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レビュー

概要

『【改訂新版】個人事業ではじめる アパート・マンション経営がぜんぶわかる本』は、アパートやマンション経営を「投資の夢」ではなく「個人事業としてどう回すか」という視点で整理した入門書です。物件購入、融資、家賃設定、空室、修繕、税務、申告まで、大家業の全体像を一通り押さえられる構成になっています。

この本の良さは、収益物件を買うまでの話で終わらないことです。不動産投資本の中には、利回りや購入のテクニックに寄るものもありますが、実際に負担が大きいのは買った後の運営です。本書はそこをきちんと扱い、経営として何を見ておくべきかを初学者にも分かる形で示してくれます。

「個人事業ではじめる」というタイトルどおり、会社化前提の大きな事業ではなく、まず自分の規模で理解し、管理し、数字を見られるようになることを重視しています。そのため、これから不動産投資を始めたい人や、区分ではなく一棟経営に興味がある人には特に使いやすいです。

読みどころ

読みどころの1つ目は、収支を見る目を育ててくれることです。アパート経営では、表面利回りだけを見て判断すると危険ですが、本書は空室、修繕、管理費、税金、ローン返済まで含めて考える必要を丁寧に教えてくれます。数字が苦手な人でも、「何を見落とすと苦しくなるか」が分かるだけで、判断はかなり変わります。

2つ目は、税務や申告まで一冊でつながっていることです。不動産投資の入門書は、物件取得や融資で止まるものも少なくありません。本書は、青色申告や減価償却といった実務寄りの話まで入るため、買ったあとに何が待っているかが想像しやすいです。税理士事務所が関わっている本だけあって、利益の見え方と税務のつながりが分かりやすいです。

3つ目は、管理の現場感があることです。入居者募集、空室対策、修繕、管理会社との付き合い方など、大家業で地味に重要なテーマがきちんと入っています。不動産経営は、物件を持つことよりも、持ったあとに面倒を放置しないことの方が大事だと分かる構成です。

また、改訂新版であることにも意味があります。制度や税制は変わるので、古い不動産本を読むと判断の前提がずれていることがあります。本書は比較的新しい条件を踏まえて全体像をつかみたい人に向いています。

類書との比較

大家業の本には、成功体験を前面に出したものと、制度解説に寄ったものがあります。本書はその中間で、夢をあおりすぎず、実務を細かくしすぎないのが良いところです。派手な事例に引っ張られず、最初に全体図を持ちたい人にはちょうどいいです。

サラリーマン大家向けの本と比べると、本書は節税や申告の基礎まで見通しやすく、経営の土台を作る本として使えます。反対に、すでに複数棟を持っていて高度な法人スキームを学びたい人には少し入門的かもしれません。ただ、初期段階ではこのくらい整理された一冊の方が失敗しにくいです。

物件の探し方だけに特化した本、空室対策だけに特化した本を読む前に、本書で全体像をつかんでおくと、自分が次にどの分野を深掘りすべきかが見えます。入口の地図としてかなり優秀でした。

こんな人におすすめ

おすすめなのは、アパート・マンション経営に興味はあるが、何から学べばいいか分からない人です。YouTube や SNS の断片情報ではなく、まず一冊で土台を作りたい人に向いています。

特に、収支、税務、管理をまとめて理解したい人には相性がいいです。物件の買い方だけでなく、経営として続けるための視点を持ちたい人には役立ちます。区分投資から一棟投資へ関心が移ってきた人にもおすすめです。

逆に、すでに実務経験が豊富で、出口戦略や法人化の高度な話だけを知りたい人には少し物足りないかもしれません。ただ、初学者から中級手前までの読者にはかなり使いやすいです。

感想

この本を読んで強く感じたのは、不動産投資は「買えるか」より「回せるか」で成否が決まるということでした。本書はその現実を、怖がらせるためではなく、準備させるために整理しています。だから、過度に夢を見せる本より信頼できます。

また、税務の話がきちんと入っていることで、利益の見え方がぐっと現実的になります。不動産経営は家賃収入だけを見ていても判断できません。本書はそのズレを埋めてくれるので、表面的な利回りに流されにくくなります。

これから大家業を学ぶ人にとって、本書はかなり良い入口でした。購入、運営、税務までを一本の流れでつかめるので、「結局どこが大事なのか」が見えやすいです。最初の一冊として安心してすすめやすい不動産本です。

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    佐々木 健太

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