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レビュー

概要

『まんがで身につく 孫子の兵法』は、古典として読まれがちな『孫子』を、現代の仕事や競争の場面へ引き寄せて学べるマンガ形式の入門書です。兵法と聞くと、軍事の知識や難しい格言集を想像する人も多いですが、本書はそこをかなりやわらかくしています。若い営業担当が仕事の悩みにぶつかりながら、孫子の考え方を使って状況を整理していく構成なので、戦略の本でありながら物語として読みやすいです。

扱うテーマは、勝ちやすい場所を選ぶ、相手と自分の状況を把握する、無理に正面突破しない、準備段階で勝負を決める、といった『孫子』の基本です。これを現代の営業、競争、組織内の立ち回りへ翻訳してくれるので、「古典は大事そうだけれど抽象的すぎる」と感じていた人でも入りやすいです。

読みどころ

読みどころは、『孫子』の有名な言葉を、ただ格言として並べないところです。知彼知己、戦わずして勝つ、勝ちやすい条件を先につくる。こうした考え方が、マンガの中で実際の仕事の悩みと結びつけて描かれるため、「そういう場面で使うのか」が見えやすいです。言葉だけで読むより、ずっと腹落ちしやすい作りになっています。

また、本書は戦略を「相手を打ち負かす技術」だけとして扱いません。無理な勝負を避ける、自分の強みが活きる場所を選ぶ、消耗戦に入らない、といった守りの発想もかなり重視します。これが現代の仕事に合っています。とくに忙しい人ほど、頑張り方を増やすより、負けにくい立ち回りを身につけるほうが効きます。

さらに、マンガ形式だからこそ、抽象論が感情と一緒に入ってくるのも良いところです。焦り、見栄、無理な対抗心といった失敗の原因が登場人物の中に描かれるので、「戦略以前に感情で負けている」ということも見えてきます。ここは仕事術本としても面白いです。

本書の重要ポイント

本書の重要ポイントは、勝つための努力より先に、勝ちやすい条件を整える考え方を身につけられることです。多くの人は「もっと頑張る」「もっと早く動く」方向へ行きがちですが、『孫子』はまず状況判断を置きます。本書はその発想を現代向けにわかりやすく示してくれるので、根性論から少し離れられます。

もうひとつは、相手の分析と同じくらい、自分の資源の把握を重視していることです。何が強みで、どこに無理があり、どこなら勝負できるのか。仕事や人間関係でこの視点が入ると、不必要な消耗が減ります。古典の教えが今でも使われる理由もよくわかります。

類書との比較

『孫子』の解説書は多数ありますが、文章中心の本はどうしても抽象度が高くなりがちです。本書はマンガで状況を見せながら進めるため、若手社員や戦略本に苦手意識がある人でも読みやすいです。古典を厳密に読む本ではなく、古典を入口に仕事の考え方を学ぶ本だと捉えると価値が高いです。

また、自己啓発寄りの戦略本と違って、「気合いで突破する」方向へ流れにくいのも良い点です。むしろ、戦わない選択、勝負の場所を選ぶ判断、撤退の意味などを教えてくれるので、実務ではかなり役立ちます。

こんな人におすすめ

戦略という言葉に苦手意識がある人、仕事で競争や交渉が増えてきた若手、古典を実用書として読みたい人におすすめです。とくに、頑張っているのに空回りしやすい人には相性がいいです。努力の量ではなく、勝ち筋の作り方を学べるからです。

また、部下や後輩に戦略的な考え方を伝えたい人にも向いています。マンガ形式なので、抽象概念を共有しやすいです。

営業や企画だけでなく、社内調整の多い仕事をしている人にも向いています。相手をねじ伏せるためではなく、無駄に戦わず成果を取りにいく考え方として読めるからです。古典を実務の場面へつなげる橋としてかなり使いやすい一冊です。

会議や提案でいつも真正面からぶつかってしまう人にも役立ちます。勝つために前へ出るだけでなく、条件を整える、相手の力の使い方を見る、自分の土俵へ寄せるといった発想が持てるようになるからです。戦略を性格ではなく技術として学べます。

感想

この本を読むと、『孫子』は遠い昔の兵法書ではなく、いまの仕事でもそのまま使える観察と判断の本なのだと感じます。相手を見ること、自分を見ること、無理な土俵に立たないこと。その基本がマンガで自然に入ってくるので、入門としてかなり優秀でした。

難しい古典を読破する前に、まず使いどころをつかみたい人にはちょうどいい一冊です。読後は、頑張り方よりも勝ち方を考える視点が少し身につきます。

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    佐々木 健太

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