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レビュー

概要

『正しい家計管理』は、家計簿のつけ方や節約テクニックを並べる本ではなく、家計そのものをどう設計すれば長く安定するのかを考えさせてくれる本です。著者は公認会計士の林總さんで、本書の特徴は企業会計の考え方を家庭に持ち込み、収入と支出だけでは見えない家計の本当の姿をあぶり出していくところにあります。

多くの家計本は、食費を減らす、固定費を削る、先取り貯金をするといった行動に焦点を当てます。それはもちろん大事ですが、この本はその一歩手前で「そもそもあなたの家計はどういう状態なのか」「黒字でも将来不安が消えないのはなぜか」を問い直します。家計管理が苦手な人にとっても、節約が続かない人にとっても、やるべきことを増やす本というより、判断の軸を整える本として読む価値があります。

読みどころ

  • いちばん印象に残るのは、「家計にもバランスシートが必要だ」という視点です。毎月の収支だけを見ていると、なんとなく回っているように感じても、資産と負債の全体像までは見えません。本書は、預貯金、住宅ローン、保険、教育費といった要素をばらばらに考えるのではなく、家計全体の構造として捉え直させてくれます。この視点を持つだけで、目先の黒字化だけでは不十分だと気づけます。
  • 住宅ローンや保険の見方も実践的です。多くの家庭では、住宅ローンは単に大きな借金、保険は安心のために入るものとして扱われがちですが、本書ではそれらを感情ではなく機能で考えます。何が資産形成につながり、何が家計を圧迫しているのかを区別する考え方が明快で、家計改善の優先順位を決めやすくなります。
  • また、節約本にありがちな「頑張ればなんとかなる」という精神論が薄いのも読みやすいところです。本書は、家計の不安を個人の意思の弱さではなく、設計ミスや見える化不足として扱います。そのため、読んでいて責められる感じが少なく、「なるほど、ここを直せばいいのか」と冷静に受け止めやすいです。
  • 教育費や老後資金のような長期課題にもつながるのが本書の強みです。毎月の支出を少し抑えるだけでは解決しない問題に対して、家計の土台を整える発想を与えてくれるので、共働き家庭や子育て世帯にも相性がいいと感じます。

類書との比較

家計本には、節約ワザを大量に載せた本や、投資や新NISAに焦点を当てた本も多いですが、本書はもっと基礎の部分を扱います。つまり、「何にいくら使うか」の前に、「家計をどう見るか」を整える本です。そのため、家計簿アプリを入れても続かなかった人や、お金本を何冊読んでも不安が消えなかった人に向いています。

特に、横山光昭さんのような生活防衛型の本が行動の始点を教えてくれるのに対し、本書は家計全体の見取り図を与えてくれるタイプです。実行テクニックの本と組み合わせると効果が高いですが、まず軸を作る一冊として読んでも十分価値があります。

こんな人におすすめ

  • 家計簿をつけても改善につながらない人
  • 教育費や住宅ローンを含めて、家計全体を見直したい人
  • 節約より先に、家計の考え方そのものを整理したい人
  • 夫婦でお金の話をすると感情論になりやすい人

感想

この本を読んで感じたのは、家計管理は気合いではなく構造だということでした。日々の買い物を少し我慢するよりも、資産と負債のバランスを把握し、何が家計の足を引っ張っているのかを見極めるほうが、長い目ではずっと効きます。家計に対する漠然とした不安がある人ほど、その不安の正体を言葉にしてくれる本だと思います。

派手な節約術は少ないですが、そのぶん土台がしっかりしています。目先のテクニックではなく、家計を立て直す考え方を身につけたい人にとっては、とても頼りになる一冊です。

特に、夫婦で家計の話をすると感情的になりやすい家庭には相性がいいと感じました。本書の考え方を間に置くと、「何にいくら使ったか」ではなく、「この支出は家計全体の中でどういう意味を持つか」という話に変えやすくなるからです。家計会議の土台になる本としても使えると思います。

節約本を何冊か読んだあとに読むと、点だった知識が線でつながる感覚があります。家計簿、保険見直し、教育費準備、新NISAといった個別テーマを1つの家計設計へ戻して考えたい人に向いた、再読価値の高い一冊でした。

家計を「管理する作業」から「設計する仕事」へ切り替えてくれる本として、長く使える内容です。暮らしが変わるたびに読み返して、判断の基準を確認したくなる本でした。

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    佐々木 健太

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