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レビュー

概要

コロンビア大学でポジティブ心理学を学んだ松村亜里さんが執筆した本書は、「母親だからこそ」自分の存在価値を育てなおすための14の行動習慣を提示する。育児や家事、仕事の両立で自己肯定感が揺らぎやすい母親の心情を丁寧に分析し、心理的負担の原因を正面から受け止めつつ、1日5分の実践で少しずつ自信を取り戻す道筋を描いている。セルフコンパッションの研究で提示される「自他の共感」「マインドフルネス」「感情への優しさ」の3つの要素を翻訳し、自分ごと化できるような例文で紹介しているのが大きな特徴だ。

読みどころ

最初の章では「自己肯定感を下げる思考パターン」を丁寧に解体し、客観的なデータを交えて「自分を責める脳内対話」が機能する仕組みを説明する。中盤では14の習慣を3ブロックに分けて提示し、具体的なアンカー(たとえば「朝の呼吸」「手帳へのねぎらい」など)を設定。後半はパートナーとの関係や家族との協調を視野に入れた実践例で構成され、セルフコンパッションの核となる「共通の人間性」「今ここのマインドフルネス」まで導いてくれる。

  • ポイント1:14の行動習慣。自己評価を高めるように設計された一連の習慣は「自分の感覚を味わう」「小さな達成を記録する」「他者の目線ではなく自分の声を聞く」といったステップで構成され、日替わりで試せる。
  • ポイント2:自責のループを断ち切る「リフレーム」。ネガティブな出来事の意味づけを変えて、感情の状態を3段階で書き出し、解釈の幅を広げるワークが盛り込まれている。
  • ポイント3:セルフケアに必要な時間の見える化。週1回の「自分時間」を計画し、罪悪感を下げるための声かけ文例まで収録されている。
  • ポイント4:家族とのやりとりやパートナーへの伝え方。子どもの発達段階や夫婦の役割意識を踏まえた会話例があるので、実践に落とし込みやすい。

類書との比較

「子育てママに知ってほしい ホンモノの自己肯定感」は脳科学的観点からの解説が中心で、客観的な根拠を重視するが、本書はまず「母親自身の体験」を再構築することに時間を割いている。脳の仕組みを説明するよりも、すぐにできる心理的セルフケアを立ち上げるところで差がついている。

さらに「セルフ・コンパッション[新訳版]」はセルフコンパッションの3要素を海外の研究とともに紹介するが、本書は日本の育児現場に合わせた具体例で噛み砕いてくれる点が違う。共通項はセルフコンパッションであるものの、この本は「育児と仕事の往復のなかでも続けられる習慣」を優先した設計になっている。

こんな人におすすめ

自分を最優先にすることをどうしても許せない母親や、子どもの前で笑顔を作るたびに「演技をしている気分」になる人を想定した内容だ。忙しさや評価に押し流されると自己肯定感が薄れているように感じることがある。そんなときに、あえて手を止めて自分の気持ちに耳を傾ける儀式として活きる。

また、セルフコンパッションの概念は知っているけれど「どう暮らしの中で動かせばよいか」がわからない人にもチュートリアルのように使える。夫との時間や子どもの存在を取り込みながら、自己肯定感を下支えする習慣を少しずつ積みたい人に合う。

感想

「今日は自分を責めない日」と決めて、簡単な声かけワークをしただけで、それまで感じていた疲労感が少し和らいだ。習慣の1つ1つが、脳内の負のスパイラルを断ち切るための小さな実験になっており、続けるほど「自分の基準」を取り戻せる実感がある。

共通の人間性とマインドフルネスの考え方を、実際の子育て場面に翻訳してくれているので、理論だけで終わらない。実践パートではワークシートに記入しながら「どう感じたか」「なぜそう思ったか」を書き残す仕掛けがあり、読後にも振り返りやすい。

特に印象的だったのは、「他者の基準より自分の感覚」を立て直す章の終盤で、夫や子どもとの関係に焦点を当てていたこと。育児の毎日には「目に見えない疲れ」が積もるが、この本を通じてそれが自然なことだと再確認できたのは大きい。

この本を枕元に置いておけば、育児の悩みが深くなってきたときに何度でも立ち返れる。行動習慣の一つひとつが肩の力を抜いてくれる小さな滑走路になってくれている。 今後も新しいフェーズが来るごとに開いて、自己肯定感が揺らいだときのリセットボタンとして活用したい一冊だ。 子育て仲間との会話の中でも「この習慣を試してみたら?」と紹介できるし、親同士で気持ちを共有する橋渡しとしても機能する。

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    佐々木 健太

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