レビュー
概要
『かんたん! 100字できれいになる筆ペン字練習帳』は、筆ペン字を長時間の修行ではなく、短い文を整える練習として身につける本です。著者の青山浩之は、美文字研究の第一人者として、見栄えのよい文字を「勢い」ではなく、角度、余白、強弱のバランスで教えます。100字という制限があるため、練習の目的がぼやけにくく、日常で使う文章にすぐつなげやすいです。
筆ペンの本は、見本が美しすぎて真似する前に気後れすることがあります。本書はそこをうまく避けています。一字一字の整え方はもちろん、まとまった文の中でどう見せるかまで扱うので、実用品としての筆ペン字を学びたい人に向いています。
読みどころ
読みどころの第一は、100字という枠が練習の焦点を絞ってくれることです。筆ペン字は、一字ずつ見ると書けているのに、文章になると急に野暮ったく見えることがあります。本書はその原因を、文字そのものではなく、行間、字間、余白、字の大小の配分まで含めて説明します。文章全体の見え方を整える視点が入るので、実際に使える字へつながりやすいです。
第二に、筆圧や角度の説明が具体的です。筆ペンは慣れないと太さが安定せず、線が震えたり、はねや払いが汚くなったりします。本書は、筆先をどう入れて、どこで止めて、どこで抜くかを細かく見せます。書道の精神論ではなく、手の動きの再現として書いてあるため、独学でも試しやすいです。
第三に、年賀状、のし袋、あて名書き、ちょっとしたお礼の言葉など、実用場面への接続が強いことです。練習帳として終わらず、「このまま明日使える」という感覚があります。趣味で美文字を学ぶ人だけでなく、仕事や家庭で手書きの機会がある人にも便利です。
類書との比較
一般的な美文字本は、一字ずつのお手本が中心で、文章としてどう見えるかまで踏み込まないことがあります。本書は100字を単位にしているため、文字単体の美しさと文章全体の読みやすさを同時に扱えます。ここが実用書として強いです。
また、書道色の強い本は雰囲気として美しくても、日常の筆ペンへすぐ落とし込みにくいことがあります。本書は日常用途を前提にしているので、学んだことをすぐ手紙やカードへ試せます。趣味と実用の間を埋めてくれる本です。
見本をただなぞるだけでなく、なぜその字幅になるのか、どこを詰めすぎると苦しく見えるのかまで考えさせるのも良い点です。形の暗記で終わらず、整って見える理由がわかるので、別の言葉を書くときにも応用が利きます。
こんな人におすすめ
- 年賀状やのし袋、宛名書きをきれいにしたい人
- 筆ペンを持つと急に字が崩れてしまう人
- 美文字本を買ったが続かなかった人
- 短時間で実用的な練習をしたい人
感想
この本を読んで感じたのは、字がきれいに見えるかどうかは才能より配置の問題だということです。本書はその感覚をつかませるのがうまいです。とくに筆ペンに苦手意識がある人ほど、文字の上手下手ではなく、整え方のルールとして読めるのが助かります。
一気に達筆になる本ではありませんが、少しずつ見栄えを良くするには十分です。手書きが必要な場面で毎回自信がない人ほど、手元に置いて繰り返し開く価値があります。生活の中で役に立つ練習帳として、かなり使いやすい一冊でした。
短い時間で一区切りつく構成なので、練習が続きやすいのも魅力です。毎日少しずつ書いて、翌日にまた見直す。その反復で字の印象が変わっていく実感が得やすく、筆ペンを遠ざけていた人の再入門にも向いていました。
字がきれいだと、それだけで気持ちは整います。祝い袋や礼状のように、内容だけでなく見た目にも気を配りたい場面では特にそうです。本書は、その場しのぎではなく、日常の中で少しずつ整えていく練習帳として信頼できます。
練習帳として見ても、負荷が重すぎません。今日はここまででいいと区切りやすいので、完璧主義で止まりがちな人にも向いています。長く使える実用品として、かなり優秀でした。
手書きの機会が減った時代だからこそ、少しきれいに書けるだけで印象は変わります。本書はその差を無理なく作る本です。道具をしまい込んでいた人が、もう一度筆ペンを手に取るきっかけにもなります。
冠婚葬祭や季節のあいさつのように、失敗したくない場面の前に見返せるのも便利です。練習のための本でありながら、実際の本番へそのままつながる使い勝手がありました。少ない練習量でも手応えが出やすいので、再開の一冊としても勧めやすいです。