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レビュー

概要

『ペンギンとセルフケア 自分を整える111の方法』は、坂崎千春のイラストと言葉で、自分を整えるための小さな習慣を集めた本です。セルフケア本というと、睡眠、運動、瞑想、認知のゆがみなどをきちんと学ぶタイプを想像しがちですが、本書はかなり違います。まずイラストがあり、その絵の余白の中に「こういう整え方もある」と短い提案が置かれている。読むというより、眺めながら息を抜く本です。

収録されているのは、お風呂に入る、群れから少し離れる、スマホを置く、いやだと言ってみる、といった行動です。どれも大げさではありません。だからこそ、自分を変えるぞという強い意志がなくても入りやすいです。疲れているときほど、正論よりこういう本のほうが助かる場面は多いです。

読みどころ

読みどころは、セルフケアを「立派にやるもの」にしていないところです。本書に出てくるのは、生活を劇的に変える方法ではありません。むしろ、今日は早く寝る、少し休む、距離を置く、気分転換をする、といった誰でも知っているはずのことです。ただ、それを自分に許すのは意外と難しい。本書はそこをペンギンの姿でやわらかくほぐしてくれます。

また、111の方法が並んでいることで、気分や状態に合わせて拾い読みしやすいのも良いところです。落ち込んでいる日に効くものと、疲れすぎて何もしたくない日に効くものは違います。本書はその日の自分に合う提案を選びやすく、通読しなくても意味がある作りです。

さらに、言葉が強すぎないのも大きいです。「こうすべき」と押してくる本ではなく、「こうしてもいい」と許可を出してくれる本なので、頑張り屋ほど読みやすいと思います。セルフケアが必要なのに、その必要性すら重く感じてしまう人に向いています。

本書の重要ポイント

本書の重要ポイントは、セルフケアを能力や意識の高さで競う話にしていないことです。疲れたら休む、合わない距離から下がる、安心する行動を選ぶ。言葉にすると当たり前ですが、忙しい時期ほどこの当たり前が抜けます。本書は、その抜けた当たり前を責めずに戻してくれます。

もうひとつは、視覚の力をうまく使っている点です。イラストが先にあるので、理屈で納得してから実践するという流れになりません。まず「なんだかいい」と感じ、そのあとで真似できそうな行動を拾う。この順番が、理論に疲れた読者にはちょうどいいです。

類書との比較

心理学ベースのセルフケア本やメンタル本と比べると、本書は理論の厚みでは勝負していません。その代わり、入りやすさと続けやすさが圧倒的に高いです。データやメソッドを学ぶ本ではなく、自分を雑に扱わない感覚を取り戻す本として読むとしっくりきます。

また、イラストエッセイとしても魅力があります。絵を見ているだけで少し気持ちがほどけるので、読書の気力が落ちている時期にも手に取りやすいです。実用書と画集の中間のような立ち位置が、この本の独自性だと思います。

こんな人におすすめ

頑張る系の自己啓発本に疲れた人、最近ずっと気を張っていて休み方がわからなくなっている人、小さなセルフケアから整え直したい人におすすめです。とくに、理屈は理解しているのに実行が重い人には相性がいいです。

また、プレゼント本としても向いています。深刻すぎず、軽すぎず、相手に負担をかけずに「無理しないでね」と伝えられるからです。

ページを順番に読まなくてもいいので、朝の支度前や寝る前に数ページだけ開く読み方にも向いています。実用書としては珍しく、「読破すること」より「気分に合わせて戻ってこられること」に価値がある本です。手元に置いて少しずつ効いてくるタイプの本だと思います。

気持ちが落ちた日に全部を立て直そうとすると、かえって何もできなくなることがあります。本書はそういう時に、1つだけ真似する、1ページだけ眺めるという使い方ができます。セルフケアの入口を小さくしてくれるのが、この本のいちばん実用的なところです。

感想

この本を読むと、セルフケアは特別な時間を確保してやるものではなく、日常の中で自分を少し丁寧に扱うことなのだと感じます。何かを大きく改善しなくても、今の自分を少し楽にする行動はたくさんある。そのことを思い出させてくれる本でした。

読後に大きな変化が起きるタイプではありませんが、机の近くに置いておきたくなる本です。疲れている日に数ページ開くだけでも効く、静かな実用品としておすすめできます。

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    佐々木 健太

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