性がいい1巻です。

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    佐々木 健太

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