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レビュー

概要

『アシュタンガ・ヨーガ』は、アシュタンガの実践体系を理解しながら練習できるガイドブックです。著者はジョン・スコット。シリーズの順番、呼吸、視点、身体の使い方を一体として説明しており、単にポーズの写真を並べた本ではありません。アシュタンガ特有の流れを、なぜその順で進むのかまで含めて学べるのが特徴です。

アシュタンガは、決まったシークエンスを呼吸とともに積み重ねていくスタイルなので、自己流で形だけ追うと崩れやすい面があります。本書はそこを丁寧に補ってくれます。どこで吸い、どこで吐くのか、視線はどこに置くのか、ポーズ同士がどうつながるのかが整理されているため、練習の流れ全体を把握しやすいです。

読みどころ

本書の大きな強みは、アシュタンガを「順番のある鍛錬」として見せてくれるところです。各ポーズを単独で説明するだけではなく、シークエンスの中でそのポーズがどんな役割を持つのかまで伝えてくれます。そのため、「このポーズが苦手」で止まるのではなく、前後とのつながりから理解し直せます。

また、呼吸、ドリシュティ、バンダといったアシュタンガで重要な要素が、単語の説明で終わっていません。練習の中で何を意識するべきかという実感へつながる書き方なので、初心者が神秘的な言葉に圧倒されにくいです。呼吸が浅くなると流れが崩れる、視線が定まると集中が保ちやすい、といった感覚的な理解が得やすいのは大きいです。

さらに、写真や解説の密度が高く、フォームの細部で迷いにくいのも利点です。アシュタンガはテンポがあるぶん雑に進みやすいですが、本書を手元に置くと「急いで通過する」のではなく、「順序よく積み上げる」感覚に戻れます。独学の人にも、教室に通っている人の復習用にも向いています。

ポーズの達成だけを目標にせず、練習全体のリズムを整える教材として使えるのも良いところです。今日はどこで呼吸が乱れたか、どこで視線が泳いだかを確認しながら読むと、できたかできないかの二択ではない振り返りができます。上達を焦って崩しやすい人ほど、この本の地味な価値が大きいはずです。

類書との比較

やさしいヨーガ入門書は、続けやすい反面、アシュタンガの全体像まで届かないことがあります。本書は負荷も情報量もそれなりにありますが、そのぶん体系が崩れません。動きの美しさより、流れの理解を重視する人にはこちらのほうが合います。

一方で、完全な初心者がいきなり最初の一冊として使うにはやや重いかもしれません。ヨーガ全般の超入門より、すでに興味が固まっていて、アシュタンガをきちんと学びたい人向けです。そこが対象読者の違いであり、本書の価値でもあります。

逆に言えば、教室で断片的に教わった内容を一冊でつなぎ直せる本は意外に多くありません。順番の理由、呼吸の意味、集中の置きどころをまとめて確認できるため、入門を終えた人の「次の一冊」としてかなり優秀です。動画では流れてしまう細部を、静かに見直す時間が持てます。

こんな人におすすめ

  • アシュタンガを自己流で続けていて、土台を確認したい人
  • 呼吸とポーズのつながりを理解したい実践者
  • 教室の復習を自宅で丁寧にやりたい人
  • 順番と意味を押さえながら長く練習したい人

感想

この本を読むと、アシュタンガは単にきついヨーガではなく、順序と集中で組み立てられた練習法だとわかります。決まった流れがあるからこそ、昨日の自分との違いが見えやすく、呼吸の浅さや力みの癖にも気づきやすい。本書はその観察を助けてくれるガイドになっていました。

また、写真付きの実用書で、読むだけでも練習の姿勢を整えやすい点がよかったです。できないポーズを焦って追うのではなく、順番を守りながら土台を積み上げるほうが結果的に近道だと実感できます。アシュタンガに本気で取り組みたい人にとって、かなり信頼できる一冊です。

派手な変化を約束する本ではありませんが、そのぶん長く使えます。慣れたあとに読み返しても発見があり、練習の乱れを戻すときにも役立つ。本棚の飾りではなく、実際の練習で何度も開くタイプのヨーガ本でした。

練習量だけが増えて中身が薄くなるのを防いでくれる本、と言ってもいいかもしれません。アシュタンガは続けるほど惰性にも入りやすいですが、本書を読むと、呼吸と順序を守る意味がまた手触りを持って戻ってきます。長く付き合える指導書を探している人には相性がいいです。

特に、動画だけでは理解しづらい「順番に従う意味」を腹落ちさせたい人には有効でした。見よう見まねから一段進みたい時の支えになります。

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    佐々木 健太

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