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レビュー

概要

大学病院の麻酔科に配属された新米医師・華岡ハナコが、外科医や看護師とともに手術を支える日々を描く青春医療マンガ。本作は麻酔科医不足が声高に叫ばれる医療現場を舞台に、重厚な責任感と少しポップなキャラクター造形を両立させ、毎回「劇薬と命のバランス」に対峙する研修医の心情がリアルに書き込まれている。ハナ自身は子どもへの麻酔でキャラクター柄の手術着を着て笑顔をつくるような明るい性格だが、手術室では緊張感と威圧感に飲まれることも多く、外来で救急が入れば即呼び出され、生活も季節も霞んだ暮らしの中で研鑽を重ねていく。

読みどころ

  • 手術前に患者の全身状態を読み解き、麻酔薬の種類・タイミング・投与量をシビアに調整する描写が丁寧。初期エピソードでは妊婦の緊急帝王切開や脳外科手術を控えた高齢者への導入、劇薬の管理とルーチンの厳格さが重ねて描かれ、それぞれの責任が「最小限の痛みと最大の安全」に直結することが伝わってくる。
  • 麻酔科特有の「勘」を浮き彫りにする会話や描写が多い。先輩医師からの怒号、麻酔の中断を決定する権限、患者に向き合う柔らかな対話——忙殺されるハナが情動をしっかり拾い上げることで、専門的な医学知識が人間関係のケアとつながるという構造がしっかりと描かれている。
  • 研修医らしい失敗と挫折、そして仲間や患者との小さな交流や救命がテンポよく繰り返される。用語解説風の小話も挿入されるので、麻酔という滅多に触れない専門領域の世界をスムーズに理解できる。

類書との比較

『医龍』シリーズと比べると主人公が心臓外科のスーパードクターではなく、麻酔科の現場で繰り返し同じような準備と判断を求められる点が差別化の核だ。強烈な手術描写の代わりに、麻酔の前の麻酔医同士の調整や麻薬管理の厳しさに光を当てており、患者の家族との対話や日常への戻り方に焦点を向けたところは『コウノドリ』に通じる。『ブラックジャック』が医師個人の天才性を讃えるのに対し、本作はチームワークと関係性が要とされる、より泥臭い現場の磁場を再現している。

こんな人におすすめ

  • 外科手術の裏側で責任を負うポジションに興味がある人。血圧管理、鎮静、薬剤の使い分けなどを地味に学びたい読者。
  • 医療現場の人間関係と、日常の生活のギャップを描いたヒューマンストーリーが好きな人。
  • 麻酔科医の仕事に憧れていたり、実際に関わっている職種(看護師、循環器技師など)で知られざるルーチンを追体験したい人。

感想

麻酔科医の働き方をあれこれ語るのではなく、目の前のモニターや点滴ラインとじっと向き合う時間と「どうしようもない不安」にどう応えるかを描いている点が新鮮だった。細かい手技や薬剤名称にまで踏み込むことで、「こんなに多くの選択肢の中で正解を探るのか」と読者も一緒に心拍数を上げることができる。 また、手術に入る前後の短い会話や、救急で駆け込んだ父親の一言が場面ごとにしっかり切り替わることで、医療現場の緊張と患者の人間らしさの両方が伝わってくる。医療と命の重みをポップな絵柄とテンポで味わえる一冊なので、医学系に踏み込みたい初心者にもハードルが低く感じられる。

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    大手出版社で書籍編集を10年経験後、独立してブロガーとして活動。科学論文と書籍を融合させた知識発信で注目を集める。
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    佐々木 健太

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