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レビュー

概要

『モダンサッカーの教科書 イタリア新世代コーチが教える未来のサッカー』は、現代サッカーを「流行語の寄せ集め」ではなく、プレー原則と判断の連続として理解したい人に向いた一冊です。著者はイタリアの新世代コーチとして知られるレナート・バルディ氏と、戦術解説で定評のある片野道郎氏。対話形式で進むため、難解になりがちな戦術論でも、考え方の筋道を追いやすくなっています。

この本が扱うのは、単にフォーメーションの違いではありません。 焦点は、ポジショニング、プレッシング、トランジション、スペースの使い方、選手個々の判断の質です。 本書は、こうした要素を「なぜそう考えるのか」というレベルまで掘り下げます。 戦術本は図だけ眺めて終わりになることも多いものです。 ですが、本書は、どこに立つべきか、いつ奪いに出るべきかという意図の説明が丁寧です。そのため、試合観戦の目が変わりやすい本です。

読みどころ

読みどころの1つは、イタリア的な戦術理解を、守備偏重の古いイメージで終わらせていない点です。本書では、攻守の切り替えを速くすること、ポジションに縛られすぎず役割を連動させること、相手の配置に応じてスペースをどう見つけるかといった、現代サッカーの基礎が対話の中で整理されていきます。図解だけでは掴みにくい「判断の文脈」が言葉として残るので、コーチングや観戦の解像度アップに生きます。

また、戦術概念を丸暗記させる本ではなく、原則として理解させる本である点も重要です。たとえばプレッシング1つ取っても、「前から行くかどうか」だけではなく、誰が、どこを消しながら、どの方向へ追い込むのかという連動が大事になります。本書はそこを抽象論のままにせず、実際の試合で何が起きているかを想像しやすい言葉で説明してくれます。サッカー経験者にはもちろん、観戦中心の読者にも学びが多いはずです。

さらに、対話形式が効いていて、理論だけで浮かないのもよかったです。片野氏が読者の疑問に近い位置から問いを立て、バルディ氏が考え方を解きほぐすので、いきなり専門用語だけが続くような読みづらさがありません。戦術用語を知っている人には整理になるし、まだ慣れていない人には入口になります。サッカー本でありがちな「知っている人しか読めない感じ」が比較的薄いのは、この本の強みです。

現場目線で読むと、育成年代の指導にも通じるところがあります。モダンサッカーは、単に高度な戦術を覚えることではなく、状況に応じて判断を変えられる選手を育てることでもあります。本書は、チーム全体の構造と、個人の認知・判断を切り離していないので、指導者が読む意味も大きいです。練習メニューの発想そのものが変わる読者もいると思います。

類書との比較

戦術本には、フォーメーション図や名将の戦い方を紹介する本も多いですが、本書は「このチームは4-3-3だった」で終わりません。配置の裏にある思想、相手との関係性、ボール保持時と非保持時の原則まで含めて説明するため、より再現性のある理解につながります。試合の結果を後づけで説明するタイプの本より、はるかに学びが残る構成です。

また、欧州戦術本の翻訳ものにありがちな読みにくさが比較的少なく、日本の読者がつまずきやすいポイントを意識して橋渡しされています。サッカーを観る目を養いたい人にも、現場でチームを見ている人にも届くバランスです。いわゆる“戦術オタク向け”に閉じていないので、観戦の解像度を上げたい一般ファンにも勧めやすい一冊でした。

こんな人におすすめ

  • 試合を見ていて「なぜその動きが重要なのか」を言語化したいサッカーファン。
  • 戦術用語は聞くものの、断片知識のままでつながっていないと感じる人。
  • 育成年代やアマチュアチームで指導し、練習設計の発想を広げたい人。
  • 欧州サッカーの潮流を、表面的な流行ではなく原則として理解したい人。

感想

この本を読むと、サッカーの見え方がかなり変わります。これまで「なんとなく上手い」で見ていたプレーが、スペース管理、立ち位置、味方との関係、相手への誘導といった要素に分かれて見えてきます。モダンサッカーという言葉は便利な一方で曖昧になりがちですが、本書はその曖昧さを減らしてくれます。戦術本として読む価値はもちろんありますが、観戦の楽しさを深くしてくれる本としても優秀です。サッカーをもう一段立体的に見たい人にはかなりおすすめできます。

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    佐々木 健太

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